表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
67/84

67話 移転完了

 タツヒロがその辺の石を二つ拾って来てトシへ渡すと、トシはルーンを書いてアーティファクトにする作業を始める。

 その内、オーク達が全員目覚めたとの事で、ジャレンが報告に来た。

 

「芳俊様、グレートオークに進化したものが全て判明しました」

 

 ルーンを書く手を止めてトシがジャレンを向く。

 

「おお、分かったか。全員の名を教えてくれ」

「は!、まずは我と我が妻エサニエ、それから伍長のウコンとサコン、イエモン、イザエモンの六名です」

「・・・、分かった。一部は明日出発になるが頼んだぞ。ざっくりだが、十日くらいで移転を完了させたいと思ってる。ちょっとの間だが辛抱してくれ」

「芳俊様、お任せください。元々、御三方様に拾って頂いた命です。出会えなければ死んでいた事を思えば十日や二十日の別れなど、取るに足りません。留守はエサニエに預けます。移転が終わるまでよろしくお願いします」

「分かった。それと明日なんだが、オークの村に寄ってから行こうと思う。グレインにも寄ってもらったが、使い慣れた道具があった方が良いだろう? それに、これでしばらくは(・・・・)戻れなくなるだろうしな・・・」

「・・・お気遣い感謝します」

 

 その後は、ハイオーク達は出立の準備の為、村へと戻って行った。

 トシはタツヒロ用のアーティファクトを完成させ、設計の清書に移る。

 タツヒロはもらったアーティファクトに精霊を移し、改めて精霊術の確認を始めている。

 そしてナベは、当たり前の様に昼食の準備へ取り掛かるのだった・・・

 その後、昼食を終えて食後の一服も済ませた三人は、建築用製材の試験を始めていた。

 ナベが丸太を置く台座となる部分を、シフに岩で作らせ、タツヒロがアナイティスに木を乾燥させた後、ニンリルに風圧で切らせている。

 トシは、切断された木材のサイズを測り、都度々指示を出し、そのかたわら鉄筋と思しき鉄の棒を魔術で創成し、それの複製を行っていく。

 それを見ながら、ナベが中に穴の開いた、地球のコンクリートブロックに似せて作った岩石のブロックを試作する。

 作っては計測し、作っては計測し、やっと思い描いていたサイズが出来上がると、今度はそれを量産してみる。

 これも作っては計測、作っては計測の繰り返しだった。

 こうして、延々と建築材料を仕上げて、その日は暮れていった。

 

 ---

 

 翌朝、第一陣の出発の日である。

 今回からは、道も確認できたのでタツヒロのV90も出す事にした。

 メイサにある物資全てを絶界に入れ込み、三人は村に向かう。

 村に到着すると、ハイオーク達が広場で集まり出立を待っていた。

 

「おはよう。既に準備万端の様だし、早速行くか」

 

 ナベが声を掛けると、ハイオーク達から、はい!と返事が来る。

 村の皆に挨拶して、第一陣は早速村を発った。

 途中、オーク達の村に立ち寄り、しばし鎮魂と広場の死骸を土で埋める作業に没頭する。

 その後は自分の道具を見つけられる限り見つけ、村を後にする。

 そのまま順調に走り抜け、昼過ぎ辺りに第一陣は現場に着く事が出来た。

 

「お~い、旦那方、どうだい。四棟は張り終わったぜ。こいつも間もなく終わるから、終わったら一緒に昼にしよう」

 

 車を降りた途端に、ゲルンがやって来て声を掛けて来る。

 聞けば、ヤシャマルはまだ見回りから戻っていないが、いつも通りなら間もなく戻るらしい。

 

「おおそうだ、旦那方と入れ違いになっちまってたから紹介がまだだったな。おお~い、ジェイソン」

 

 そう呼ばれた男がこっちに気付き、向かって来る。

 

「ゲルンさんに聞いてたが、会うのは初めてだな。屋台引きながら流れの料理人やってるジェイソンだ。旦那方が雇い主かい?」

「ああ、三ツ星戦闘団、オリオンの主、相田誠人だ」

「同じく、斎藤芳俊だ」

「同じく、竜沢弘樹だ」

 

 自己紹介をしながらそれぞれで握手を交わす。

 

「にしても変わった現場だよ。出張で頼まれて現場で飯作ったのは数え切れねえが、ここまで変わってる現場は初めてだな。なんせ、丘ゴブリンやら鬼人とか言ったっけか?、あのやたら強そうなのやら・・・。で、今度はオークっぽい連中だろ?・・・。これ全員あんたらの部下なのか?」

「ああ、それは間違いない」

「あぶれ者同士が寄り集まったのがオリオンだからな、確かに言う通りだ」

「でも、これはこれで面白いんだけどね」

 

 ジェイソンの疑問に三者三様で答える。

 

「確かに、面白いのはその通りだな。で、確認なんだが、全部でどのぐらいまで増えるんだ? 一応、こっちは最大で百と五十で、と聞いてるからそれなりに準備はしてあるんだが・・・」

「ああ、その予定は今のところ変わりない」

 

 ナベが次の質問に答えた直後、何か思いついた様な顔してジェイソンに尋ねる。

 

「ジェイソン、一ついいか? あんたこの現場が終わったらどうすんだ?」

「次の仕事、って事か? 特に予定は決めてねーな。まとまった金も入りそうだし、しばらくはのんびりしようかとうしようか、考え中ってやつよ」

「もし、行くところが無けりゃ、うちに来ねーか? 給金はそれほどはずめねーが、遣り甲斐はあるだろうな」

「ここで仕事、かあ・・・」

「いや、無理にとは言わね~、だが来てもらえると助かるのが本音だ。集まる人数が人数だからな、俺だけじゃあとても捌ききれん」

「確かにな、そういう修行してねーと難しいわな」

「終わるまでに考えておいてくれ」

「分かった」

 

 またしても、トシとタツヒロは会話に混ざれない、と言うか混ざらない。

 いつもの事だが・・・

 三人の横では、ジャレンがゲルンに挨拶し、何やら、兄弟子!、弟弟子!、と呼び合っている。

 意気投合出来たようで、何よりな様子だ。

 そんな途中参加のメンバーを加えて、五棟目の作業の進捗が加速する。

 そして、五棟目が完成し、作業が一段落すると、少々遅くなった昼飯が始まった。

 後から来たハイオーク達の分も用意できるとあって、皆で食事にする事にした。

 なぜすぐに追加分を用意できたのか聞くと、どうも収納系のアーティファクトを持っているらしかった。

 只の戸棚として思えないモノから、ギリギリ入るサイズの寸胴鍋が三つ出て来た時には、ハイオーク達は驚愕していた。

 昼食後はゲルンと少し打ち合わせを行い、三人はそのまま戻る事にした。

 

「じゃあ、ゲルン、明日はまた同じぐらい連れて来るから、受け入れ宜しく頼むよ」

「おう、了解じゃあ。どんどん連れて来て構わんぞ?」

 

 そして、そのまま現場を後にし、そのまま村まで戻る。

 その後は、メイサに帰って材料の準備をし日が暮れる。

 

 ---

 

 そんな日々を繰り返し、気付けば最後の移転となっていた。

 あれから七日、それなりに材料も溜まり、現地での調達分も併せれば十分行ける計算だった。

 そして移転最後の日、タダツグ他十一人が、最後の人員だった。

 人足にしない予定の、ハルナガやナガヨシもいる。

 今回は、メイサも外のテーブル類も一切合切を絶界で持ってきている為、師匠の亡骸だけが洞窟に安置されている。

 村だった処は全て解体し資材にしている為、広場と思しき場所にその名残を残すのみとなっていた。

 腐り止めの実も、生えている周辺の地形ごと絶界で切り取ってきている。

 岩塩洞窟からはそれなりに岩塩を削って運ばせていた。

 まあ、忘れ物があればまた来ればいい。

 皆がその思いで、村を後にする。

 

「これを皆で飛躍と致そうのう」

 

 車に乗る前のナガヨシの一言が皆の決意を表していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ