黒色と恋文
私は窓辺に座って待っている。
くたびれたスーツを着て逢いに来てくれるあなたを。
あなたに会った日のことを覚えているの。
初めて私のいるお店に来たあなた。
横に座った私をそれはそれは、可愛がってくれた。
器量の悪い私は、それまであまり愛されてこなかった。
生まれてすぐに母にも捨てられ、周りの人からは
「お前がいると不吉なことが起こる」と忌み嫌われ、流れついた先が今勤めているお店だった。
この店には私と似た身の上の子達がたくさんいて、仲間には恵まれた。
けれど、器量の悪い私はお客さまからあまり指名をもらえずにいて、店長さんの役に立てないでいた。
だから、初めてお店に来たあなたが私を横に呼んでくれたことがすごく嬉しかったの。
お店の仲間以外で、私を必要としてくれたあなたのことを好きになるのに時間はかからなかった。
「また来てね」と言えずにいた私の頭をあなたは優しく撫でてくれた。
嬉しくて、思わずないた私を最後に優しく抱きしめてあなたは帰っていった。
それからはずっと、週に一度逢いに来てくれるあなたを待っている。
スーツに私の真っ黒な毛が付くのも構わず、私を抱き上げてくれるあなたを。
猫カフェ『またたびの唄』の窓辺より愛を込めて
『うに』より