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絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
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65話 入団式

 トシがジャレンを呼んで、さっそく指示を出す。

 

「ジャレン、俺ら人間は名前が無いと区別するのが難しいので、呼び名を付けたい。そのヒントが欲しいので、皆を連れて来てくれ」

「は!」

 

 皆が集まった後は、ゴブリン達と一緒でヒアリングである。

 どうやら、職能グループでの作業中に襲撃に合ったらしく、それなりにまとまっていた様子だった。

 

「何をしとるんじゃ?」

 

 グレインが、トシのノートを覗き込んで来る。

 

「これか? 今、番号を渡して色々と聞いてるだろ? それをまとめて名前を付ける元情報にするんだよ。そのまま組織の編成も行ってるからな、鬼人達同様にオーク達も組織になって動いてもらう事になる」

「なるほどのう・・・、トップと言うのは色々とあるんじゃのう。大変じゃのう・・・」

 

 先ほどの様子が嘘の様に、いつものグレインだった。

 

 全員のヒアリングが終わり、これから名前を考えるから一度解散という流れになったので、皆も村に戻る様だ。

 それを見届けた三人は、そのままメイサに篭りうんうん(・・・・)とうなる一時を過ごす。

 

「よし、ようやくまとめ終わったぞ。これでどうだ!」

 

 トシの一言で、タバコ休憩していたナベとタツヒロがトシの元に駆け寄る。

 

「どれどれ」

 

 そう言ってナベが『オーク・猪生一族現員表』と題されたノートのページを見始める。

 

 

 族長 ジャレン 若廉

 

 布革班

 班長 エサニエ 恵紗錵:女

 班員 カクノシン 革之進

 班員 カクタロウ 革太郎

 班員 ラサ 羅紗:女

 班員 サラサ 更紗:女:子


 土木建築班

 班長 ジャレン    伍長

 班員 オオツチ 大槌

 班員 ノコタロウ 鋸太郎

 班員 ホウゾウ 鉋三

 班員 コヅチ 小槌:子

 班員 ウコン 右近 伍長

 班員 クギゾウ 釘三

 班員 ホウイチ 鉋市

 班員 ノコジロウ 鋸次郎

 班員 メクギ 目釘

 班員 サコン 左近 伍長

 班員 ノコシロウ 鋸志郎

 班員 ホウジ 鉋次

 班員 ホウロク 鉋六

 班員 ジョウイチ 槌一:子


 農業班

 班長 イエモン 亥右衛門 伍長

 班員 クワタ 鍬太

 班員 カマタ 鎌太

 班員 ホナミ 穂波:女

 班員 ホダカ 穂高:女:子

 班員 イザエモン 亥左衛門 伍長

 班員 マナエ 真苗:女

 班員 ミナエ 実苗:女

 班員 カナエ 香苗:女

 班員 サナエ 早苗:女:子

 

「まあ、こんな感じだろうな・・・」

「どれどれ・・・」

「個人の指向と組織を摺り合わせて、この三班かなと。あとは、それぞれの名前がこれでいいかどうかだが・・・」

「トシ、これでいいんじゃない? 俺はもう意見の出しようがないよ。今時点ではこれ以上良くはならないよね」

「タツヒロはオッケー、と。ナベは?」

「ああ、俺も異論はない。これで進めよう」

 

 その言葉を受けて、トシが外を見ると夕暮れが始まっていた。

 

「まだ間に合うな。今夜は久々のバーベキューにしよう。オーク達の歓迎の宴ってことでパーッとやるか!」

 

 ナベはそう言うや否や、すぐに準備に取り掛かる。

 

「じゃあ、あいつらに声かけてこよう」

 

 そう言ってタツヒロが村に向かう。

 

「なら俺は会場の準備だな」

 

 トシもそのまま外に出て、足りない椅子やテーブルを作り始めた。

 今夜は、団員が増える楽しい宴になりそうだった。

 

 タツヒロが戻って来た。

 

「俺のスマホ預けて来たよ。あいつ等には、あと二時間したらこっちに向かえって言っといた。その位には来ると思うよ」

 

 トシに状況を伝え、そのままメイサに入ってナベにも伝える。

 オッケー、との返事をナベからもらい、タツヒロは外での設営を手伝う事にする。

 

「しかしあれだよね、オーク達が来ると拠点設営が更に捗りそうだよね」

 

 作業しながらタツヒロがトシに振る。

 

「ああ、そうだな何としても冬前に終わらせてやりたいよな」

 

 トシの答えに二人の手も自然に速くなっていく。

 そうしていると、メイサから二人を呼ぶ声が聴こえる。

 

「トシ~、タツヒロ~、肉持って行ってくれ~。あと他のも~。今度は俺が外で火を熾すから」

「「了解~」」

 

 そのまま順調に準備は進み、ナベとタツヒロの一服を合図に終わりを告げる。

 

「あとはあいつらが来るの待つだけだな」

「ん!? こんなことならエール買ってくるんだったよ・・・」

 

 ナベの終了宣言に、タツヒロの悔悟が重なる。

 

「あー、それ買ってなかったなあ・・・。炭も調味料も忘れなかったのになあ・・・」

 

 トシも若干悔しそうだ。

 

「まあ、しょうがねーよ。次回だ、次回。樽でガッチリ仕入れて、浴びるほど飲めばいいんだ、な?」

「だな」

「だね」

 

 ナベのまとめにトシもタツヒロも納得した頃合いでガヤガヤと音が聞こえ始める。

 

「御三方様、今夜は宴と聞きまして、夕食の準備を急ぎ中止して馳せ参じました」

 

 タダツグが笑顔で挨拶してくる。

 

「御三方様、夕食にと思ってた材料持ってきました。これも一緒に」

 

 そう言いながら木の箱に入れて肉類を持ってきたのは、調理班のポールとジョシュアだった。

 

「御三方様~、この前美味しかったのでまた腐り止めの実を持ってきましたよ~」

 

 そう言いながら籠を掲げているのは採集班のサイエンだ。

 

「ようし、お前ら! 持ってきたもの全部出せえ! 全部俺が美味しくしてやるぜえ!」

 

 ナベも調子が上がって来たらしく、言葉尻に勢いが付いてきた。

 

(ナベってさあ、ああいうノリ大好きだよな)

(ああ、それは俺も感じてたよ)

 

 小声で情報交換するトシとタツヒロであった。

 

 その後、調理の準備が整った段階でトシが皆を集め、大きな声でしゃべり始める。

 

「今日、こうして集まったのは他でもない。今日はここで皆が集まる最後の日でもあり、既に聞いてる者もいるかと思うが、オークの村の面々が、われわれ三ツ星戦闘団に加わることとなった。そこで入団式と任命式を命名の儀と併せて執り行う」

 

 おお、といったざわめきが次第に小さくなり、厳かな空気が辺りを包んでいく。

 

「それでは、先ほど渡した番号を読み上げるので、呼ばれたものは前へ出て来るように」

 

 そこで一度切り、皆の反応を見てトシが読み上げを開始する。

 

「一の番号札を持つ者はこれへ」

 

 オーク達からジャレンが出て三人の前まで来る。

 そのまま跪き、言葉の続きを待つ。

 そこからはナベの出番だ。

 

「そなたには、改めて戦闘団内のオークの族長を命ずる。併せて新設する土木建築班の班長を兼務してもらう。また、名は改めてジャレンと名乗るがよい。こちらからはその字を授ける」

「はは!、有り難き幸せ! このジャレンの生涯の忠誠を御三方に」

「二の番号札を持つ者はこれへ」

「そなたを新設する布革班班長に任命する。また、名は改めてエサニエと名乗るがよい。こちらからはその字を授ける」

「は!、夫同様、生涯の忠誠を御三方に」

「十二番の番号札を・・・」

 

 こうして一通りの命名が終わり、皆の高ぶりが手に取るように判る状況でナベが最後を締める。

 

「今や鬼人となったゴブリン達と今日から新しくメンバーになるオーク達。双方に言っておきたい事はただ一つ、我々は一人一人がこのオリオンの掛替えのないメンバーだ。お互いがお互いをフォローし、苦労を分かち合い、喜びを倍にして戦闘団のために頑張ってほしい。それが最後に自分に帰って来る。必ず帰って来る。明日以降はここではもう集まれない。新天地が我々を待っているからだ。引き続き周りを信じ、俺達を信じて着いてきて欲しい。悪いようにはしない!」

 

 おおお、という歓声が周りを包む。

 新旧メンバーのやり取りは、まだぎこちなさが残るが、それでも新しいメンバー、新しい環境に興奮しているのが伝わって来る。

 その時、ナベが余韻の残る中に言葉を投げ込んでいく。

 

「よっしゃ! 固い話しはここまでだ! 後は宴だ~!」

 

 そう叫び、肉を網の上に乗せる事で宴会の開始を合図する。

 鬼人・オーク合同の大宴会の始まりだ

 

 ※ヤシャマルを除く

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