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3章 3話 ヒルダの帰還3

大分間が空いてしまいましたが、ただ仕事が忙しかっただけで書くのに飽きたと言うわけではありません。

今後も書き続けていきますのでよろしくお願いします。


「こうやって、実際の冒険者の戦いを

 聞けるのは新鮮ね」


俺の話を聞いてヒルダは微笑んでいた。

続いてこの宝箱の報酬の仕組みを話す。大部屋からは別の部屋に繋がっているのだが、そこは冒険者には見えないし当然入れないようにもなっている。

その部屋には下級,中級,上級の宝箱が複数設置されていて、中身を定期的に大部屋の報酬となる宝箱に移している。宝箱にポップする傷薬はモンスター達がためていて、攻略に失敗した冒険者たちに使うことになっている。

そして大部屋には大量の魔法陣が設置してあり、大部屋の扉が冒険者たちによって開けられ、そして閉じた後にモンスターを召喚するようになっている。次の召喚は5時間後だ。

最後に扉なのだが、一度大部屋が攻略されると次に開くのは5時間後と言う設定である。

こういう細かい仕組みを利用して、レイドシステムを完成させたのだ。


「ふぅん……聞けば聞くほど不思議ね。

 とてもダンジョンとは思えないくらい」


俺のダンジョンはこの世界の一般的なダンジョンとは異なるから、不思議なのはレイドシステムに限らないわけだが、もうそこを不思議に思うのはやめてしまったのかヒルダはレイドシステムだけに興味を示した。


「ヒルダもレイドシステムにやっぱり興味があるのか?」


「私が……と言うよりは、王都の騎士全般がね。

 なんとなくわかるかもしれないけど、騎士って基本的に

 強いモンスターとかに興味あるのよ。

 あなたのダンジョンの噂で持ち切りな上に、

 隊によっては、すでに団長に遠征を申請してるところも

 あるのよ?」


冒険者に人気なのは今の状況を見ればわかることなのだが、まさか遠く離れた王都の騎士にまで興味を抱かれているとは思わなかった。

王都の騎士、その中でも聖騎士が遠征で来てくれるとなれば、ダンジョンマスターとしてのレベルもさらに上がることは間違いない。


「なあヒルダ。

 俺としては騎士が訪れてくれることを歓迎するんだが、

 なんとかならないだろうか」


最悪、ダメだと言われてもいいとして聞いてみた。


「なんとかしてもいいよ。

 うちの領地はあなたのダンジョンの恩恵を受けているわけだし。

 でも、問題はどうやってパパを説得するか……」


「ああ、そうか。

 聖騎士の遠征でレイドシステムを使うには、

 ノースランドの冒険者ギルドに許可を取る必要があるよな。

 その通達ができるのは実質領主だけか。

 どうしたものかな」


二人でうんうん言って頷いてるところに、ウェイトレスが注文を持ってやってきた。

すっかり忘れていたのだが、ヒルダはしっかり覚えていたようでトレイの上に載っている食べ物を見て目を輝かせていた。


「いつか食べてみたかったの、ここのパンケーキ!

 本当に食べられる日が来るなんて……」


聖騎士の女性陣で、いつか行きたい場所ナンバーワンとしてここの店があがったらしいのだが、そもそも普段からトレーニングや訓練で汗臭いので、来れるとは思っていなかったらしい。

しかも、こういうおしゃれな場所に来るならできれば男性と……と言うのが女性としての憧れらしく、ヒルダは感極まっていた。

そのお供として俺を選んでもらったのだから、光栄だろう。


「しかし……何かみんなこっちをチラチラ見てくるよな。

 なんか落ち着かないんだが」


俺とヒルダの方を周りの客がチラチラ見てくるのが落ち着かない。

当然そちらを向くと顔をそらして素知らぬ振りをするのだ。


「サトル、気づいてないの?

 しつらえられたシルクのシャツを着ておいて。

 あなたの外見も相まって、人の視線を集めるために

 作られたような人間になってるのよ?」


シスに言われるがまま着ていたので考えたことはなかったが、シルクの服を着ている人物なんてほとんどいなかった。

それに、確かに最近はやたらとシスが俺の健康や体の手入れに気を遣うようになった気がする。

気づいたことが顔に出てしまったのか、そういうことよ。とヒルダに言われてしまった。

今後出かけるときは、基本的に綿のシャツにしようと思った。


ヒルダは嬉しそうにパンケーキを食べ続けている。俺は紅茶だけだ。

俺とヒルダはほとんど変わらない年なのだが、こういう子供っぽいところもあってとてもかわいい。

美味しそうに食べる姿をじっと見ていたら、視線に気づいて恥ずかしくなったのかもじもじとしている。


「ちょっと、あんまり見ないでよ。

 それとも、何? パンケーキ食べたいの?」


「あんまり有名とか言われると、気になることは気になるかな。

 そもそもデザートなんて食べることがないし」


ヒルダは少しだけ考えた後、


「じゃあ、一口だけね」


そう言って、フォークに突き刺した一口大のパンケーキを俺の方に向けてくる。

これはもしかして、恋人同士がやるあーんと言うやつか?




逃げ出すように店から出てきた。周りが見ているのも忘れて全力で恋人プレイをしてしまったため、後で気づいてものすごく恥ずかしかった。

それでもヒルダはパンケーキを食べれたことが良かったのか、今までの俺のことを許してくれた。

ようやくほっとすることができた。

そして改めて今後のことを考える。領主の件だ。

どうやってダンジョンを一時的にでも騎士の占有とさせるか。


「サトルがダンジョンマスターだってバラすのは……

 やっぱりダメよね?」


上目遣いでヒルダが尋ねてくる。


「全くダメとは言わないけれど、今はないかな。

 まだ俺の存在を広めたくないと言うか」


俺の存在はこの世界では非常に異質。領主,最悪は王に伝わればどういう対応をされるかわからない。

俺の存在には神が絡んでいるので、教会まで入り込んできそうな気もする。


「だよねえ……」


公園のベンチに座って二人で考えるのだが、なかなかいい案が浮かばない。


「なあヒルダ。

 先に、領の騎士に使わせると言うのはどうだろう。

 領内の騎士の演習に使うと言う目的なら、領主も

 了承するかもしれない。

 これほど良い訓練の場もないだろうからな。

 その後で、聖騎士も遠征に使いたい旨を伝えれば、

 了承を得やすそうだ」


「それ!

 いいかも!」


ちょっとした思い付きが上手く行きそうでよかった。

しかし、その場合今度は領の騎士団長であるレオンを動かす必要があることに二人は気づいていなかった。


本小説を読んでいただきありがとうございます。

もし気に入っていただけたなら、ブクマ,評価,感想,レビューをお願いします。

また、同時に連載中の「闇の女神教の立て直し」,初めての短編「毒の魔女」もよろしくお願いします。

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