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絶剣 ~世界を切り裂く力~  作者: 如月中将
第1章 渡りを経て
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14話 こっちも何かが起きていた

トシの言葉にナベとタツヒロは当たり前のように質問を返す。


「アーティファクト?」

「俺とナベが調べて、あれだけ仕掛けがあったんだから、ただの建物の方が無理があるよな? そのアーティファクトってどういうものだ?」


その疑問点に当然の如く頷き、トシは解説を続ける。


「そうだな、まずそこから説明するか。まず、この世界では、術を付与された道具をアーティファクトと呼ぶ。大なり小なりそう呼ばれる。で、普通は使用回数が多くとも十回程度で付与される術も一種類だそうだ。ところがあのコテージは、備え付けの各道具そのものと、コテージ本体とに術が付与されている。コテージ本体の術はこっちが調べて判った。っていうか、通常のアーティファクトとあのコテージは根本的に作り(・・)が違う」


トシが、意味深な笑みを浮かべて言葉を切る。


「ほう? その、アーティファクトになってるって事実だけで、こっちは驚きなのにな。なあ、タツヒロ、何かそれ以上らしいみてーじゃん」

「みたいだな。トシ、早く続きを頼む」

「ああ、説明を続けよう。で、作りが違うと言ったが、さっきアーティファクトってどういうものだって教えた?」

「術を付与されてる道具、と言ってたよな?」

「ああ、俺もそう聞いたぞ、トシ。タツヒロ答えにに付け加えるなら、一種類の術が、十回以下で付与、だったか?」

「そう、それが普通のアーティファクトだ。しかし、あのコテージがどうだったかを思い出してくれ。シャワーはどうだった?ナベ」

「なるほど、複数の術(・・・・)って事か・・・」

「となると回数の部分も特別っぽいな・・・。トシの見立ては?」

「術の付与、という言葉をどう捉えるか、なんだよ。通常のアーティファクトは術そのものを付与する。例えば火を点けるアーティファクトなら、小さな火を起こす精霊術そのもの(・・・・)を道具の中に閉じ込めて、使用者は決められた僅かな魔力(・・・・)でその精霊術を発動させ使用できる。回数は閉じ込めた術の個数分(・・・)しか発動はしない。その回数は、元の道具の出来や、術の付与者の技量に左右されるが、概ね十回程度。」

「なるほどな、拳銃と弾丸(たま)の関係と一緒、という訳だ。その二つが合わさってアーティファクトとして機能している状態、か・・・」


トシの解説に、ナベが警官らしい解釈を伝える。


「ああ、ナベ、その解釈で恐らく正解だ。問題はこのコテージだよ。このコテージ内に付与されている数々の術は、ほとんどの術で回数の制限が無い(・・)はずだ。その代わり、毎回その術を発動するための魔力や精霊力を消費する仕組みなんだよ。アーティファクトとしての設計思想が根本的に違う(・・・・・・)。今、ナベが言った拳銃の例でいくと、このコテージの状態は、発射一回毎に弾丸と火薬を中で作るような拳銃だな。弾丸や火薬を作る負担は大きいが、回数の制限は無くなる。設計思想の違いとはそういう事だ」

「トシ、コテージ内の道具や、コテージそのものも例外無くそうなってる感じか?」

「ああ、タツヒロは実際に使って見てるだろ? 分電盤(・・・)に魔力をごっそり奪われたのはその影響だよ。ちなみに、あの分電盤は本体に魔力を溜め込み、それをスイッチが入る都度、適正な電力(・・)に変換して配線系統に供給するアーティファクトになっていた。だから照明は電気製品として光っている。蛍光灯が光るアーティファクトになった訳じゃない。あと、コテージそのものに関しては、修復と吸引と思しき二つの術が掛けられてたな。」


ナベが呆れ混じりでトシに訊ねる。


「トシ、これってどういうことだ? 余りにもこの変化は、何と言うか・・・都合が良すぎね? 説明聞いてる間、俺の頭の中に何回“ねーよ(笑)”っていう字面が浮かんだ事か」


トシも苦笑いを浮かべながら、ナベに応じる。


「その辺の理由に関しても、何となく見当は付いてるんだが、それを確かめるために車を見に行こう。車にも魔力があったよな? 恐らくだが、車にも変化が起きてる。この世界でも機能が維持(・・・・・)される為に、必要な部分が何らかの変化を起こしてるはずだ。そいつを確かめる」


吸い終わったタバコを消し、すっかり冷えてしまった飲み物をそれぞれ飲み干して、三人は一斉に車に向かって歩き始める。


---


荷台の車のそばまで来て、トシは二人を向く。


「二人にも見えてると思うが、しっかり魔力に覆われてる。間違いなく、こいつらもアーティファクトになってる。特に変化が顕著なのは、燃料タンクの蓋だな。蓋自体がアーティファクトだ。これは・・・コテージと同じ吸引が二つ(・・)付与されてるな・・・。あとは燃料タンクのあるあたりが面白いことになってる。二人ともボンネット開けてみてくれ」

「よし」

「分かった」


トシの指示でナベとタツヒロはそれぞれのボンネットを開ける。

二台ともに、エンジン周りは一部の配管を除いて、それほど魔力は感じない。


「この系統の配管だけ、魔力が強いな・・・。ナベ、この配管って何の系統だか判別付く?」

「ん?、どれ」

「ああ、タツヒロのだとこれ。んで、ナベのだと、・・・こっちの、あそこの配管」

「あー、これは・・・、燃料系だな。タンクから繋がって来てるはずだ」

「なるほどな、そういう事か。じゃあ今度はエンジン掛けてみよう。まずは車体の小さいタツヒロの方からだな」

「了解」


そのまま車内に乗り込み、エンジンを掛けるタツヒロ。

キーを捻った瞬間、声を上げる。


「うお? また持ってかれた・・・。さっきほどゴッソリって感じじゃないが、それなりに魔力を持って行ったな」


始動したエンジン音は、三人が聞いてもいつものタツヒロの車と同等で、その辺りに変化はなさそうだ。


「エンジン始動で魔力持って行っても、エンジンの挙動そのものは、何つうか、普通と変わんないな」

「エンジンはな。燃料タンクの辺りが反応したぞ? 始動時にブワッと来た」


タツヒロの感触にトシが捉えた反応を告げる。

そこに、ナベが加わって来た。


「トシ、タンクの蓋の魔力が増したぞ。ちょっと見てくれ」

「了解、タンクね・・・はは~ん、なるほどな。よし、タツヒロ、エンジン切っていいぞ。次はナベ、エンジンかけてくれ」

「おう、ちょい待ち」

「トシ、俺の車はもういいいのか?」


タツヒロがエンジンを切ってトシのところに確認に来る。


「ああ、ナベとの比較が必要だからな、今度はナベの番だ」


そう言い終わらない内に、タツヒロの車よりも大きな始動音が聞こえてくる。

それと同時に予想された声が聞こえてきた。


「おお、タツヒロの言ってた通りだな、こっちも結構持って行きやがった。言われてなかったら、ちょっとビビったかもな」


トシがナベに伝える。


「オッケー、ナベ、エンジン切っていいぞ。タツヒロの車と同じだった。説明するからテーブルに戻ろう」

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