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絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
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27話 探索と狩猟

 三人が、この世界へ渡ってきた場所を離れ、典膳の洞穴に着いたのは、夕方、というにはまだ早いが、日は傾き始めた頃だった。


「お師匠、ただいま戻りました」


 ナベが挨拶をすると、典膳も応じる。


「おお、まだ明るいうちに戻れたか。何より何より」

「ではこのまま、準備を進めますので。あの辺をお借りしても宜しいですか?」

「ああ、委細任せる。好きなようにやりなさい」

「では、早速」


 そのまま、洞穴に向かって右側の岩に向かっていく。

 三人のコテージ設置検討委員会(仮称)が始まった。


「俺はこの辺が良いと思うんだが、どうよ?」

「ナベ、出来るならこの地面は広く使いたい。森を抉るように設置すれば問題ないか」

「あ、トシ、それならさ、ちゃんと南向きにして、前庭の前は木を切って少し広げよう」


 ナベが地面に略図を描き始める。

 三人で略図を前にした、あーだこーだが少し続き、よし!と言いつつ三人が立ち上がった。


「じゃあ、やるぞ? 絶界・換」


 三人には、いい加減見慣れてきた光景だが、音も無く(・・・・)、突如としてコテージが現れる様は、さすがの典膳も驚いている。


「そなたら・・・、思った以上に多芸じゃのう・・・。呪いの様なものまで操るとは・・・」


 典膳の脇に集まっていたゴブリン達などは、唖然として口を開けたまま押し黙っている。

 家、らしきモノが出来た(・・・)のではなく、出現した(・・・・)のだ。

 何をか言わんや、の心境であろう。


「お師匠、とりあえず今日の作業は終わりました。明日以降、周りの木を切って、森との隙間を少し広げようかと思ってます」


 三人を代表して、ナベが作業終了の報告をする。

 それを聞き、典膳が手招きをする。


「三人ともこっちへ来い。子鬼達の村長(むらおさ)が来ておる。紹介しておこう」

「「「はい」」」

「村長よ、この者らが儂の最後の弟子たちじゃ。来春ぐらいまで、ここで修行を積む。よしなに頼むぞ。ほれ、挨拶せい」

「相田誠人です」

「斎藤芳俊です」

「竜沢弘樹です」


 三人が簡潔に名乗ると、村長も挨拶を返す。


「これはこれはご丁寧に。私は、この先の村で村長をやっております。我々草ゴブリンは強者への尊敬を心得ております。こちらこそよしなに」

「それでな村長よ、先ほども話しておった通り、明日より弘樹をそなたらに付ける。午前の狩りを手伝わせよう。弘樹、明日より午前は狩りを行え。そなたの修行は午後からじゃ。これから冬に向かうでな。食料はしっかり用意しておかんとまずい。儂らだけなら食わんでもよいが、そなたらはそうもいくまい」

「分かりました。この狩り修行の間に見習い取れると嬉しいんだけどなあ・・・」

「なら、ナベは次の日から獲物を保存食にしてくれ。生肉の分はそのまま絶界に入れておけばいいから、加工肉の加工を頼む」

「トシはどうする?」

「俺はしばらく林業だな」

「そういう事か」

「そういう事だ」


 ざっくりだが、明日以降の方針が決まった。

 午前中は生活関連の仕事、午後はまるまる修行。

 しばらくはこのスケジュールで動くことになりそうだ。

 今夜は、明日に備えて早めに休むことにした。

 明日から忙しくなりそうだった。


 ---


 翌日、日の出と共に起床し、早々に朝食を終わらせる。

 今日はチーズトーストにした。

 パンはこれで最後だ。


「これでパンは打ち止め。インスタントラーメンがあと二回分かな。酒は飲んでないから、もう少しあるが、食料が無くなりそうだな」


 調理責任者として、ナベがコーヒーを飲みつつ、皆に報告する。


「コーヒーも、あと何回か飲めば無くなる。お茶はもう少し出せそうだが、それも長くは無いな」

「うーん、タツヒロの特大ファインプレーで、多少は持ち込めたが、そろそろ限界か」

「まあな。当たり前だが食ってりゃ無くなる。あとはこの世界で手に入れるしかない」


 ナベとトシが話していると、タツヒロがタバコに火を点けながら会話に入ってくる。


「そこで狩人の俺っしょ。まあ、何かしらの獲物は取ってくるからさ。多少は期待しててよ。にしてもゴブリンと狩りかあ・・・、草ゴブリンとか言ってたね。よもやゴブリンと一緒に狩りするとは、思ってもみなかったよ。まあ、何となく俺らの知ってるゴブリンとは違うみたいだし、色んな意味で楽しみだ」

「あー、それは俺も思ってた。よもや俺たちがゴブリンと何かするとはな。もし出てきたら倒すもんだとばっか思ってたよ」

「んー、そうなのか?トシ。何かちっこくて、それでいて一丁前に牙生えてて、緑の肌色がまだ見慣れねーけど、ある意味かわいいやつらじゃん。あんなのと生きてコミュニケーション取れるとは、思ってもみなかったがな」


 そのナベの言葉を聞いて、ナベってやっぱ大物だなと思う二人であった。


「さて、そろそろ用意するか。あいつらがこっちに来るのか、こっちが村とやらに出向くのか、確認しなくちゃな」


 トシの号令で、ナベとタツヒロは動き始める。

 タツヒロは、弓と懐刀、そしてトシに借りた剣鉈を手にする。

 チェーンソーを手にしようとしたトシに、ナベが話しかける。


「トシ、今日だけ山歩きしてみねえ? 俺一人じゃ鑑定出来ねーしさ、この北側辺りとか、何か見つからんねーかと思ってんだよ」

「確かに、ナベじゃ鑑定系皆無だもんな」

「ああ、そういう話しなら俺もゴブリン達に聞いてみるよ。何か、森の中に食えそうなものがないかどうか、調査も一緒にやろう」


 三人は準備を済ませ、外に出る。

 外では、典膳とタエが三人を出迎えた。


「おお、儂が思ったよりも早かったのう。さて、狩りの方じゃが、一人、使いをよこすと言っていた。もうじき、来るはずじゃから弘樹はここで待っておれ。誠人と芳俊は雑用をするとか言っておったか?」

「その事ですが、お師匠、自分と芳俊は山歩きをして、食料になりそうなものを探してこようかと思っております。いくらあっても、困りませんので、探してまいろうかと」

「そうか、では気を付けて行ってくるのじゃ。儂の方は、また小柄を置いて行ってくれ。なにかあっても、それで事足りるであろうしのう」


 三人とも外へ。本格的な探索と狩猟が始まる。


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