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絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
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39話 戦闘団の置かれた状況

昨日上げる予定でしたが、仕事の事情に引き摺られて、本日まで伸びてしまいました。

お待たせして、ごめんなさい。

 昼時に差し掛かり、まずは飯にしようと用意を始める。

 ゴブリン達に聞くと、お昼は食べない事が普通なのだそうだ。

 一日中、狩りや採集、その他の仕事をして、日暮れ前に夕飯を食べる。

 その残りを翌朝に回して、また食料確保の一日が始まる、との事だった。

 十日ぐらいに一度、行商がやって来るらしく、狩った獲物の毛皮や採集した豆類等を、塩や布、刃物等と交換しているそうだ。

 今日は午後から解体の続きをやろうとしていたので、そのまま仕事についてもらう。

 狩猟班が解体、調理班が食べる大きさにばらしていく流れだ。

 タツヒロが解体に加わり、ナベが調理班に回る予定だ。

 そこまで決めて、三人はコテージに戻り、さっさと昼を済ませる。

 今日はまたタツヒロのリクエストで、インスタントラーメンの焼きそばだ。

 素早くかっ込み、一服に入る。


「タツヒロとナベは、さっきの通りで動いてくれ。俺はハルナガやタダツグと少し話しをしてくる。それと並行して、風呂にも入ってもらうつもりだ。一回に四人ずつなら問題ないだろ。まあ、石鹸類は足りそうもないから、お湯に入ってこすって終わりだがな」

「分かった」

「了解~」


 腹も膨れ、複製タバコを吸って、すっかりご機嫌の二人にトシは話しを続ける。


「基本的な地勢や近隣の状況、とにかく調べられるだけ調べてみる。この、何も判らん!という状態を、いい加減脱したい」


 三人は昼休みを終え、それぞれの仕事場へと向かう。

 ナベとタツヒロは外の即席テーブルへ、トシはハルナガとタダツグ、それとタカマルとウシワカをコテージへ呼ぶ。


「四人に来てもらったのは、他でもない。まずは、先ほども言った通り、お前達全員に風呂に入ってもらう。入り方は教えるので、タカマルとウシワカは特にしっかり(・・・・)と覚えてくれ。次に入る連中に、教えてもらう必要があるからな」

「分かりました。二人ともいいな? 芳俊様の言う事を、しっかり覚えるんだ」

「「はい!」」

「じゃあ、こっちへ」


 タダツグの確認にしっかり返事をするタカマルとウシワカ。

 職長としての自覚が、早くも出て来たのか、口調に迷いが無い。

 それを聞き、トシは四人に風呂の入り方を教え、実際に見ている前で入らせる。

 四人とも、おっかなびっくりの初風呂だったが、お湯には馴染んでいた様子だった。

 急いで体をふき、次の四人を選んで呼ばせる。


 ---


 あとは二人に任せて、ハルナガとタダツグをリビングへ呼ぶ。

 二人にソファを勧め、トシは話しを始める。


「今日は二人に色々と聞いて、確認しておきたいことがあるのでここに来てもらった。知りうる限りを教えてくれ」

「分かりました」

「何なりとお聞き下さい」


 ハルナガとタダツグの返事に、頬が少し緩む。

 初めての部下か・・・、と感傷に浸りながら、トシはこの小さい(・・・)初の部下に話しを続けた。


「まずは地勢だ。ここは見る限り森の真っただ中という感じだが、この森に名前はあるのか?」

「この森は、古代オランタルの時代から、“アルゴー大森林”と呼ばれています。昔語りに、古代オランタルのアルゴー連合王国が栄えた場所と聞いておりますな」

「ドワーフ王国とエルフ王国の連合体だった国で、森に数ある自治都市も含まれ、アルゴー大森林全域を支配下に置いていたようです」

「もっとも、今となっては、地中海沿いを白銀(しろがね)山脈まで走るオラント街道と、ディレル川の河口にかかるカリント大橋にその痕跡を残すのみ、というのが行商の受け売りですね。そうそう、昨日の川がディレル川です、芳俊様」

「タダツグよ、お前達はディレル川まで行ったのか・・・、何という無茶を・・・」

「族長、我々にはお三方が付いておったのです。何も問題はありませんよ」

「うーむ、まあ、それはそうなのだが・・・」


 この辺は、口うるさい親父とそれが通じなくなってきた息子、そのままだ。

 とりあえず、話しを戻させる。


「それなら、地図にするとこんな感じか?」


 トシが略図を書くが、二人ともピンと来ていない。


「アルゴー大森林を、空から見たらどう見えるか?を書いてみてるんだが、判るか?」

「ああ、そういう事ですか。言われて、何となく判りました」


 タダツグはどうやら理解出来たようだ。

 ハルナガがまだっぽいが、時間が惜しいので、そのまま話しを進めるトシだった。


「では、これはそういうもんだと思って見てくれ。ここが俺たちのいる処で、東側に川があったな。ディレル川の河口まではどのぐらいかかるんだ?」

「行商に聞いたことがありますが、ロバで四日から五日ぐらいかと。ここの西側にオラント街道が残っており、そこまでは早いそうです」

「とすると、ディレル川の河口はこのぐらいの処か・・・。その辺に町か何かがあるのか?」

「はい、行商達の基地になっている、宿場町があると聞いています。この森には、我々の様に小さな村がいくつもあります。行商から聞いた話ですと、我々と同じ草ゴブリンやオーク、獣人の村もあるそうで、はるか西にある白銀(しろがね)山脈には、かつての王国の末裔のドワーフ達の集落があり、ハミール湖の辺りにはエルフの里やリザードマンの集落もいくつかあると聞いておりました・・・」

「ハミール湖ってのは、どの辺にあるんだ?」

「ディレル川を、北にずっと遡って行くとハミール湖に出ます。大きな湖で内海とも呼ばれております」

「なるほど、大まかなところはこんな感じかな? この白銀(しろがね)山脈よりさらに西側はどうなってるんだ?」

「そちらは、ウェストル地方と呼ばれております。が、我らもよく知らぬ土地ですな。行商もオランタルの出なので、それ以外の所は余り話題に上りませんな」


 知ってる話題と見て、ハルナガも答える。

 このくらい判れば、上出来か?とペンを置くトシ。


「まあ、今日の所はそこまではいいか。この近くの様子はどうなのだ? 近くに村などはあるのか?」

「オークの村が、ここから南東の方にあったはずです。それから北西側にはちょっと大きい獣人の集落が、それから北東の川近くとここの南側に、同族たる草ゴブリンの集落や村があるとか。どちらも我らよりも大きな村だそうですな・・・」

「そうか。狩りの獲物に関してはどうだ? アイアンボアみたいなのはまだいるのか?」

「アイアンボアは昨日通り掛かった倒木の所が大きな縄張りですね。それ以外は北の方に縄張りを持つ大きめの群れが居たそうです。グラスボアやレッドボアなどは小さな縄張りで少数が暮らすため、見つけるのが若干面倒ですな。後はオラント鹿のオスは見つければ狩ってます。小さい奴だと、雪ウサギやアルゴーイタチ、テンを狩ります。食用は雪ウサギだけですね。アルゴーイタチとテンは毛皮目当てです。毛皮は行商に人気があるので、取れるときは取ってましたな。それと、ウズラ、ハト、オラント鶏、運が良いとターキーやユスノール鴨等も獲れる時があります」

「そういう状況なら、しばらくは哨戒班の二個分隊を狩猟班に回すか・・・。哨戒よりも、狩猟が優先だな。狩猟は人がいないと、どうしようもないし・・・」

「分かりました。タカマルとウシワカに話しをしておきます」


 業務調整の指示を出して、トシは考えていたこと(・・・・・・・)を二人に伝える。

 通貨で物品の購入が可能な店舗(・・)、というものがある場所に、早めに行ってみようとは考えていたのだ。


「それと、その宿場町とやらにちょっと行ってみようかと思ってる。しばらく(・・・・)空けるが、それほどかからず戻って来るつもりだ。ただ、誰か道案内できる奴がいると助かるなあ・・・、誰かいるかい?」

「過去に、行商の手伝いで、ヤシャマルとタカマルが宿場町まで行った事がありましたが・・・。しかし、歩くとなると獣道とはいえそれなりにかかりますぞ? 行商はロバで森を回っておる様ですが、ロバの足でも町までは、黙って五日と申しておりました。天候次第なので、歩くとなると更に日数が・・・」

「タカマルは狩猟から外せないから、自動的にヤシャマルだな。それと乗り物を使うから心配ない。外に停まってるだろ? あれはアーティファクトだ。まあ、馬無しで走る馬車とでも思ってくれればそれでいい。あれで走れるところはあれを使う。問題無いよタダツグ」

「左様でございますか・・・、ならばオリヒメもお連れ下さい。そろそろ皆に、冬の準備をさせなくてはと思っておりましたが、あの町なら、行商を待たずに、冬服の用意が揃うかと思います」

「ほう、ずいぶん早めに用意するもんだな・・・、分かった。ヤシャマルとオリヒメを連れて行こう。日取りは師匠と相談するから、決まったら教えよう」


 そこでトシはお茶の用意をし、二人に勧めながら話しを変える。


「ところで、今のお前たちの村だが、後で見分に行く。間に合う様なら、この近くに建て替えようかと思ってる。この広場を中心に拠点を作り直すつもりだ。なるべくなら冬前に終わらせたいもんだが・・・」

「芳俊様、さすがに冬前は厳しいのではないかと・・・」

「まあ、出来れば・・・、という感じなので、無理を押してまで進めようとは思わないが、一応そういう風に考えてると思っててくれ」

「分かりました」

「それと、今夜も皆でアイアンボアを食おうじゃないか。昨日と、同じ様な味付けにありそうだがな」

「おお、またあの肉を頂けるのですか。あれは美味しゅうございましたな」


 ハルナガはそれなりに年かさに見えるが、昨夜は中々の健啖家だった。

 下手すると、タダツグよりも食ってたか?、とトシは記憶をたどる。

 もっとも、タダツグは初めて飲んだ酒に夢中だっただけで、食べないのか否かは判断の難しい処だ。


(ま、今夜にでも判るだろうな)


 今夜もしっかり食べて、明日以降の仕事に取掛かって欲しいトシであった。

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