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絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
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47話 鬼庭一族

連休最終日、やっとこれだけ纏められました・・・

まとまった分だけ投稿します。

 ゴブリンの村に戻ると、オークの村長ジャレンが何とか意識を取り戻していた。

 すぐさまタツヒロが容態を確認しに行く。


「あ、あんたが俺を?」

「ああ、俺は竜沢弘樹、この三ツ星戦闘団の主の一人だ。今は(・・)無理して喋らなくていい」


 そう言いながらジャレンの体中を見立てていくタツヒロ。


「ケガそのものは大丈夫だが、やはり体力は落ちてるな。ケガしてから治療まで時間がかかったのが影響してる。だが、この分なら五日も寝れば、ケガ前の八割ぐらいまではすぐに回復出来るだろう。その後は本人の努力次第だ」


 ジャレンに寄り添うエサニエに向かって説明を続けるタツヒロ。

 エサニエの顔に光が戻ってくるのが判る。


「治療の段階は終わったな。しばらく静養だ。こいつに精の付くものを食べさせてやってくれ。どれ、次のやつを見てくるか」


 そう言い終えて、タツヒロは別なケガ人の方へ向かう。

 そのままトシが横になっているジャレンに話しかける。


「オークの村の村長だったというのはグレインから聞いている。俺は三ツ星戦闘団の主の一人、斎藤芳俊だ」


 今の自己紹介が呑み込めたぐらいで、トシが話しを続ける。


「一応、俺たちの方でレッサー・オーガは始末してきた。こっちに来られても困るからな、事前に対処してきた。が、問題は君らの村だ。建物は八割が倒壊しており、君らを食べた(・・・)と思われる遺体もかなりの数が確認できた。生存者も期待できない訳では無いが、今の段階では何とも言えん。詳しいところは一緒に行ったグレインから聞いてくれ」


 いつの間にか来ていたグレインが、トシの脇にいた。

 ジャレンとエサニエの二人をグレインに任せ、トシもテントを出る。

 トシは、帰り道に考えていたことをナベに相談しに。ナベのところへ向かった。


「ナベ、ちょっといいか?」

「おう、どうしたトシ」

「帰り道につらつらと考えてたんだがな?、ゴブリン達の件、タツヒロがグレインに素性を隠せと言われてただろう? それでこの際、別種族を名乗らせてみようと思ってる・・・」

「というと?」

「あいつらは鬼人(・・)ということにしよう。ついでに全体を氏族にもするつもりだ。氏族名は適当に決めれば・・・」

「鬼人なら、鬼庭でどうだ? どうせ日本語で名を与えたんだから、日本風の氏族名でも問題ねーだろ」

「鬼庭、鬼庭・・・、まあ他の鬼付きの苗字も悪くは無いが、仙台人としちゃ鬼庭だろうな・・・。よし、それで行こう」


 タツヒロが治療したオークを見て回り、異常がないことを確認してナベ達と合流する。

 トシとナベの話しを聞かされ、二つ返事で内容を了解し出かける前に発表しようという事に決まった。

 その後、三人はハルナガとタダツグの元を訪れ、町への調査遠征の期間は一週間(八日)前後と見込んでいること、オークの村の生存者がいれば積極的に保護すること、ジャレン達オークの村の生存者を帰るまで保護しておくこと、等を伝えて出発は予定通り明日にすると告げた。

 ハルナガらも全て異存無く、出発の準備は進んでおり指示されたものは明日の朝には揃うとのことで、留守は任せてくれと胸を叩く。

 最後にトシが、明日の出発前に皆に申し渡すことがあるので、村の中央に集まって欲しい旨を伝えて三人はメイサに戻った。


 ---


 翌朝、メイサにて各自の得物や持ち物を確認する三人。

 念の為、絶界を掛けてメイサを後にする。

 ゴブリン達の村へ到着し、まずは積み荷の確認を始めるトシとナベ。

 タツヒロは、もう一度容態の確認をするためにオーク達のところへと向かう。


「あ、おはようございます弘樹様」


 タツヒロに気付いたエサニエが声をかけてくる。


「おはようエサニエ、ジャレンの様子はどう?」

「回復の為なのか、ずっと寝ております。たまに起きて水を飲む位ですね」

「そうか・・・、食べられるようになると、また違ってくると思うが・・・。食べれるだけの体力が付くまでは、もしかすると水だけかもねえ・・・。まあ、いずれにせよ快方には向かってると思うから、根気よく付き合ってあげてよ」

「分かりました。食べれる様になったら腕によりをかけて美味しいものを作ります」

「そうしてやってよ。それでなんだけどさ、俺達はこれから一週間位出かけてくるんだよ。その間、ジャレンには今後のことを考えてもらいたい旨を伝えて欲しいんだ」

「今後のこと、ですか・・・」

「ああ、今後オークの村長としてどうするのか・・・。あまり選択肢はないだろうけど、決めないといけないことだろう? もちろん俺たちが帰るまではここに居てくれていい。その辺の話しはハルナガやタダツグにもしてある。君ら以外の生存者がいるかどうかの調査も含めてするように言ってあるから、もしかすると仲間が見つかるかもしれない。そういった諸々を含めて決めて(・・・)おいて欲しい」

「・・・分かりました。起きたらすぐにジャレンに伝えておきます・・・。一つ聞いても?」

「なんだい?」

「もし・・・、もし仮に(・・)、我らもこの戦闘団に加わりたい(・・・・・)となった場合は?」

「んー、基本的には認められるんじゃないかな? 色々と(・・・)条件はあるけどね」

「条件、ですか・・・」

「もちろん無条件って訳にはいかないよ。だけどそんなに理不尽でもないはずだよ・・・。その辺は帰ってから話そう。それなんかも含めてオークの結論(・・・・・・)を聞きたいね」

「分かりました。しっかりとジャレンに伝えます」


 頼んだよ、そう言い残してタツヒロはジャレンのテントを離れる。

 そのまま村の中央に向かうと、持参品の仕分けが終わりナベが絶界に収容し終えていた。


「どれぐらい集まったの?」

「ああ、アイアンボアの毛皮が五頭分だろ? オラント鹿の毛皮が八頭分、角が六対だ、それとレッドボアの毛皮が二十五頭分、グラスボアの毛皮が十二頭分、アルゴーイタチが九匹分、テンが五匹分、雪ウサギが三十五匹分だ。これをなるべく高く売ってこねーとな」

「まあ、これだけあればそれなりには行けると思うが・・・、油断は禁物だな」

「まあ、なるべく吹っかけてこようよ。高いに越した事は無いからね」

「さて、荷物の準備も終わったし、発表(・・)して出かけるか」

「おお、早く出かけようぜ」

「すんなりと受け入れて(・・・・・)くれるといいけど・・・」


 タツヒロの心配を他所に、トシが皆の前に出て話しを始める。


「皆に、出かける前に伝えておきたい事がある。昨日、レッサー・オーガの掃討に行く途中に、かつて国盗り衆と呼ばれたゴブリンロードの伝説を聞いた。ハイゴブリンの話しも同時に聞いてる。そういった過去に煩わされるのはこちらとしても本意ではない。なので、新しい種族として今日からお前達は『鬼人』を名乗ってもらいたい。ゴブリンから進化し鬼人となったと。それと併せて、お前達に氏族の名を授ける。お前達は今後『鬼庭』一族を名乗るがよい。アルゴーの鬼人、鬼庭一族だ!」


 最後の言葉を発した途端、また(・・)あのマナの消失現象が三人を襲う。

 今度は、三人とも最初から全力(・・・・・・)だった。

 ヒトの領域をはるかに(・・・・)逸脱する膨大なマナが、三人の周囲を埋め尽くす。

 それは、そのまま鬼人達をも包み込み、巨大なマナの塊が出来上がるが、しばらくすると不意にマナがかき消されたように消失する。

 今度はナベも周囲に合わせて、気勢を調整しており、マナの放出は二人と同時に終息していた。

 さすがに学んだらしい。

 あとに残るは、髪が一気に伸び、体つきも精悍さが増し、肌の色から緑がほぼ消え、最早ゴブリンの面影が牙のみになってしまった、元ゴブリンたる鬼人達と、それを呆けた顔で見つめるグレインやオーク達であった。


「・・・おかしいなあ。・・・鬼人って、ゴブリンロードの名前隠すために付けた、名前だけ(・・・・)の種族だったはずなんだけどなあ・・・」


 トシの独り言が、静かに村の中に響いていた。

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