第二話 絶対防御
本当に強い能力とは何だろうか。
圧倒的な力なのか。絶大な魔力なのか。
あるいは傷を癒す力か、死者をこの世に戻す力か。
時間停止?タイムスリップ?
どれも正解であり、どれも不正解。
状況による、境遇による、世界による。
要は使い方次第、使い手次第。
・・・と、ちょっと考えれば誰でも分かること。
それが、全て否定されるとしたら?
「勝負」の意味は、未だ解らず。
「・・・絶対防御?」
誰かが呟いた。
チカは続ける。
「絶対防御。シンの最大にして唯一の能力」
「文字通り、シンには斬撃、打撃、火薬類、魔法攻撃などのあらゆる攻撃を無効化する力がある」
アムが続ける。
「あいつだけは、何度もケンカになったけど、毎回俺が先に降参してたな」
「だって、勝てねぇもん。あんなの」
依然としてシンはゴリラにも似た男達の猛攻を受けている。
が、それをものともせず、涼しい顔で立っているのだ。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「こいつ・・・何度殴っても全然効かねぇぞ・・・」
「というより・・・攻撃が『届いていない』って感じだな・・・」
「こんなもん・・・殴るだけ無駄だろ・・・」
「お頭!どうします!?こいつ、なんか変ですぜ!」
奥からのっそりと現れたのは、いかにも山賊のリーダー的な風貌をした男。
宝飾品で身を包んでる割に髭と髪の毛のケアは怠っているあたりがいかにも山賊らしい。
「お前、名前は?」
山賊の頭が口を開く。
「シン。シン・ハータルノーシュ」
シンは目線を一時も頭から逸らさずに答えた。
「・・・くっくっく・・・なーるほーどねぇ・・・」
「おい、お前ら!引き上げるぞ!」
踵を返す頭。動揺する下っ端達。
「お頭、あんなガキ相手に逃げるんですかい!?」
「俺たちのメンツが・・・」
バキィィィィィ!
「うるせえ!俺たちにどうこうできる相手じゃねぇ!下がれ!」
場は静寂に包まれた。
「シンさんよ。俺はサンノーデル・ツカルヴァンてもんだ。親父から聞いてないか?」
「・・・山賊に知り合いはいない」
「くくく、十分だ」
ほどなく、山賊は町から去った。
「お前、本当に行くのか?」
「あぁ」
「たまには連絡よこしなさいよね」
惜しまれつつ、シンは旅立つ。
『絶対防御』という、ただ一つの武器を盾に・・・。