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3章 14話 新たなる道6 ヒルダSIDE

部屋の入口らしき場所が見え、そこからは深い息遣いが聞こえてきた。

おそらく部屋にいるだろうモンスターはオーク、高確率で決定だ。


「エリ姉、オークだよ!」


「わかっている。私は一番近いやつに行く。

 お前は後ろの奴らに牽制を頼む!」


エリ姉は走り出すと最速のルートで手前のオークに向かった。

9層のアイスブリッツを唱えると、周りに複数の氷のつぶてが浮き上がる。

エリ姉が剣を最初のオークに叩きつけようとした時、私はちょうど部屋内のオークの数を把握することあできた。

全部で3匹だ。アイスブリッツを残り2匹のうち片方に浴びせて時間稼ぎをする。その間に私自身はさらにもう1匹の方へ向かう。


エリ姉は上段に構えた剣をそのままオークの肩口に振り下ろし見事に当てていたわけだが、いつもエリ姉が使用している剣ではないせいか、それともオークの肉が厚いせいなのか、剣はオークの肩口の途中で止まってしまっていた。

剣が悪いのではない、それは間違いない。ここのオークが外の一般的な他のオークより強いんだ!

エリ姉はオークを蹴り飛ばしながら剣を引き抜き、すぐに魔術の詠唱に入った。

その間に私も一匹に斬りかかる。私にはエリ姉のような力強く剣の振るようなやり方はできない。あれは力がある者だけができるやり方だ。

オークを横に斬りながら右側に抜ける。抜ける前に腕、抜けた後に足を切り裂いた。

オークは腕と足を切られ片足をついていた。アイスブリッツを受けたオークは顔を撃たれて目もやられていたか、顔を手で覆っている。


「エリ姉! そっちは?」


「ああ、これで……止めだ!」


エリ姉が先ほど深く斬った肩口、その同じ場所にもう一度剣を斬り入れる。今度は剣がオークの腹辺りまで入り込み、オークは倒れて動かなくなった。

動かなくなったオークの体が消えて大きめの魔石が落ちる。

サトルから話を聞いてはいたし、一緒にいる他の冒険者が倒しているのを見てわかっていたのに改めて思う。

ここのモンスターが落とす魔石はでかい。

もしサトルが私と結婚をしてくれずにこの領を離れてしまったとしたら、この損をお父様はどうするつもりだったのだろう。しかも、サトルがこの領を去り私たちと敵対関係にある、領に移ったりしたら……。

ありえたかもしれない恐ろしい未来に少しだけ身震いした。


一匹のオークを倒すと、数秒後奥の方でオークが復活した。

ゴブリンの時と同じ無限召喚!

であれば、この部屋で躓いてはいられない。エリ姉もそれを察知してくれたいた。、


「ヒルダ! 先に進むぞ!」


私の攻撃によって行動制限がかけられる羽目になったオーク2匹を蹴り飛ばし、新しく召喚されたオークを無視して先に進む。ここのフロアの戦い方はこれが正解のはず。

私は倒したオークが落とした魔石だけさっと拾うと、先を進むアリ姉を追いかけた。

ステータスでは私達二人に劣るオークは私たちに追いつくことはできない。私達をそのまま次の部屋に行かせることになった。

通路に入ってオークが入って来ないことを見届けると、


「なんだあの部屋は……とても普通のダンジョンではないぞ」


エリ姉が呼吸を落ち着かせながら言った。

オーク数匹が無限に召喚されるダンジョン。そこに居続けることはB級クラスの能力が必須だ。私もエリ姉も強い方だと思うけど、前衛二人と言う特殊なパーティには向いていない。

そもそも前衛二人に向いてる敵って何って話なんだけど。


「流石未踏破区域ですね。

 しかし、この魔石の大きさ……」


「うむ……何を倒せばこんな大きい魔石が出るんだと

 言う感じだな。オークのドロップと誰が信じるのだろう」


次の部屋に向かって通路を進みながら二人で会話をする。

はっきりいってもっとランクが上のモンスターの魔石ですと言ったほうが理解してもらえるくらい。

装備の確認やオークとの戦い方いついて二人で話しながら進んでいると、通路の終わりが見えた。

そしてその先には薄明るい靄のようなものが……。


「ヒルダ気をつけろ。ゴーストまでいるぞ!」


迷宮によくいると言われているゴースト。自身が薄く光を発しているのでわかりやすい。

その実、物理的な攻撃は一切聞かず魔術のみ効果がある。私たちのような二人組でなかったらこのまま帰還する勢いだ。


「大丈夫です。精神耐性のチャームを持ってます」


聖騎士隊では貸与されない、実家から贈られた少し高価な精神耐性チャームを腕輪として持っているので、私は平気。

だけどエリ姉は……アクセサリーとか絶対につけないタイプ。


「エリ姉、私が前に出ます」


気遣って、自分が先頭に出ることを告げる。


「助かる」


案の定、エリ姉はそのようなものを持っていなかったらしく、私の後方でサポートに回ってくれることになった。

ゴーストは魔術での攻撃しか効かないが、決して強いモンスターではない。と言うよりゴースト単体ではほとんど攻撃手段を持たない。ヴォルトを稀に使って来るくらいだ。

エリ姉に精神攻撃される前に一気に片付ける!


「ストーンシャワー!」


第5層の土魔術、ストーンシャワーを使うと天井から発生した石の雨がゴーストに降り注ぐ。

何もない空間に石のようなものを作りだす場合、とても魔力が必要になる。だがこのようなダンジョンでは天井が石で覆われているのだからとても使い勝手が良い。

数匹いたゴーストに次々と石の雨が降り注ぎ、ゴーストは少しずつ薄くなって消える。

そして当然のように再召喚される。

事前にダンジョンの内容知っていたけど……性質が悪すぎる!

後でサトルに文句を言おうと思いつつ、今度は下層の魔術をエリ姉と二人で唱えてゴーストを倒しつつ、逃げ出すようにして通路へ入った。


「下手なトラップより性質が悪い!

 ここをクリアするには、冒険者はパーティを解散して作り直さなければならないぞ!」


息を切らしつつエリ姉が言う。

私もそう思う。通常冒険者のパーティは3~6人。少なければ私たちみたいな二人の特殊なパーティもあるけど、こうも休まずに敵が出て来るとなっては最低6人は必要。

さらに、物理攻撃が効かないゴーストが出て来る部屋があるのであれば、魔術師が二人はパーティに必要になるだろう。

現時点でそんなパーティを汲めている冒険者なんて……1つか2つあるくらいだ。

会話はもう半分以上がダンジョン及びサトルへの愚痴になりなっていた。

エリ姉と先へ進むとまた新たに部屋があった。


「はは……次で最後だと嬉しいんだけどな」


流石のエリ姉もこのダンジョンを私と二人でクリアするのはしんどいらしく、もう帰りたいオーラを出していたが、行けるところまで行きたいと言う気持ちはあるらしく、その気持ちを持って次の部屋に進もうとしたのだが。


「おい……気のせいか。

 オークの吐息とゴーストらしき姿が薄く光ってるぞ」


そう言えば、次の部屋はオークとゴーストの混合部屋だった。


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