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絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
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46話 国盗り衆と大掃除

何か今回は、タイトルが思いのほか『まんが日本昔話』感が強くて当惑してます。

が、変えずにこれで。

グレインはやっと驚愕が収まった様子でタツヒロに告げる。


「・・・ヒロキ、ジャレンを救ってくれたお礼に、一つ忠告しておきたい。ここにゴブリンのロード種がいると判ると、非常に面倒(・・・・・)なことになるやもしれん。なるべくその素性は、隠した方がよいじゃろうな」

「その口調は、まるでその面倒事(・・・)とやらを詳しく知ってるみたいだね・・・」

「ん?、ああ、そういう意味なら儂も詳しい事は知らん。じゃがな、面倒事になるのだけはおよそ見当がつく」

「どういう事?」

「今はフォス王国と呼ばれている辺りを含めて、ノウソル一帯は古代オランタルの時代に、ノウソル王国と呼ばれておった。その建国王、クレイン一世が従えておったのが、『国盗り衆』と徒名されたゴブリンロード五人じゃ。その強さは、南方でオーガの帝国を築いたオーガロード達に勝るとも劣らぬと言われ、瞬く間にノウソル王国を打ち立てたが、クレイン一世以降、誰もゴブリンロードを従えた者はおらぬのじゃ。もちろん、そのような強さの者を誰も放って置く訳は無く、一時的にゴブリン達はほとんどが主持ちとなるほどじゃったが、確認されている限りでは、歴史上ゴブリンロードはそれ以降は生まれておらぬ(・・・・・・・)。もしかすると、誰も知らない処で居たのかもしれぬがの、存在を公にすることは無かったのじゃよ。それ故にゴブリンロードとは、伝説(・・)を通り越しておとぎ話(・・・・)だと思われるほどになっておったのじゃが・・・、はてさて・・・」


グレインは髭をしごき言葉を切るが、タツヒロは内心困っていた。


(伝説とかおとぎ話とか言ったって、現にここにいるじゃん。・・・しかし、こいつらってそういうレベルの存在だったわけ? 普通にゴブリンが進化したものだとばかり・・・)


そこにグレインが付け加えるように話し始める。


「それにの、ここの者達がハイゴブリンなのも、併せて隠した方が良かろうな。ハイゴブリンもゴブリンロードと同じ様に、クレイン一世の御代にしか確認されておらん。もしかすると、ハイゴブリンからしか(・・・・)ゴブリンロードには進化せぬのかもしれんな・・・。まあ、少々無理はあるが、ホブゴブリンで押し通した方が無用な軋轢は生まぬぞ? もちろん、儂らがしゃべることは無いと思ってもらって結構じゃ。命の恩人を裏切るような真似はせんよ」

「まあ、その辺は君らを信じるしかないんだが・・・。それよりもレッサー・オーガってやつ、オークの村にはどのぐらい来た?」

「六匹までは数えておったが、そこから先は逃げるのに必死でな数える暇が無かったわい」

「よし、そいつらは後で俺らが始末する。それとジャレンが治るまではここに居ざるを得ないはずだが、問題はその後だ。元の村に帰るのか?」

「その辺はジャレンのやつが決める事だが・・・、正直な話し、この人数では村としての存続は、多分無理じゃろうなあ・・・」

「うーん、だろうねえ・・・」


今後の展望が見えぬままのオークの将来を慮っていると、ナベとトシが戻ってきたようだ。


「なに、二人とも荷物取りに行ってたって?」

「おお、タツヒロ、終わったか。で、容体は?」

「全員、危ない処は脱した。一番ひどかった村長のジャレンは今日明日が勝負だな。明後日にはその辺が見えてくると思うが・・・。ってかナベ、調理器具取りに行ってたのか?」

「ああ、調理器具とタープとテント類な。とりあえず、ダッチオーブンと焚火台とあれば、最低限の煮炊きは出来るだろ。後は、建物に余裕がない以上は外に居るしかないからな。重傷者はテントに、元気ならタープで我慢してもらう」

「ナベ!、トシ!、設営するから手伝ってくれ。あっちのあの辺なら、テント広げても大丈夫だそうだ」


トシの呼びかけに、ナベとタツヒロは会話を止めて設営場所へ向かう。

グレインも後を追いかけてくる。


「何かするなら、儂も手伝おう。おい、お前らも来い」


グレインが、無傷だったオーク達にも声を掛け人足が増える。

作業をしながら、お互いに自己紹介をし合い、持ってきたテントを完成させていく。

ジャレンを静かにテントに運び入れ、オーク達の訪問騒動はひとまず沈静化した。

だが問題が解決したわけではない。

タツヒロが、ナベとトシに大掃除(・・・)の計画を話す。


「・・・という訳で、レッサー・オーガはまだ六匹以上生きてこの近くをうろうろしている可能性が高い。ちょっと大掃除が必要なんだよ」


それを聞いてナベが、早速とばかりに立ち上がる。


「二人とも、そうと決まれば善は急げだ。すぐに行こう」

「まあ待て、ちょっと時間をくれ。試したいことがある」


そう言ってトシは名を呼び始める。


「ジュズマル、トモエ、ウシワカ、いるか?」

「はい」

「は!」

「は!、これへ」


呼ばれた三人が駆け付けると、トシが指示を出す。


「レッサー・オーガの討伐に参加せよ。留守を託す上で、改めてその実力を見たい。すぐに出発する故、準備を!」

「「「はは!」」」


ナベがトシに尋ねる。


「あの三人を連れていくのか?」

「ああ、そのつもりだ。テントの設営の時に聞いただろ? 国盗り衆(・・・・)と呼ばれた者たちと同じ様な力があるとすれば、色々と安心だろ? それを確かめるのさ。それとグレインさん、村までの・・・」

「グレインでよい。さん付けなぞせずとも良いわ」

「なら、グレイン、オークの村までの道行きを教えて欲しい」

「いや、討伐に行くというなら儂も同行しよう。儂一人がいたところでどうなるとも思えんが、せめて一太刀、やつらに浴びせてくれようぞ」

「オークの村からこの村まで、ずっと森の中を来たのか?」

「いや? オークの村から西に道が伸びておってな? この村からだとずっと南に進むとその道に行き当たる。儂らはその道沿いに来て、この村の南まで来た辺りで森に入ったのじゃ」

「という事は、南に向かえば道を利用できる、と。道幅は?」

「行商が馬車で来る位の道幅をあるぞ?」

「それなら、テストも兼ねてマローダーでチャチャっと行ってこよう。大掃除に時間かけたくないし」

「なら、一度戻って俺らも準備だ」


ナベの言葉を合図に遠征準備に取り掛かる面々。

ゴブリンロード達は、それぞれの得物を磨きだし、グレインは腰のハチェットを研ぎ始める。

三人はメイサまで戻り、それぞれの得物とマローダーを持ってゴブリンの村に戻る。

エサニエが煮炊きが出来ると聞いて、ナベがエサニエに焚火台とダッチオーブンを託していた。

遠征組七人の準備が整い、ゴブリンの村を後にすると、およそ三十分ぐらいでグレインの言った通り、道に出る。

充分にマローダーが通れる道幅があり、舗装は無いものの、道としての出来はそう悪くはない。

ナベが隣接空間に収容してきたマローダーを出すと、グレインとゴブリン達は驚きの声を上げる。


「・・・これは、何じゃ?」

「おお、メイサの前にあったやつですな?」

「これをどうするんだろう・・・」


感想を聞いている暇は、残念ながら無いのでナベが皆に呼びかける。


「今から後ろの扉を開ける、そこに全員入ってくれ」


マローダーには、まだトシの荷物が雑然と並べられているが、何とか全員が乗れたのでエンジンをかけ出発する。

動き出した途端に後部から叫び声が上がり、興奮した様子が窺える。

運転をナベが、助手席には道案内にグレインが乗り、後部座席にトシとタツヒロ、ジュズマル、トモエ、ウシワカが乗り込んでいた。

トシとタツヒロが平然としていることから、ゴブリン達も驚きから興奮へと変わっていくのだった。

グレインも驚いていたのは最初ばかりで、これはなんじゃ、どうやって動いておるんじゃ、等とうるさく聞いてくるようになり、ナベは耐えられずトシが詳しいよと丸投げして、トシに半目で見られていた。


---


結果として、大掃除(・・・)さっくり(・・・・)と終わった。

今回はトシとタツヒロは待機し、ナベがグレインも含めて五人で相手をし、ジュズマルが首を刎ねて一匹、トモエが頭を吹き飛ばして一匹と半、ウシワカが一刀両断にして一匹と仲良く戦果を分け合った。

トモエの半分は、グレインがハチェットを三合浴びせて、危うくなったところを近くにいたトモエとナベで止めを刺したのでカウントされた戦果だった。

ゴブリンロードたる彼らに取っては、レッサー・オーガのレベルでは、もはや相手にもならないようであった

残りの二匹を、ナベが花を摘むように首を掻きとり、大掃除は完了した。

だが、現場の様相が凄惨だったため、皆でオークの遺体とレッサー・オーガの死体を広場に集め、火をかけてきた。

延焼しないであろう場所で、周りの土を掘ってちょっとした壁を作って来たので大丈夫であろう。

グレインは置いてきたままだった自身のバトルアックスを探し当て、背中に背負う。

そして、一つの遺体から剣と盾を回収してきていた。


「それは?」

「ああ、レンドの遺品じゃな。見ればつらくなるじゃろうが、これをここで朽ち果てさせた方が、後から余計につらいじゃろうからな・・・」

「かもな・・・」


しばし、鎮魂の時を過ごして遠征隊は帰路へ着いた。

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