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絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
48/84

48話 三度目の正直

今日から投稿を正常化できると思います。

これが本日の投稿分です。

 古い街道をひた走るマローダー、車中には複数の人影が乗っていた。

 最終的に、今回の調査遠征の人員は、ナベ、トシ、タツヒロ、ヤシャマル、オリヒメ、タカマル、そしてドワーフのグレインが加わった、計七名に決まった。

 グレインに関しては、トシがグレインの知り合いで鍛冶が出来るものがいれば、戦闘団に雇い入れたいとの相談をしており、ならば直接出向こうということで同道することになった。

 トシの目論見として、鍛冶師と大工を外部から招聘しようと考えていた。

 大工は建築班の顧問のような形で、鍛冶師は完全に組織自体を外部から調達しようと考えていた。

 鬼人達は、これまで火とは無縁の生活を送ってきていた。

 今後は、自分たちの生活と同レベル位まで慣れてもらうとしても、やはり火の扱いは拙いと感じていた。

 それならば、鍛冶師についてはいっそのこと、完全に外部に力に頼った方が上手く行くというモノである。

 同じ火を使うものとして調理があるが、調理に関しては味付けも含めてナベに任せておけば事足りる。

 一応、グレインからは当てはある(・・・・・)旨の返事はもらっている。

 こちらが口説けるかどうかに掛かっていた。

 そうこうしている内に、正面に森が(・・)見えてくる。


「あれがオラント街道との交差点か・・・」


 ナベがモニターを見ながら(・・・・・・・・・)呟き、車を減速させていく。

 念の為、交差点の手前で小休止するつもりだった。

 三人のスマホも、二台の車もそうだが、GPSを使う地図システムは、中のデータがこの世界のモノ(・・・・・・・)に切り替わっていた。

 大掃除の際に、運転中のナベが気付き、帰った後にトシとタツヒロを含めて三人で確認している。

 スマホに関しては完全にチェック漏れだった。

 ネットはダメだったが、地図関係のみデータが自動で差し変わって機能していたのだ。

 それはさておき、後部座席のメンバーが止まった途端に次々に車を降りて背伸びをしている。

 空間はそれなりにある筈だが、その辺はやはり地球世界の感覚なのかもしれなかった。


「ヤシャマル、やはりこの中は狭いか?」

「芳俊様・・・、御三方様は慣れてらっしゃるのでしょうが、(それがし)にはちと狭く感じますな・・・。移動の速さを考えると我慢した方が得なので、某も我慢しております」


 トシが一番体を伸ばしているヤシャマルに尋ねると、ヤシャマルは苦笑いしながら身も蓋もないコメントを述べる。


「オリヒメやタカマルはどうだ?」

「私は狭さはそれほど感じませんが、何というか、箱が動く(・・・・)ということにまだ慣れて居りませぬ・・・」

「俺は特に不便は感じませぬなあ・・・。それよりも次々と移り変わる景色に気を取られてそれどころではありませなんだ」


 他の二人もそれぞれの思うところを述べ、その感想の違いにうんうんと頷くトシだった。

 前席には、またしてもグレインが乗っていた。

 何のかんのと言っても、宿場町に一番行った事があるのも結局グレインだったのだ。

 そのグレインの話しでは、宿場町の手前で降りて徒歩で接近した方が余計な刺激を与えなくて済む、との事である程度近づいたらマローダーはしまう手筈となっていた。

 昼食は取らずそのまま進むので、ここからだとあと三時間から四時間程度で目的地に着く計算だった。

 まだ昼前なので、歩くことを考慮に入れても四時から五時くらいには付けると踏んでいる。

 ナベとタツヒロは仲良く一服だ。

 二人の元へトシが相談に行く。


「夕方には町に着くんだが、とりあえず今日は皮を町で捌いてから宿を取る、でいいか?」

「まあ、こっちの金の持ち合わせがねーしな。それっきゃねーよな」

「だよねー。何がしかお金があればまた違うんだろうけど、まずは先立つものを確保しないと」

「だな、じゃあそれで決まりだ。出発しよう、皮を捌くんなら早く着くに越したことはない」

「よし、じゃあ乗ってくれ。出発だ!」


 ナベの掛け声と同時に、休憩していたメンバーが元の席に戻り、移動が始まる。


 ---


 何事もなく二時間が経過し、もう一度休憩を取ろうとした矢先、ナベが声を上げる。


「近くで何か起きてるな・・・。誰かがあいつら(・・・・)に襲われてる・・・」

「あいつら?」

「ああ、三回も気配を感じりゃ嫌でも判るようになるってもんかもな。襲ってるのがレッサー・オーガだ。数は・・・、八つ。で、それから逃げてるっぽいのが・・・三つだな東の森の中だが、方向からするともうすぐその辺に出てくるぞ?」


 言外に、どうする?というニュアンスを漂わせて、ナベは誰に聞くとなく問いかける。

 大掃除の帰りにグレインから聞いたが、レッサー・オーガはその死体が製作材料になるらしく、売ればそれなりの値段で売れるそうだ。

 大掃除の際は、皆の仇という事でそれどころではなく、焼いて留飲を下げたが、普通に出くわせばいい獲物だという。


「ナベ~、昨日の話しを聞いてただろう? 狩るしかなくね?」


 タツヒロが茶化しながら狩る提案をしてくる。


「賛成~」


 トシも軽さ全開で賛意を示すと、鬼人達やグレインもそれが良かろうと賛成してくる。

 ナベは全員の賛同を得て、笑みを浮かべてハンドルを握り直す。


「なら、インターセプトコースを取るか!」


 そう言い放ってアクセルを抑えると、進路を街道から外していく。


「総員、展開用意! 止めた瞬間に後ろから降りてやつらを制圧する! 鼻先かすめてやつらの進行方向の左側に出るからな、一気に距離詰めて仕留めろ! グレインとトシは追われてる方の対応を頼む!」

「「「おう!」」」


 減速しながら全員に号令をかけるナベに、勇ましい返事が返って来る。


「追われてる方が来るぞ!」


 そうい終えるや否や、三つの影が森の中から飛び出してくる。

 追われているのはケガを負った白い狼一匹と灰色狼二匹だった。

 比較的無事そうなのが灰色狼一匹で、白いのともう片方の灰色狼はそれなりの深手と見え、走る速度が上がらない。

 その後からレッサー・オーガが森から飛び出てくる。

 相変わらずのっそりとしか動けていない。

 まだ狼たちとの距離はあるのだが、あの速度差では追いつかれるのも時間の問題だった。


「それじゃあ狩りの時間の開始といこうか。戦闘の一匹を轢くからから全員衝撃に備えろ! それが開始の合図だ!」

「景気がいいな!」

「「「おう!」」」


 全員の返事を聞き終えると、ナベは速度を上げ、周りの状況を睨みながらここだ!とハンドルを切る。

 丁度、先頭のレッサー・オーガに横からブチ当てるようにマローダーをを操作し、当てながら後部扉を開ける。

 当てられた勢いで吹き飛ばされる先頭のレッサー・オーガを尻目に、当てた衝撃で車を止め、後部扉からわらわらと狩人たちが出てくる。

 そのままトシとグレインとタツヒロは狼たちの元へ向かい、ナベ、ヤシャマル、タカマルがレッサー・オーガを相手取る。

 オリヒメは念の為、マローダー付近で待機。


「二人とも分かってるなー!、頭だけ狙えよー?」


 そう言いながら、散歩にでも行くようにレッサー・オーガに近づいていくナベ。


「了解です!」


 そう言いながらタカマルは矢を放ち、たった今森から出て来たばかりのレッサー・オーガが絶命していく。


「誠人様がそちらなら、某はこちらから・・・」


 これもナベに負けない軽い足取りで近くのレッサー・オーガに近寄って行く。

 タカマルが二射目を放ち二人目を仕留めると、ヤシャマルが手の長剣を投げつけ正面のレッサー・オーガの顔面を貫く。

 そのまま相手に飛び乗りつつ刺さった長剣を抜き放ち、次の得物の頭に飛び乗りながら上から長剣を突き刺し、こちらも二匹目を仕留める。

 その間、ナベは瞬行を使いすれ違いざまに三匹の首を刈り取っている。


「残るは・・・、ああ、もういねーか」


 最初に轢いたレッサー・オーガはその衝撃に耐えきれず、既に絶命している。

 ナベは直ぐに終わってしまった狩りの時間を惜しむかのように、タバコを取り出し一服を始めた。


 その頃、狼達を追っていた三人は狼達の治療を行っていた。

 マローダーを見ても止まらなかった狼達だが、それがレッサー・オーガの先頭のやつに当たりに行った瞬間、逃げるのを一旦止めて成り行きを見ていた。

 そのマローダーから人が降り、こちらに向かって来ると見るや、また直ぐに逃げ始めたのだが止まってしまった勢いが戻ることは無く、すぐに三人に追い付かれてしまう。

 ケガの軽い一匹が威嚇し、他の二匹をかばって三人の前に立つがグレインの一言でその態度が変わる。


「お主等、もしや獣人か?」


 そのグレインの問いかけに、灰色狼の一匹が目の前で一人の獣人に変化(へんげ)していく。

 変化が終わった獣人は、短剣を構えたまま油断のない声でグレインに応える。


「そこのドワーフよ、何故に儂らを存じておる。如何にして狼の姿の我らを獣人と見破った」

「昔、真祖獣人(ライカン)の戦士と知り合うた事があるが、その時の感じと似ておったからな。そうでなければ、普通に狼じゃと判断しておったろうよ」


 そう言ってグレインは油断のない目を獣人達に向けるのであった。

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