13話 スキルとの対話 再び
ナベとタツヒロは椅子に座り、タバコに火を点け、トシはまだ燃えているストーブにケトルを載せ、二人に話しかける。
「コーヒーとお茶とどっちにする?」
「俺はコーヒー、常にコーヒーで」
「そういやナベって、いっつもコーヒーなのな。俺は、今回はお茶にしよう」
「了解」
それぞれの飲みたいものをサッと用意して、トシが席に着くころには二人のタバコは二本目になっていた。
<レイチェル、知覚連携を使ってナベの記憶を共有したいんだが、どうすればいい?>
<回答 通常であれば、記憶を送る方の頭部に、記憶を読み取る方が手を添えます>
<分かった>
「ナベ、ちょっと頼みがあるんだが、さっきの一連の作業を思い出してもらっていいか? 知覚連携で取り込んでみようかと思ってる。なるべく正確に思い出して見てくれ」
「ん? 俺は思い出すだけでいいのか?」
「ああ、こっちで読み取るから思い出してくれるだけでいいよ」
「分かった、やってみるは」
「じゃあ、ちょっと頭を借りて、手を置かしてもらって、オッケー、始めてくれ」
トシ側
<レイチェル、知覚連携>
<告知 知覚連携を開始します。個体名:相田誠人側の技神・ヒメと連携を取り、より正確な記憶の再生と連携を支援します>
ナベ側
<告知 ご主人様、個体名:斎藤芳俊の秘書・レイチェルよりアビリティ・知覚連携への支援要請を受けました。記憶の再生時の情報の詳細化と精密化で知覚連携の支援を開始します>
<!!! そんなことも出来んのか・・・ ってか秘書って何だ?>
<回答 個体名:斎藤芳俊が人称設定の際に、副次的に設定した機能拡張と思われます>
<!? 機能拡張・・・ 俺は名前しか決めなかったが、トシはそうじゃなかったって事か・・・>
<告知 恐らく、人称と役割的なものを同時に設定したものと思われます>
<そっかあ、何にも考えずにパパッと名前だけ決めたからなあ・・・ 人称設定ってやり直せんの?>
<回答 機能拡張のみであれば未設定状態ですので、設定可能です>
<なら、そうだな・・・、名前がヒメだろ?・・・、ヒメでご主人様と来たらこれだな。お前は俺の専属メイドだ、メイドのヒメだ>
<告知 了解しました。人称設定時の追加インターフェース設定を開始します>
<告知 設定中>
<告知 設定完了しました。この時点を以ってメイド・ヒメとなりました。今後ともよろしくお願いします、ご主人様>
<問 秘書・レイチェルより記憶再生の要請が来ております。如何されますか?>
<やべ、こっちに気を取られてた・・・。すぐに開始すると伝えてくれ>
<告知 了解しました>
トシ側
<告知 マスター、個体名:相田誠人のメイド・ヒメより回答が届きました。すぐに記憶再生を開始するとの事です>
<何やってるのかと思えば、技神じゃなくなってるし・・・。まあ、ナベはいつでもナベだって事だな・・・。早いとこ済ませよう>
<告知 畏まりました。・・・記憶情報来ました、このまま読み取りを開始して下さい>
<分かった>
「なんかヒマだ・・・ タバコでも吸うか・・・」
タツヒロのボヤきが、煙と共に虚空へ消える・・・
ナベ側
<告知 記憶再生が完了しました。知覚連携の支援も合わせて完了しております、お疲れ様でした、ご主人様>
<まあ、それほど疲れもせずに終わった印象だが、あとはトシ側の問題か?>
<回答 そうですね、こちらでやれる事はもうありませんので>
<よし、終わりだな。お前もお疲れ~>
トシ側
<告知 記憶再生が完了したとメイド・ヒメから連絡がありました。これで知覚連携を解除します。お疲れ様でした、マスター>
<う~ん、おおよそ感覚的なものは、ほぼ掴めたと思うんだが・・・>
<告知 マスター、先ほどの記憶連携により、アビリティ・魔力感知、精霊力感知、神法力感知の獲得に成功しました。全て単独アビリティとして運用されます。おめでとうございます、マスター>
<ふう、初回のぶっつけ本番の割には上手くいったかな。レイチェルもお疲れさま。今回のやり取りで実施した支援内容は、保存して次に繋げよう。タツヒロの技神や再度、ヒメとやらとやり取りする際の指標になるだろ。それで、終わったばかりで悪いんだが、能力連携を設定してくれ。分析鑑定|(万象)に魔力感知、精霊力感知、神法力感知、知覚上昇を常時連携してくれ>
<問 畏まりました、マスター。アビリティの創出ではなく、分析鑑定|(万象)の発動時の初期値として連携を設定する、という形でよろしいですか?>
<ああ、それで頼む。気配感知が来たら、一気にまとめて創出、の流れにしたいな>
<告知 それでは、これより能力連携を開始します>
<告知 ・・・>
<告知 能力連携が完了しました。分析鑑定|(万象)発動時をトリガーとして、魔力感知、精霊力感知、神法力感知、知覚上昇を同時発動させます>
<よし、これで分析鑑定|(万象)をフル活用できる。早速使ってみようか、レイチェル、先ほどのコテージを再度、分析鑑定してみてくれ>
<告知 畏まりました、マスター。分析鑑定を開始します>
<告知 ・・・>
<告知 ・・・>
<告知 分析鑑定の結果が出ました。情報量が指定量を超えた為、記憶隷属に回送されました。この場で、改めて私が読み上げることも可能ですが、いかが致しましょうか?>
<いや、二人と話すから、そのままでいいや>
<告知 畏まりました>
<ああ。また後でな>
<告知 はい、マスター>
「ふう、戻ったよ」
「おうトシ、やっと戻ったか。終わった後も何かしてたんだな?」
「俺のヒマさ加減を、二人にどうやったら判ってもらえるか、本気で考えようとしてたところだったよ」
「おお、結構待たせたみたいだな。悪い悪い。でも、色々調べて来たからな。まあ、コテージは調査してくれた情報と、俺のアビリティと併せて分析してみた。ナベの協力で、何とか感知系三種のアビリティは獲得できたしな、得たものは大きかったよ」
「うひょー、サラッと成功させやがって。あ、感謝の気持ちは、タバコの葉で表してくれれば・・・」
「あ、そういう感謝なら、ぜひお相伴に」
若干呆れ顔で、トシは二人にツッコむ。
「お前らって、ホント、“酒よりタバコ”な」
「トシは吸わねーから、余裕こいてられんだぞ? 俺とタツヒロは死活問題だっつの」
「トシ、日本ならいざ知らず、この世界なら尚更タバコの発見、獲得が急務だぞ? 酒は逆に、楽観視してるよ。人間が居れば必ず酒はある!、何とかなる!、断言できる」
「まあ、酒に関してはその通りだろうな。タバコは、まあ、タツヒロのアビリティ使えば、どっかで見つけられるんじゃないかと考えてたんだが・・・」
「ああ、それは俺もタツヒロに期待してるところ大なんだよ」
さすがに本筋から話題が離れすぎた。トシが軌道修正に入る
「ちょっと脱線したから、話しを戻すな? コテージに関してなんだが、結論から言うと、あれはアーティファクトになってる。しかも半端じゃ無いレベルのアーティファクトだ」