表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
21/84

21話 一応、ブリーフィング、的な・・・

 トシが装備を持って外のテーブルセットに戻り、二人がまだ掛かりそうなのでお茶を入れにコテージに入り、お茶の用意をお盆に載せてまたテーブルセットに戻ってきた辺りで、ようやくタツヒロが我に返る。

 その後、タツヒロと自分のお茶を淹れ終わったタイミングで、やっとナベが我に返る。

 そのまま、コーヒーを淹れ、ナベに渡したところで初めてトシが口を開く。


「で? 結局、どうなったのよ?」


 余りに無口な二人を見て、笑いが込み上げて来たのか、面白がる様に問い掛けるトシにナベが答える。


「え?、ああ、わりいわりい。何か、頭の中でやり取りしてた余韻(・・)でな、そのまま考え事に没頭してた。どうなったか・・・、うん、それなりに収穫はあったよ。それなり(・・・・)に・・・」

「おお、楽しみだな。で? タツヒロはどうだった?」

「ああ、俺の方もそれなりに収穫あったよ。やっぱ大事だな、こういう事は」

「そういや、二人の術適性(・・・)ってどうなってんだ? 使えそうなの、あったか?」


 ナベの問い掛けに胡乱げに答える二人。


「「術適性?」」


 それを聞いてナベが、若干、ドャ気味に解説していく。


「ん? 何だね? 知らないのかね、チミ達。素人はこれだからねぇ・・・。この世界の術にはね、適性というものが存在するのだよ。その適性値次第ではね、術の習得がチビシイというのが、この術業界の常識で・・・」

「おお、これか。俺の術適性は、魔力が8.5、精霊力が3.3、法力が1.3、霊力が3.5らしいな。魔力が高めか・・・」

「トシ、俺の方は、魔力が6.8、精霊力が6.4、法力が1.3、霊力が4.7だったよ。程々に両方イケそうな感じかな」


 ナベの小芝居を華麗にスルーして、技神に詳細を確認する二人であった。


「お、おう、・・・ふ、二人とも術系は、た、高めだねぇ、アハ、アハハハハハハハハハハハ・・・ハァ・・・」

「・・・ナベ、笑顔が引きつってるぞ?」


 二人の術適性を聞き、自分の魔力適性に思いを馳せ、肩を落とさざるを得ないナベであった


「ナベはどんな感じだった訳よ?」

「おお、タツヒロ、よくぞ聞いてくれました。俺の適性は、魔力が1.5、精霊力が5.5、法力が1.3、霊力が10だった」

「他の数字はさておき、その霊力の10ってのがスゲーなあ。あとは全員一桁台なの考えると、なかなかの数字だよな。俺の最大(マックス)で8.5だから、そこまでは到底届かないし」

「それを言うなら、俺のなんか最大(マックス)が6.8しかないし・・・。器用貧乏とかにならないと良いんだけどねえ・・・」

「しかし、あれだな。全員、魔術か精霊術の適性が在るわけだ。そんで、揃いも揃って法力が低いってのが、笑っちゃうよな。あとは、霊力に関してはナベが抜きん出てるが、俺とタツヒロはそこまでじゃないな」

「ああ、霊力に関しては、注意して使えってヒメに言われたよ。・・・あ!?」


 自分の失言に気付くが、時既に遅しのナベだった。


「ヒメ、だって。プッ」

「タツヒロ!、・・・いいじゃねぇかよ、別に・・・」

「!?、ってか、ヒメってナベん家で飼ってた、犬の名前じゃねーかよ。それもどうよ・・・」

「あと浮かばなかったんだよ! 適当な名前が! そういうオメーだってレイチェルだろ? 誰だよそれ」

「あー、レイチェルな。レイチェルってのは、実はウチの大学にいた留学生なんだよ。イギリス人だったかな?、確か。出来る感じの、落ち着いた綺麗な人でさあ、もうこれぞ、the秘書って感じで、すぐにイメージが湧いたよ。で、そのまま付けた」

「そのまま付けた、って・・・。そんじゃ、タツヒロの方はどうなんだよ?」

「あ、さっきのやり取りでは執事のギルマと言ってたよなあ。タツヒロもあれか? 誰かモデルいるのか?」

「ああ、ケニヤ時代に家にいた執事さんだよ。黒人だったけどロマンスグレーって感じでさ、執事の鑑みたいな人で、その当時、俺は坊ちゃまと呼ばれてたけど、親父が旦那様って呼ばれてるのに憧れてたんだよなあ・・・。それでイメージを借りた」

「なるほど、それで執事のギルマさんな。しかし、さすがタツヒロだな。そういうの聞くと、俺とかナベの人生なんて、極々普通なんだなとしか思えんは」

「トシ、技神ネタは、もうこの辺でいいんじゃねーか?」

「おっと、そうだな。肝心のスキルがどうなったか、それを聞きたい」


 トシのリクエストに応え、二人はそれぞれのスキル構成の変化を報告し、トシがノートにまとめていく。


「二人のスキル構成聞いてたら、俺ももう一段磨けそうな気がしてきたな・・・。まあ、それは後からにするか。しかし、剣豪ねえ・・・。ナベの場合だと、なんかこう・・・“残念侍”って感じだなあ、あの“怒られ侍”的な・・・」

「残念侍・・・、当たらずも遠からずだなあ」

「残念て・・・」

「いやいや、ナベだって多少の自覚はあるんだろ? 嘘はいかんよ?」

「まあ、多少なら・・・、って何言わせんだ、トシ!」

「あれだな、トシ、ナベの二つ名に残念侍ってのを使うのはいいかもな。もっとも、侍がこの世界にいるのかどうかは知らんけど・・・」

「まあ、この辺で勘弁してやろうぜ、タツヒロ」

「うん、まあ、こんなもんかな。ってか、さっきから本題がそっちのけじゃん」

「うーん、ナベの悪い癖が移ってきたかなあ・・・」

「おいおい、その辺を人のせいにすんなっつーの。素質だよ、素質。トシが生まれ持った素質!」

「要らん素質だなあ・・・」

「まあまあ、コントはそんぐらいにして・・・。ナベのアビリティで俺が気になったのは、この警戒監視だっけ?、これ。範囲が1kmって、何気にスゲくね? ナベの感知で獲物探せば、俺、チョー楽じゃん。午後の狩りは、いい獲物見つけんの期待してるよ? 俺も、試運転の無尽弓で必ず仕留めるからさ!」

「その無尽弓も凄そうなんだが、俺は、ナベの絶界が気になる。・・・あのさあ、ナベ、その絶界・封ってさ、もしかして、このコテージ入るんじゃね(・・・・・・)?」

「「!!?」」

「・・・やっぱ、トシだな。俺にその発想は無かった・・・、後で試してみよう。もし入る様なら、俺達は、もうどう(・・)とでも動けるしな」

「ああ、場所に縛られずにこの生活(・・・・)を実現できるのは、非常に魅力的だからな。ぜひとも試そう!」

「よし、じゃあ後は装備とかだな。トシ、何か解体用に良さ気なナイフあった?」

「おお、装備な。ほら、これ見てくれ」


 そう言ってトシは、先ほど用意した装備をテーブルに広げる。

 そして、タツヒロには剣鉈の小さい感じのナイフを渡し、ナベには特性組み立て素槍を渡す。


「タツヒロはこれ。解体って言っても、現地で細かくはバラさないんだろ? だったらこいつで充分だよ。そんで、ナベにはこれ。山伏修行の時に洒落で作ってたんだよ。“一見錫杖に見せかけて、実は!”的なやつ。あくまでも洒落だったはずなんだがなあ・・・。まあ、ホントの槍には敵わんだろうが、そこそこ使えるはずだ」


 受け取った槍を、振り、回し、扱き、感触を確かめるナベ。


「洒落で作ったっていう割には、結構本格的に槍だよ。若干、長さは短いが、バランスは悪くない。叩きは無理だろうが、これだけ根元を止めてれば、突きなら十分に使える。どうもな、トシ。・・・後は、俺の動きで何とかできるかどうか・・・」


 そう言うや否や、突如としてナベの体が消える(・・・)

 その直後、二人の右側(・・)から、槍を一振りする刃風が聞こえた。


「おい・・・、ナベ、今のって・・・」


 トシの問いかけに、のんびりとナベが答える。


「ああ、剣豪スキルの瞬行(しゅんこう)ってやつだ」

「ナベ、もう一回やってみてくれ」

「ん? いいよ?」


 ナベが答えた瞬間、ナベがまた消える。

 今度は、トシだけが左を向いて(・・・・・)、ナベと目が合った(・・・・・)


「知覚上昇使って、何とかかよ・・・。100倍だぞ?・・・」

「トシ、今の見えたのか? 俺は、さっきも今も、何が何だか、さっぱり・・・」


 そんな二人を尻目に、ナベが暢気な声を上げる。


「お? そうだ、そろそろ昼飯作んねーとな。何かリクエストある?」


 二人はさっきの、残念侍という言葉を思い出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ