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絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
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4話 界渡り 2

 界守りの言葉が、終わるか終わらぬかぐらいのタイミングで、界守りの脇に新たな人影が現れた。


「おお、技守りよ、呼び出して済まぬな」

「界守り様、お呼びにより参上致しました。・・・ほほう、今回はまた・・・。空間ごととは初めてに御座いまするな」


 技守りと呼ばれた壮年の男性が、こちらを眺めながら界守りに答えた。

 嘆息する技守りに、界守りの老人は心得顔で頷く。


「それでな技守りよ、いつもの通り、“授与の儀(あらはし)”を頼む。今回も、少し甘めにな」

「甘め・・・ですか。まあ、八割といったところであれば可能でしょう。早速、始めますか?」

「うむ、頼む」


 その言葉を受けて、技守りが三人の方を向いて話し始めた。


「そなたら三人に対する、授与の儀(あらはし)を始める」

「これは、この世界でも月に一度行われる儀式の一つだ」

「この世には、古来より受け継がれし幾多の技・スキルが、新たな活躍の時を待って眠っておる」

「そのスキルを顕現させるのがこの授与の儀(あらはし)という儀式だ」

「その者の培ってきた経験や技量、知識や適正に応じてスキルとは開花する」

「スキルが顕現、開花すれば、この世界でも多少の役には立とうというもの」

「何が顕現するかは誰にも判らない。そなたらのしてきた事が、結果としてスキルにつながるのだ」

「では早速始めよう。誰からやるか決めてくれ」


 そこまで一気に話して、技守りは言葉を切る。

 三人は顔を見合わせ、話しを始める。


「・・・なんつーか、今一つ付いて行けない感があるが、要は儀式をするから順番を決めろって事だよな。結局、全員やるんだから、あれだ、じゃんけんか?」


 困ったような、面倒くさそうな、しかし面白がってるような声でナベが二人に話しかける。


「うーん・・・じゃんけん、・・・まあ、それでいいか」

「・・・、ナベとトシがそれでいいなら、それでいこう」


 トシとタツヒロがそれぞれ返答し、じゃんけんの準備をしている。

 その様子を、やる気を顔に浮かべながらナベが声を掛ける。


「じゃあ、それで決まりだ。行くぞ? 最初はグー! じゃんけんぽいっ!!」


 最初の勝負は、トシが珍しくもグーのまま勝利を決めた。

 タツヒロがすかさず言葉をつなぐ。


「ナベ、次だ。行くぞ。最初はグー! じゃんけんぽいっ!!」


 ちょっとした気合の差でもあったのか、二回目はタツヒロが勝利し、ナベが最後で順番が決まった。


「今一つ、その“技・スキル”というものがよく分かりませんが、技守りさん、私が最初です」


 トシが、勝負の結果を確認して、技守りに声を掛ける。


「では始めようか。余がそなたの頭に手をかざす故、そなたは『わが身に眠りし技よ現れ給え』と唱えるがよい」


 それを聞き、技守りがトシにやり方を説明したのち、そのままトシの頭に手をかざすと、その手が輝き始める。

 すかさず、若干の恥じらいを覚えつつトシが呼びかけた。


「わが身に眠りし技よ現れ給え」


 トシが唱えると、技守りの手からトシの体に光が移るように移動し輝き始める。

 すると、体の周りで明滅していた光が、ひときわ明るく輝いた。

 それが四回続き、そのまま光が消えていった。

 徐に、技守りが口を開く。


「全部で四つのスキルが顕現したようだな。この世界を生き抜く上で、その助けになる事を願っておる」


 技守りがトシから離れ、タツヒロとナベの方を向く。


「次は誰の番かな?」

「次は俺ですね・・・」


 そう言って、タツヒロが一歩前に出る。

 出てきたタツヒロに、先ほどトシにしたのと同様に手を頭にかざしながら、技守りは言葉を掛ける。


「では先ほど見ていた通りで唱えるがよい」


 それを聞いて、タツヒロもトシと同様に、若干の恥ずかしさを覚えつつ、これまた同様に唱え始めた。


「わが身に眠りし技よ現れ給え」


 トシの時と同じく、技守りの手から光が移るように、タツヒロの体も輝き始める。

 タツヒロも四回、明るく体が光った。


「そなたも四つか。この世界を生き抜く上で、その助けになる事を願っておる」


 技守りがタツヒロから離れ、ナベの方を向く。


「最後はそなたじゃな」

「ああ、俺だ。俺にはいくつ来るのか・・・」


 そう言ってナベが前に出る。

 そのまま技守りがナベの頭に手をかざし、呼びかける。


「そなたも同様に唱えるがよい」


 ある意味、覚悟を決めてナベも唱える。


「わが身に眠りし技よ現れ給え」


 技守りの手から光が移り、ナベの体が輝き始める。

 ナベの光も四回だった。


「・・・ふむ、そなたについては、ちと面白そうなことになっておるが、それについて余から話すことは止めておこう。この世界を生き抜く上で、そなたのスキルは大いにその助けになるであろう」

「それともう一つ。突如スキルを獲得したところで、渡り人には慣れぬことであろうからな。余の加護を三人に授けておこう。起きたら確認しておくように」

「目が覚めたら、余からの加護も含めてじっくりとスキルを確認し、役立ててくれ。余からの手助けはここまでだ。慣れぬ異界であろうが、三人とも達者で暮らせよ」


 そう言って、技守りは現れた時と同じように姿を消した。


「これでわしの用事も済んだでな、わしも戻るとしよう。そなたらの今後に、幸多からんことを願っておるぞ?。帰る方法が見つかると良いのだがのお・・・」


 同じように、界守りも戻るらしい。


 言葉が終わると同時に辺りが暗くなる。


 それと合わせるように、唐突に3人とも意識が無くなっていった・・・

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