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1章 10話 異世界村事情 宿屋

村がどのようなものかを定義するための回のつもりです。

少しの間、異世界村事情 〇〇が続きます。


村に入って正面にある通りは道がそこそこに広かった。現代で言うところの道路2車線ほどの幅がある。

しかしこちらは裏門なわけで、そのせいか人通りは少なかった。

通りの左右には民家らしき建物が建っていて、多くは木製のものだった。大体が2階建て、それ以上の高層階の建物は現段階では見当たらない。高層の建築物を建てるにはこの世界はまだ技術不足なのだろうか。

そして、木製だけでなく石製の家も少しだが存在するようだ。石製の家はレンガのように直方体に切り出した石を積み重ねて隙間に粘土を塗って固めたもので、とてもではないが強度に難がありそうに見える。住みやすそうな感じもしない。

たまに村人を見かけるが、家事をしている女性ばかりで皆麻原色麻のワンピースのようなものを着ているた。これがこの村の一般的なんだと思う。


通りをまっすぐに歩いていると、民家の中に少しずつ店も見えてきた。右手に布を扱った店が見えてきたので寄ることにした。

店の入口のすぐ横手に手の平サイズの布の切れ端が雑に、それも大量に置かれている。

木の値札に20枚で銅貨1枚と書かれているのが読めた。明らかに日本語ではなかったのだが、自動的に翻訳されて俺に伝わるようだ。

この世界ではこの切れ端をどのようにして使うのだろうか、雑巾扱い? 布製品の店なら切れ端は大量に出るはずだから、売れるならゴミとして捨てるよりは良いに違いない。

店内で真っ先に目についたのは、原色のままの麻の製品で布1枚縫いのものなら銅貨5枚。2枚縫い合わせた少し厚手のものは銅貨10枚だった。

更に奥には染色された服も売っていたが、やはり染色が高いのか銅貨で30枚していた。


俺の手に余る値段の物ばかりだったので店を出る。元の道を進むと門兵に教えてもらった3つ目の交差路が見えてきた。ここまで来ると人通りも多い。

途中冒険者だろう6人のパーティとすれ違った。あの冒険者見習いの様な革の鎧だったり、ローブを羽織っている。中には上半身裸の者までいた。冒険者はどれほど自由なのだろうか。

冒険者であれば革の鎧やローブが基本なのだろうか。後で革製品の店にも寄って見ることにした。


十字路に差し掛かり、従者を連れた商人手前の通りを横切った。従者は商人の代わりに大量の荷物を持っていて、商人の歩くスピードに合わせるのだけでいっぱいいっぱいそうだ。

横切った者が商人ではないかと思った理由は、服が麻より少しだけいいものであったからだ。あれはおそらく綿だろう思う。多くの人が麻の服を着ているこの村では、白色のシャツがとても目立つ。

さっきの店には麻の製品しかなかったけど、どこかには綿やそれ以上の布製品の店が売られていることだろう、いつかあの服を手に入れたい……。


十字路を曲がると少し先に宿屋だと思える建物が見えた。パッと見ではわかりにくいが、木の看板に宿屋と書いてあるのがわかるから間違いない。

ドアを開けて中を覗き見ると、正面にカウンターがあり店主であろう人物が座っていてこちらに顔を向けた。


「よぉ、この村は初めてかい?」


店主は気さくそうな感じの人物だった。初めて会ったのにも関わらず全てをわかっているような風なのは、決して俺と門兵のやり取りを見ていたからではないとわかる。

人口1000人規模の村で宿屋を続けているなら、知らない人イコール村に新しく訪れた人、と言う方程式が成り立っているんだろう。


「実は今日村に来たばかりで。

 門兵さんにここの宿屋を紹介されてきたんだよね」


「ほぉ。うちを勧めるとはよくわかってる奴だね。

 と言うことは泊まりだな?

 うちは1泊銅貨5枚だよ。夕食を食べるなら

 時間になったら1階の食堂で注文してくれ。

 その時に銅貨2枚を払ってくれたらいい」


空き部屋の鍵がカウンターの上に置かれた。

1泊分の料金を払おうとカウンターに近づくと、店主はしかめ面して鼻を覆った。


「おいおい、あんた長い間体を洗ってないんじゃないか?

 ものすげえ匂うぞ……。

 銅貨1枚出してくれるなら、すぐお湯を出してやるからさ、

 すぐ部屋で体を洗いなよ」


どうやら俺は相当匂うらしい。

この世界にきてはや数日、確かに俺は体を洗っていなかったけど、ダンジョン内のゴブリンや汚い泉のにおいばかりを嗅ぐ羽目になっていたから、比較的に自分はそこまでではにおわないと思っていた。

門兵が臭いにおいを我慢しながら会話してくれてたかと思うと頭が下がる。

鞄から銅貨6枚を出し店主に渡す。


「毎度!

 ついてきな、部屋は2階だ。

 すぐそこだが案内するよ」


と、カウンター横にある階段へ向かって歩き出した。

店主は2階の2番目の部屋の前で立ち止まり、鍵でドアを開ける。


「ここだよ。すぐお湯を持って来させるから、

 部屋に入って待っててくれ」


店主は鍵を俺に渡すと1階へ戻って行った。

部屋の広さは2畳ちょっとで、ベッド,小さい机,イスが置かれていた。

鞄を机の上においてベッドに腰をかけて一息ついていると、ドアがトントンと叩かれた。


「お湯だよ!」


幼い女の子の声がドアの向こう側から聞こえた。

ドアを開けてやると、両手にお湯の入った木製のタライを抱えていた。それで開けられなかったみたいだ。

少女はタライを床に下すと、無言で布の切れ端と木の実を渡してきた。


「この木の実は?サービス?美味しいのか?」


木のみを手に取って齧ろうとすると、焦った少女が止めに入ってきた。


「ちょっ、あんた待てって!レンの実も知らないのか?

 あんたが臭すぎるから、洗った後それをつけろって

 店主からのサービス品だよ!」


少女は伝え終えるとそのままドアを閉めて一階へ戻っていった。もしかして、俺が臭いから逃げて行ったのか……? 自分の臭さがそこまでのものかとショックを受ける。

木のみの皮を少しだけ潰してみると、柑橘系のいい香りがした。香水みたいな使い方をしろってことだろう。


ドアを閉めてから、服を脱ぎ机の上に置く。切れ端をお湯につけてひたすら体をこすった。切れ端は体を拭くごとにどんどん汚れていって、俺がどれだけ汚かったのかを証明してくれた。

汚れた切れ端をお湯で洗って、また体を拭いてを何度か繰り返してようやくさっぱりとした気分になった。

もらったレンの実を潰すと、手の中に広げる。全体に広がるように体に塗り付けると、俺から柑橘系のいい匂いがするようになった。

服も臭いだろうと思い、残りのお湯で服も軽く洗ってレンの実の汁を服にもすりつけることにした。

今日は暖かい日であったから、窓に服を掛けて1時間も干せばきっと乾くだろと思い、裸のままベッドに入り、少しの間寝ることにした。




10話を書いてる途中で、ネタが思い浮かんだので書いていたら、かなり長い間そっちのけで書いてました。

よってこんな時間ですが10話投稿です。


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