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絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
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29話 探索班

 タツヒロを見送った、探索班たるナベとトシ。

 二人も典膳に別れを告げ、出発する。


「では、お師匠、我々も行って参ります」

「うむ、気を付けて行くがよい」

「はい」


 広場を後にし、洞穴を回って丁度その裏側に出る探索班。


「んじゃまあ、真っ直ぐ行ってみるか」


 ナベの掛け声で、北と思しき方向に歩き始める。

 とにかく、何か有用な物を探したい。

 トシの鑑定作業に合わせて、周囲を警戒しつつゆっくりと進む。

 感知範囲から、タツヒロ達は既に抜けていた。


「この辺は、なんか薬草とかあるなあ。後でタツヒロ連れてくるか・・・」

「トシ、食料系だと、何がありそうなんだ?」

「俺が期待してるのは、豆系だな。こういう状況だと、単純な穀物は難しい。芋とか豆とかそれ系と、肉、葉物野菜の代わりになるもの、この辺でメニュー組み立てるしかないと思うよ。ナベも覚悟しててくれ」

「まあ、森の中じゃ麦系は無理だよなあ・・・。芋、豆か・・・。無いよりはましだからな。後は、塩だなあ・・・」

「一応、岩塩も探しているんだけどな・・・。お?、何か森が切れてきた・・・か?」


 しばらく歩くと、北の方が明るくなってきていた。

 さらに進むと、森が切れているのが判る。

 途端に、うっすらとある臭い(・・・・)が、周りに漂い始める。


「あー、この匂いはあれか、山火事か」

「あ、これ(・・)ってそういう事な、納得した。よく判ったな、トシ」

「何回か嗅いだことあるからな。この森の切れ目は、ここまで来て、雨でも降ったかして、消えたんだろうなあ」


 結構、広く焼けたと目されるが、地面は既に青々とした緑色から枯れ草混じりの黄土色に変わりつつある、ごく普通の秋の山の風景だった。

 トシが、おもむろに地面を掘り、そして頷く。


「ゴブリン達か、誰か知らんが、焼けた表面に土をかぶせたみたいだな。だから、パッと見は何もなかったように見える・・・、お、これこれ」


 トシが見つけたものは、付いてるさやが黄色くなりつつある草だった。


「トシ、これって、豆か?」

「ああ、赤インゲンだ。もう少し熟させないとダメだが、いずれ収穫可能だな」

「おい、トシ、これって青じそか? それと、これはバジルくさいが、どうだ?」

「うん、合ってる。それとこっちはオレガノだな。これは・・・パクチーだ」

「パクチー・・・イラネ。よし、この辺は明日来て、株ごと持って帰る。どうせならコテージの前庭に植えてやるか」


 なんだよ、パクチーうめえじゃん、というトシの抗議を無視して、そのまま焼け跡らしき開けたところを探索し続け、白インゲン、小豆、大豆、それと“大きめの白インゲン”といった感じのこの世界の豆、オリーブの若木、等を見つけた。

 豆類は、収穫まであと一週間から二週間は掛かりそうだったが、大豆だけはもう良かろうということで、それなりの数を採ってきた。あとは山芋を一本、これもナベが少々苦労したが、無事に手に入れる事が出来た。

 ふと、トシが元来た方向を見つめ、足を止める。


「・・・? ナベ、帰りはあの辺に寄ってから戻ろう」

「ああ、そりゃいいが、どした?」

「ああ、ちょっとな・・・」

「?」


 その後も探索を続け、森の中にコルク樫と栗の群生地帯を見つけた。

 収穫だけでなく、狩り場にもなりそうだとトシはほくそ笑む。


「ナベ、そろそろ戻るか」


 栗の実の熟したヤツを、イガの付いたまま、かなりの数拾ったところで、トシが帰還を提案してくる。


「だな、戻るとするか」


 大漁!、とは言い難いが、まずまず(・・・・)の収穫を絶界の隣接空間に納めたナベも、素直に同意する。

 そして戻り始めるが、向かっているのは先ほど、トシが指示した方だった。


 トシが気になっていたモノ(・・)が、やっとナベにも解った。

 近付くにつれ、うっすらと魔力を感じる。

 それは、典膳のいた洞穴辺りから伸びる、岩の地層に開けられた穴と、それを塞ぐ様に盛られた土壁だった。

 その土壁から、微量ながら魔力を感じるのである。


「トシ、よくこんなの判ったな」

「まあな、うっすらとだが、確実に魔力だ。人の手(・・・)が入ってる」


 そう言いながら、トシはスコップで土壁を崩していく。

 ナベも手伝い、どんどん土壁が薄くなるにつれ、感じる魔力が増していく。


「中に何か(・・)有りそうだ」


 トシがそう呟いた矢先に、ナベのスコップが音を立てて止まる(・・・)

 二人は顔を見合わせ、掘りから土壁の削りに作業内容を変える。

 出てきたのは、奥に続く坑道(・・)を封じるように組まれた木の骨組みだった。

 どうやら、この骨組みに土を盛って、ここの封にしていたらしい。

 スコップを使い、二人で木の骨組みを壊してみると、意外と簡単に壊れる。

 トシの感じたのは、腐敗止めの魔力だけだったので、壊せると踏んでいたが、それにしてもあっさりとしたものだった。

 開けた入り口から、そのままスマホのライトを点けて中へ入ると、これまた不思議な坑道だった。

 坑道とは名ばかり、まっすぐ5mほど中に入ると、坑道は左へ曲がり始め、3mぐらいで止まって(・・・・)いる。

 トシが、訝しげにナベに問う。


「おかしいなあ、何でこんなに短いんだ?」

「確かに。丁度、この辺で掘るのを辞めてる感じだな、こりゃ」

「確かに、辞めてるな、これは。ん?・・・!! ここ岩塩坑だ!!」

「おお、トシが言ってた岩塩が見つかってよかったなあ。これで俺も塩、使い放題だな」

「とりあえず、この辺のをいくつか持ってくか」


 トシは、外に出てからやっと、あの封が雨除け(・・・)だった事に気付いた。


(明日、直しに来よう・・・。今度はちゃんとドアだな・・・)


 ナベは、チーズおろしで岩塩もおろせるかな?、などと考えながら外に出る。

 二人が一心地着いた時、ナベのスマホが鳴った


 タツヒロからの着信だった。

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