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詩人の唄

作者: 冬影

思い付きで書き上げてしまった。

一応、週一で何かを投稿することを目標にしていますのでこれで達成……


童話という設定ですがあまり子供向けでは無いと思います。



 遠い昔、まだ本も無い頃に、世界を旅して回る、それはそれは素晴らしい詩人がおりました。

 その詩人はどこか新しい土地に訪れると、その場所の歴史を詳しく尋ねました。

 詩人が特に好んだのは、墓所でした。

 そこに眠る人たちの話を聞いては、それをうたにしたのでした。

 赤ん坊からお年寄り、乞食から英雄まで。

 死者たちの物語を、分け隔てなく詩にして、そしてとても哀しそうに唄うのです。


 そんな唄に、人々は耳を傾けました。

 ある人は涙を流し、ある人は両手を合わせて天に祈ります。

 そして争い合っていた人たちはお互いを抱きしめ合いながら言葉を交わすのです。

 こんなに辛い思いを、他の人にさせてはいけない。

 こんなに悲しい出来事を、自分たちが作り出してはいけない。

 誰もが、そんな風に感じたのです。

 ですから詩人が立ち寄ると、そこでは争いが止みました。

 人々は手を取り合い、そして死者たちに祈りました。


 詩人が最も大切にしたのは、忘れられた死者たちでした。

 お墓はあるのに、名前が無い。名前はあっても、どんな人なのか分からない。

 たしかにいたはずなのに、お墓も無い。

 そういう人たちのために、ある哀しい別れの詩を唄いました。


 それは、まだ天と地が繋がっていた頃のお話です。

 詩人には恋人がいました。

 共に旅をし、世界を見、たくさんの話をしました。

 そしていつか、一緒に暮らそうと約束していました。

 けれどもある時、詩人は天に招かれ、恋人は地に残りました。

 詩人が天から帰って来たとき、世界は荒れて、恋人が待っているはずの国は滅んでいました。

 詩人はかつての恋人を探す旅に出ます。

 ですが、どこにも見つかりません。

 次第に詩人は、恋人はもう死んでしまったのだと思うようになりました。

 けれども旅は止めませんでした。

 いつか恋人の死んだ場所を見つけて、唄を捧げたい。

 そう思っていたのです。

 天に招かれたことで、詩人はずっと生き続けることが出来ました。

 ですから詩人は何百年も、恋人の痕跡を求めて世界を彷徨い続けていたのです。

 そうしてあらゆる所で、彼女のための詩を唄ったのです。


 そんな詩人に、憧れる者が居りました。

 その者は詩人の弟子になろうとしましたが、詩人は断りました。


 詩人は言いました。


 私は哀しみしか唄えない、それも永遠に続く哀しみの詩しか。


 その者は答えました。


 あなたの詩は人々を救いました。

 死者のために涙を流すこと、そして他者の悲しみを知ること、あなたの詩は私たちにそれを教えてくれたのです。

 私もあなたのように、人を救える詩を唄いたいのです。


 詩人はそれでも断りました。

 ですがその者は、ずっと詩人の後をついて行きました。

 野宿だろうが、山道だろうが、雪の中だろうが、その者はついて行きました。

 しばらくすると詩人もその熱意に折れて、その者を弟子と認めることにしました。

 お弟子さんも、とても素晴らしい詩人でした。

 そして、詩人とは反対に、楽しい詩、幸せな詩を多く唄いました。

 2人は最高の友人になりました。

 いつも無表情だった詩人も、お弟子さんにだけは笑顔を向けることがあったと言います。


 けれどもそんな2人にも別れの時が来ました。

 ある国で、お弟子さんは恋に落ちたのです。

 それはとても美しいお姫様でした。

 お弟子さんは愛の詩を唄い、求婚しました。

 誰もが知る、あの愛の詩です。

 お姫様は、その申し出を受け入れました。

 そうして2人はその国に住むことになりました。

 ですが詩人は旅を続けなければなりません。

 詩人は夫婦のために優しい詩を唄いました。

 それは詩人が作った、ただ一つの哀しくない詩でした。

 それから詩人とお弟子さんは手を取り合い、無言で別れを告げたのでした。


 お弟子さんはその国にずっと住み続けました。

 彼は生きる喜びを唄い、命の尊さを唄い、愛の深さを唄いました。

 国中の人が、彼の作った詩を唄いました。

 そうして幾十年もの月日が流れました。

 子どもも孫もたくさん出来ました。

 かつてのお姫様は亡くなってしまいました。

 お弟子さんも、とうとう立ち上がることが出来なくなりました。

 寝たきりになり、もう数か月の命だと、そう言われていました。


 そんなある時、詩人がお弟子さんの所を訪れました。

 お弟子さんは驚き、喜びました。もう会えないかと思っていたからです。


 詩人さんは言いました。


 友よ、別れを告げに来た。


 お弟子さんは言いました。


 師よ、先立つことを、お許しください。

 そして、あなたに敬意と感謝を、捧げます。

 どうかこれからも、素晴らしい詩を唄い続けてください。


 詩人はけれども首を振りました。


 私は友を得てしまった。そして、もうすぐ失ってしまう。

 かつて恋人を失った時のような、胸の張り裂けそうな哀しみを感じる。

 恋人の痕跡は全く見つからない。

 それなのに、こうしてまた新たな別れを知ってしまう。

 もうとても、耐えられない。

 私はもう疲れた。

 私の旅に意味は無かったのだ。

 だからもう、終わりにしようかと思う。


 そんな詩人に、お弟子さんは言いました。


 師よ、あなたの旅は無駄ではありません。

 あんなにも多くの人が救われました。

 私もまた、あなたの詩に救われたのです。

 どうか、旅を続けて下さい。

 たしかに私は、あなたを残して去ってしまいます。

 ですが私は、あなたのために詩を残しましょう。

 あなたの孤独に寄り添えるように、

 あなたの哀しみを分かち合えるように、

 あなたの願いがいつか叶うように。

 そう祈って、詩を唄いましょう。

 その詩が、私の代わりに、これからの旅の友となります。

 だからどうか旅を続けて下さい。

 そして、あなたの想い人を見つけ出して下さい。


 そうしてお弟子さんは、最後の力を振り絞って詩を唄いました。

 それは優しくて、哀しくて、けれども希望を抱かせてくれる、そんな詩でした。

 詩人はその唄を聞き届けると、お弟子さんに感謝を述べました。

 そして言いました。


 友よありがとう。

 お前に出会えて良かった。

 私もお前のことを、唄い継ごう。

 そしていつか、恋人に出会えたら、お前の事を語り聞かせよう。


 そうして2人は、今度こそ最後の別れを告げたのでした。


 それから幾百年が過ぎました。

 今ではあの詩人の姿を見た者はおりません。

 けれども、どちらの詩人が作ったものかわかりませんが、2人の話は今でもずっと唄われています。

 その詩は人々を宥め、争いを治めます。

 そして誰もが手を合わせ、もう会えぬ者たちのために祈るのです。

 あの唄の詩人が、そうしたように。


う~ん、上手い人ならもっと効果的に書けるはず。

文章力を上げたいです……(そのために書いているとも言えるのだけれど)


ご感想・アドバイス等ありましたら是非ともよろしくお願い致します。

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