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絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
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50話 冒険者ギルド

「冒険者ギルドか。なんかそれらしく(・・・・・)なってきたな」


 ナベが軽口を叩きながらギルドのドアを開ける。

 中にはそれなりの人数がいて、報告や買取の行列が独特の賑わいを見せていた。

 何人かが視線を向けてくるが、特に興味もないのかすぐに視線を外して会話や得物の手入れに戻っていく。


「この時間なら登録は空いておるじゃろう。ほれ、向こうがそうじゃ。儂は一応登録済みなのでなお前さん等で行くがよい」


 グレインが場所を教えてくれたので、戦闘団の六人がそちらに向かい、トシが代表して声を掛ける。


「すみません、冒険者の登録をお願いしたいんですが・・・」


 登録カウンターらしきところで声を掛けると、奥からギルド職員と思しき女性が立ち上がりこちらへ向かって来る。


「登録ですね。ではこちらの必要事項を記載の上、改めて声を掛けて下さい」


 登録用紙と思しき羊皮紙が六枚配られるが、トシはハタと気づく。


(やべー、字書けるやついねーじゃねーか・・・)


 焦り始めたところにグレインがやって来る。

 声を潜めてトシに話しかけてくる。


「(芳俊よ、儂が書いてやる故、小さな声でそれぞれ教えるのじゃ)」

「(ああ、代筆してくれるとありがたい、恩に切るよ)」


 トシとグレインのやり取りが終わり、六人がそれぞれ名前、氏族名、性別、種族、身長、出身地、登録種別を伝えていく。

 ちなみに、登録種別とはどのような冒険者として登録するかの区別らしく、討伐、探索、生産、回復の四種類が選べるようだった。

 複数に登録することも可能との事で、それぞれで決めてグレインに伝えていく。

 書き上がった登録羊皮紙をまとめて、トシが改めて声を掛ける。


「あ、出来上がりましたね、では上の方から順番に手続していきます。まずはオリヒメさん」

「は、はい」

「お名前はオリヒメさん、氏族は鬼庭一族、性別は女性、種族は鬼人(・・)ですか?、身長は158フィル(1フィルがほぼ1cm)、出身はアルゴー大森林、登録は探索と生産ですね。間違いないですか?」

「はい、それでいいです」

「ではこちらの針に指を当てて、少し血を垂らして下さい。はい、その位で結構です」


 そう言って、針が付いていた金属片を、羊皮紙と一緒に隣の職員に渡す。


「このまま登録証を作成します。登録証は術が掛かった金属で、本人以外が付けると淡く光ります。冒険者ギルドでの本人確認はこの登録証で行いますので、無くさない様に気を付けて下さい。では次の方どうぞ~」


 その後は、次々と登録作業が進み、全員に登録証が渡ったのは二十分ぐらい後だった。

 ちなみに、各自の登録内容だが、

 ナベ:名前はマコト、氏族はアイダ、性別は男性、身長は177フィル、出身はアルゴー大森林、登録種別は討伐と探索

 トシ:名前はヨシトシ、氏族はサイトウ、性別は男性、身長は175フィル、出身はアルゴー大森林、登録種別は討伐と探索

 タツヒロ:名前はヒロキ、氏族はタツザワ、性別は男性、身長は181フィル、出身はアルゴー大森林、登録種別は討伐と回復

 ヤシャマル:名前はヤシャマル、氏族は鬼庭一族、性別は男性、種族は鬼人、身長は185フィル、出身はアルゴー大森林、登録種別は討伐のみ

 タカマル:名前はタカマル、氏族は鬼庭一族、性別は男性、種族は鬼人、身長は171フィル、出身はアルゴー大森林、登録種別は討伐と探索

 という情報をそれぞれ登録していた。

 また冒険者としてのランクというモノも存在し、今回は全員揃って最低からスタートにした。

 登録証の枠がランクを表すらしく、最低は木枠だそうだ。

 次が皮枠、そして鉄枠、銅枠と上がっていき、銀枠、金枠を経て白金枠というのが最高位らしい。

 今すぐにでもランク判定を受ければ、判定されたランクで登録する事も出来るそうだが、今日は時間が無かったので判定は止めた。

 そして六人は、どうせならと三ツ星戦闘団としてパーティー登録もしていた。

 一応、グレインも誘ったのだが、まあ後でも構わんじゃろう?と言われて、今回は見送ったのだった。


「お姉さん、ここでは登録すると買取に多少は色を付けてくれると聞いたんだが・・・」

「あ、収穫物の買取ですね。はい、もちろんギルドメンバーであれば多少は色を付けさせて頂きます。買取カウンターは向こうですので、種類と数量をお伝え下さい。ここが手狭なら裏の倉庫の方に回ってもらいますので」

「ああそう、じゃああっちへ行ってみるよ。ありがとね」


 それでは~、との声を背中に一行は買取カウンターの方へと向かう。

 トシが道すがらグレインに聞いてきた話を総合すると、金貨一枚が日本円で五万円から十万円ぐらいだった。

 そして、金貨一枚は銀貨で十枚、銀貨一枚が、銅銀貨十枚、銅銀貨一枚が銅貨で十枚という交換レートであった。

 なので、金貨一枚を十万円としてみると、銀貨一枚が一万円、銅銀貨一枚が千円、銅貨一枚が百円と便宜的に換算できる。

 トシはナベとタツヒロにもこの仮想レートを伝え、今後の取引の指標にすることにした。

 グレインからは大金貨や白金貨の存在も聞いていたが、普段お目にかかることはまずないと聞いて、早々に意識の外に追い出したのであった。

 買取カウンターはそれなりに混んでいた。

 今ぐらいが、今日の成果物を持ってくる時間帯なのかもしれない。

 とりあえず、トシとグレイン、ナベの三人で列に並び、タツヒロに鬼人達を預けて待っていてもらう。

 しばらくしてトシたちの順番が来た。


「おう、見かけねえ顔だが、あんちゃん達も買取だな?」

「ええ、それなりに貯まりましたので、まとめて持ってきました」

「持ってきましたって割には何も見えねえが、まあいいか。ほんじゃ持ってきたもの教えてくれ」

「まずはアイアンボアの毛皮が五頭分、オラント鹿の毛皮が八頭分、角が六対、レッドボアの毛皮が二十五頭分、グラスボアの毛皮が十二頭分、アルゴー・・・」

「ちょっと待った、ちょっと待った。いくらなんでも、多すぎるぜあんちゃん。裏へ回ってくんな。倉庫の入り口の詰め所にサイロンって爺さんがいるから、その爺さんに“ジェラールに裏に回れと言われた”と言えば大丈夫だ。ここじゃその量の買取は無理だからよ」

「分かった。みんな、裏へ回ってみよう」


 そう言ってトシはタツヒロ達にも声を掛け、皆で裏に回って買取してもらう事にした。

 一行が出て行った後はギルド内のそこここで、“おい、アイアンボア五匹だってよ”、“すげーな、久々の大物じゃねーか”、などと噂する声が途切れることなく続いていた。


 裏というよりは脇、といった感じだったが詰め所らしきものを見つけたので、中に声を掛ける。


「サイロンさんっているかい?」

「・・・俺がサイロンだ。何しに来た?」

「買取カウンターのジェラールって人から、多すぎるから裏に回れと言われたんだが・・・」

「・・・分かった。ここに出してみろ」


 ナベは順番に隣接空間から取り出し、床に並べていく。

 最初のアイアンボアで、ピクリと右目が動く。

 そのまま出されるのを見ていると、鹿の角でもちょっと反応が見えた。

 “この爺さん、おもしれー”と心で一人ウケながら、無言で獲物を出していくナベ。

 その後はイタチとテンでも反応があった。

 そして最後のレッサー・オーガを出し始めた瞬間、サイロンから声がかかる。


「ちょっと待て、こいつ(・・・)はいくつ持ってる?」

「全部で八つ(・・)だ」

「な!?、こんなのを八つ!? ・・・ちょっと出さずにこっち来い」


 そう言って、サイロン爺さんは奥へと向かう。

 訳が判らぬながらも、ナベは付いて行った。

 向かった先は解体場所だった。


あんなところ(・・・・・・)に解体前のやつを置かれても邪魔なだけだ。それに・・・あまり見られん方が良いだろうからなあ・・・」


 そう呟く爺さんの顔は不敵に笑っていた。


「よし、この辺に出しな。重ねずに並べてくれ」

「了解」


 一言返事を返し、ナベは順番にレッサー・オーガを出していく。

 そして、出し終わってナベは断り(・・)を入れる


「悪ーんだが、頭が使えないのは勘弁してくれ。体が無傷ってのを優先するとどうしてもこうなるからな」

「それは構わん。こいつらの頭は余り使いでが無いからな。それよりも体が無傷は中々お目に掛かれん代物だ。こいつは貴重な逸品だぜ」

「ん? 無傷なのは珍しいのか?」

「おい、何言ってんだ当りめーだろ? こいつ倒すのに何人必要だと思ってやがる。その上で攻撃を全て顔に合わせて・・・っていうか、おい、よっく見ると一太刀で切ったように見えるんだが、俺の目がおかしくなったのか?」

「いや、おかしくはなってねーと思うなあ・・・」

「おい、こいつなんか矢で一発じゃねーか・・・、どうなってんだこりゃ・・・」

「サイロンさん、だっけ? 細かいことはこの際、脇に置いておこう。ズバリ、買値が聞きてえ。いくらになりそうだ?」

「お、おう、そうだったな、これの査定しねーとな。・・・まずはレッサー・オーガだが、ここまで綺麗なのは、中々お目に掛かれねえ・・・、そうだな一つ辺り金貨八枚でどうだ?」

「金貨八枚、か・・・(グレイン、相場的にはどうなんだ?)」

「(普通は傷だらけで金貨五枚くらいじゃから、八枚まで伸びればまずまずじゃろうな)」

「(分かった)よし、それで手を打とう。残りはどうだ?」

「ああ、表にあるやつな。そうさな、アイアンボアが一つ金貨二枚、グラスボアが銀貨五枚、レッドボアは銀貨四枚だな。オラント鹿は皮が一つ金貨一枚、角が一対で銀貨八枚、雪ウサギは一つ銅銀貨六枚、イタチとテンは一つ銀貨一枚と銅銀貨五枚、そんなところだな。お~い、金額算定しろ!」

「・・・金額出ました。丁度、金貨百七枚です」

「だとよ。どうだ?」

「(いいか? オッケー? 大丈夫? よし)いいだろう、商談成立だ」

「決まりだな。おい、買い取り金額持って来い。あ、どうする?、多少崩して(・・・)持ってくか?」

「なら金貨一枚を、銀貨九枚と、銅銀貨九枚と、銅貨十枚にしてくれ」

「あいよ! おい、聞いた通りだ! 少し崩してやんな!」


 サイロン爺さんに若い衆が麻袋を持ってくる。


「一応、この場で中身を確認してくれや。後で四の五の(・・・・)言われても、面倒臭えだけだからよ」

「分かった。トシ、手伝ってくれ」

「どれ・・・、・・・こっちは大丈夫だ」

「ああ、こっちも大丈夫だ」

「じゃあ、最後にこの受け取り書いてくれ。これで取引完了だ」

「(グレイン、グレイン、こっちこっち)」

「(・・・お前さん等、名前ぐらいは字を覚えた方が良さそうじゃのう・・・)」


 そんなグレインの呆れ顔も気にならない、金額的に有頂天のナベであった。

20170515:ギルドの登録情報で種族を追加

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