11 証明不能命題反証法
やはり警察の尋問は、私のそれとは比べ物にならない手腕だった。
あれがプロの仕事か……。
私は帰り道をとぼとぼ歩きながらため息をついた。
私がかよわい女子中学生の上、まだ犯行が確定していないため、扱いこそ一応丁寧だったが……。
だがうわべが穏やかなぶん、追い詰め方はしつこくていやらしかった。いかにもさりげなく証言を誘導し、にこやかに怪しい点を問いただし、当たり前のように同じ話を繰り返させて食い違いを見つけようとする。
……私にもあれくらいの尋問テクニックがあったら、ホノ先輩を落とせたのだろうか?
まあともあれ、今日のところはなんとか事情聴取と称した警察の拷問をしのぎきった。後の事は、ホノ先輩の件も含めて、スフィーに相談しよう。
「ただいまー……」
身も心も疲れきって家に帰り着いた私は、しょぼくれた声で言った。
部屋に戻ると、スフィーがいきなり上から目線でねぎらってきた。
「ふむ、いつにもまして、くたびれたババアのごとき雰囲気をかもし出しておるな。ご苦労だった」
……私は、そがれた気力を奮い起こし、今日の出来事の説明を始めた。
「……なるほど、『殺す者』と『殺される者』の立場が逆転した訳か。それは面白いな」
「面白くなんてないよ!」
私はつい怒ってしまう。
「落ち着け、そう感情的になるな。常に冷静かつ論理的であらねば、真実にはたどり着けんぞ」
そうたしなめてくるスフィーに、私はいらだって言い返した。
「どうせ私は感情でしか動けないよ。ホノ先輩に対してだって、最後は感情的な説得しかできなかったし」
私には、スフィーのように論理的であり続けることなんてできない。
だがスフィーは、私をなだめるように優しい口調で言った。
「それはそれでよい。論理でどうにもできぬ場合、感情に訴えかけて落とすのも一つの手口だ」
……その言い方だと、まるで私が計算ずくでホノ先輩を籠絡しようとしたみたいだ。
「だけどホノ先輩、私の言葉になんて耳を貸さずにあの家の中に入っちゃって……結局説得できなかったんだ」
「あの家?」
スフィーがいぶかしげに尋ねてくる。
「あ、まだ言ってなかったね。あの時ホノ先輩が向かった先は、別居してるお父さんの家だったんだよ」
あの後すぐユイさんに調査を頼み、ついさっきそれが判明した所だ。
私はついでに、別れ際にホノ先輩を説得した時の様子も説明しておいた。
「やっぱり感情にまかせて解決しようなんて、虫のいい話だったんだよね……」
そう落胆する私に、スフィーは言った。
「気にするな。手詰まりになった時の最後の行動としては間違っておらん。ただし、本当に真実を求める際は、感情などに依存してはならんがな」
「やっぱりスフィーは『感情』が嫌いなんだね」
その言葉に、スフィーは心外といった様子で反論してきた。
「感情は生物の大事な要素だ。ないがしろになどしてはおらん。ただ、それを推理に持ちこむなという話だ。それと、理性を差し置いて感情でしか物を見ぬ輩が嫌いなだけだ」
「それって充分感情が嫌いなんじゃ……」
「まあ好きではないのだから、二元論で語るなら嫌いに分類されるな」
すまして答えるスフィーを見て、私は少し意地悪したくなって言った。
「じゃあスフィーは、論理しか頭にないの? 人の情なんてどうでもいいの?」
「ロボットのように言うな。わらわは情にあふれておるぞ」
「あふれてる所なんか見たことないんだけど……」
すると、スフィーは得意顔で語り始めた。
「ならば例をあげてやろう。まず、愚かなおぬしも見捨てぬ『愛情』。毎日貧相な食事を出されても許してやる『温情』。あまり頭が良いとはいえぬおぬしを憐れむ『同情』――」
「……『強情』と『薄情』も付け加えた方がいいと思う」
だが私のいやみは、スフィーには通じなかった。
「ひねり、わらわたちの間で無益な争いをしておる場合ではないぞ。そんなことよりも事件の検証をしろ。今は感情より理性を働かせるべき時なのだ」
それもそうかと同意して、私は事件を振り返った。
「それじゃ一度、これまでの流れを確認してみようか。まず、そもそもの発端になった『ホノ先輩殺害計画』だけど……これは倉畑先輩じゃなくて、ネイさんが首謀者だったんだよね」
「うむ。動機は一千万円事件で家庭をめちゃくちゃにされた恨みから、という話だな」
おそらくネイさんの決意が固く、倉畑先輩にも止められなかったんだろう。それで――。
「責任を感じた倉畑先輩は、自分一人がホノ先輩殺しの犯人と見られるように事前に工作して、全ての罪をかぶったあと自殺する予定で『かばい計画』を実行したんだね。最初に探偵部にきて宣戦布告したのも、自分を犯人に見せかける工作の一環だったってわけかな」
私の言葉に頷いて、スフィーは話を進めた。
「そしてネイは書庫でホノを襲うが、殺害に失敗する。しかしホノは『犯人は覆面男』などと嘘をついてまでネイをかばった――」
「その理由は、一千万円事件の口封じのためで、警察に捕まって下手な事をしゃべられる前に、倉畑兄妹を消してしまうのが目的……でいいんだよね? それで今朝、ホノ先輩はまず倉畑先輩を殺害した――」
と、そこまで言った時、スフィーが口を挟んだ。
「……しかしその動機が少し不自然だな。倉畑兄妹を殺してまで口封じしようとした割に、おぬしにあっさり一千万円事件の首謀者は自分だと自白した。しかもその理由が、倉畑の冤罪を晴らしておきたかったからだと言う。そもそも、それほど恩を感じておる倉畑を殺すとは――いや、これでは疑問の堂々巡りだな」
「堂々巡り? でもそうなったら結局、一千万円事件は恩人を殺してでも隠さなきゃならなかったって結論になるだけじゃ……あ」
ようやく『疑問の堂々巡り』の意味を察した私に、スフィーは言った。
「そうだ。そこで最初の疑問、『なぜ一千万円事件をあっさり自白したのか』に戻ってしまう。いくらひねりに知られていたのが判ったからといって、それほど隠したい事であるならば簡単に自白などすまい」
「うーん……むしろ私に知られたせいで観念して、自殺する覚悟を決めたんじゃないかな? だから諦めて自白したんじゃ――」
その時、いきなりスフィーが言った。
「そもそもホノは、本当に自殺志願者なのか?」
思いもよらなかったその言葉に、私は驚く。
「わらわは先程動機が不自然だと言ったが、ホノの自殺願望自体が虚言なら話は別だ。実は死ぬつもりなどなかったとなれば、身を守るために倉畑を殺すのは当然だからな」
「そんな……もちろんホノ先輩の素性を確かめる聞きこみや身辺調査は済ませてあるけど、何度も自殺未遂事件を起こしてるのは間違いないし、自殺願望があるのは嘘じゃないと思うけど……」
「そうか、ならばよい。可能性の一つとしてあげただけだ」
スフィーはそう言ったが、私の心に一度ともった疑惑の炎は消えなかった。
――ホノ先輩は本当に自殺志願者なのだろうか?
――少なくとも、『今も』その願望があると言い切れるだろうか?
「……ねえスフィー、ホノ先輩は自分が殺害計画の標的にされたから、身を守るために倉畑先輩を殺したって可能性、本当にあると思う?」
「ホノが真に自殺願望の持ち主なら、やはりその動機では不自然だな」
「やっぱりそうだよね……」
「うむ。そもそも死にたがっておるのなら、殺されるのを恐れて相手を殺し返す必要もない。もし明白な殺害の意図をもって倉畑を殺したのであれば、やはり何か別の目的があったのだろう」
そこでふと、ホノ先輩の言葉を思い出す。
「そういえばホノ先輩は、『正当防衛』って表現を使ってたけど……」
私のその呟きに、スフィーが面白そうに答えた。
「正当防衛か……法的な意味はさておき、確かに先に殺そうとしたならば、殺し返されても文句は言えぬな」
「だからって個人で自由に殺していいわけじゃ――!」
スフィーは、わかったわかったという感じでそれをさえぎった。
「もちろんひねりの言う通りだ。しかし証拠がなく、証言できるのも被疑者ひとりの状況では、正当防衛を反証するのは難しいぞ」
「やっぱり正当防衛っていうのは嘘だと思う?」
「だとしても、それを立証する事ができねば意味がないな」
「それって、そこまで難しいことなの?」
スフィーはあきれたようにため息をついた。
「ならば一度、『証拠なき正当防衛』の反証法を考えてみろ」
スフィーの出題に、私は少し考えて言った。
「えっと……つまり、早朝に人気のない林でホノ先輩が倉畑先輩を殺したと想定して、それが正当防衛でないと証明すればいいんだよね?」
「うむ。それにはどのような方法がある?」
「……うーん、やっぱり証拠を見つけないとね」
「あまりに漠然としすぎておるぞ。どんな種類の証拠だ?」
「物証とか?」
「そうだな、それから?」
「それからと言われても……」
しばらく考えたが、私には思いつかなかった。
スフィーはじれったくなったようで、先を続けて私を誘導した。
「反証に必要なのは、物的証拠、人的証拠、状況証拠だ。ではひねり、どれを見つけるというのだ?」
そう言われて、私は改めて熟考する。
それによって始めて、今回の正当防衛を覆すのが難しいことに気付いた。
「――物的証拠は期待できそうもないし、人的証拠は目撃者なんていないだろうし、状況証拠は殺意を立証するには弱すぎるし……」
私が言葉を並べると、スフィーは頷いて言った。
「そう、自称正当防衛を否定するのはただでさえ証拠立てが難しい。まして証拠が得難い状況ならなおさらだ」
……そうだとしても、『証拠なき正当防衛』の反証をするには、今スフィーがあげた三つの中から証拠を見つけるしかない。
諦めずに方法を考えてみたものの、思考はすぐに行き詰まり、私は悩んだ末に呟いた。
「どうすればいいのかな……もしホノ先輩が、あくまで殺意はなかったって言い張り続けたら」
「……正当防衛の反証において最も難しいのは、『明白に』殺害意志があったという、『犯人の心理』を証明せねばならぬ点だ。この『明白に』、『心理の証明』をせねばならんというのが実に厄介なのだな」
「人の心の中を他人に明白に証明するなんてできないよね?」
「厳密な意味では絶対に無理だな。『思った』か『思ってない』かなど、究極のところ、他人には知りえぬ。故に司法も『客観的に見てそういう意思があったのは間違いなかろう』と立証できればよしとしておるのだ。しかし、犯人以外に状況を語れる者がおらぬのなら、それすら困難を極める」
他人の心中を他人に証明しなければならないなんて、よく考えれば無茶な話だ。
でもそれだと、たとえこれがホノ先輩の『正当防衛偽装殺人』であったとしても、解決しようがないことに――。
「スフィー……だったら結局、反証は不能ってことになっちゃうの?」
否定してくれると思ったのに、あのいつも自信満々のスフィーが黙りこんでしまった。
「どうしよう……死人に口なしだし、もう方法なんてないよね……」
私が不安になって言うと、やがてスフィーは口を開いた。
「……死者に口は無いが、生者には口も目も耳も有る。さらに知者においては、頭まで有るのだ。それを働かせればよい」
「可能性はあるってこと?」
その問いかけに答えず、スフィーは言った。
「今は、考えるべき事、すべき事が他にある。埋めやすい堀、優先して埋めるべき堀をまず埋めて行くのだ」
「埋めるべき堀って?」
「まずはホノの周囲だな。できれば一千万円の行方もだ」
そしてスフィーは、ホノ先輩とネイさんの今後の行動を探偵部全員でマークするよう私に指示した。
まあスフィーの言う通り、これから起こる殺人を阻止する方が、今は最優先すべき事柄だろう。なにしろホノ先輩もネイさんも、互いに相手を殺そうとしているのだから。
しかも、もしホノ先輩が殺されてしまったら、倉畑先輩殺害時のことを語れる人が誰もいなくなってしまう。
「――それと機会があったら、ホノの感情を揺さぶれ。それが正当防衛を覆す布石となる」
「なんだ、やっぱり方法があるの? なら意地悪しないで教えてよ」
「ないぞ。……ただ、不確実な方法なら一つだけ残っておる。反証法最後の手段だ」
「奥の手ってわけだね。どんな手段なの?」
「『証拠なき正当防衛』の真実を知るのは、本人のみ。しかし証拠がなくば、その心は他人には知りえぬ。理詰めで無理となれば、情や良心に訴えるしかなかろう」
「それってもしかして――」
「そうだ、説得しろ。残る手段は『感情』……つまり自白なのだ」
期待していた私は、がっかりして言った。
「なあんだ。結局スフィーも私と同じ発想なんだ」
その言葉に、スフィーはムッとした様子で言い返してきた。
「大いに違うぞ。わらわはおぬしと違って、自白など無くともいずれ必ず真実を見出してみせる。故にそんなものに頼る必要はないのだが、現時点で情報が足りぬ以上、一応保険として手を打っておいた方がよかろうと考えたまでだ」
ムキになって弁明を始めるスフィーをあたたかく見守りながら、私はふと考えた。
「だけど説得するといっても、ホノ先輩に何もかも自白させた上、殺害まで思いとどまらせなきゃいけないんでしょ? 私には荷が重いよ」
「そうか、ならばホノが自殺するまで待つか?」
「え?」
「ホノは『自分が自殺するまでは犯行を否認するしかない』と言った。これは言い換えれば、『全てを終えて自殺する時には、犯行を自白しても構わない』ということだろう?」
「そんなの駄目だよ!」
これ以上、誰も死なせるわけにはいかない。
「うむ、そうだろう。しかも、いまわの際のホノの言葉が、真実とは限らぬのだぞ」
そうか……自白だけに頼っては、それが真実かどうか分からない。まあそもそもホノ先輩は大事な証言者なんだから、自殺に伴った自白なんてさせられないけど。
……しかし考えてみると、他人の自殺を止めるのって、ある意味他殺を阻止するより難しい気がする。その気になれば、いつでもどこでも実行できるんだし。
「……あ、そういえばホノ先輩の言ってた『最後の仕事』って、一体なんだろう。それが終わったら自殺する、って話だったけど……」
スフィーはそれに、事もなげに答えた。
「当然、『まだやり残した事』があるのだろう」
「やり残した事?」
「その中に『ネイの始末』が含まれておる可能性は高いな。だがその動機も含め、どうもホノ側に気になる点がある」
スフィーは半ばひとりごとのように言葉を続けた。
「――やはり殺す動機に裏がありそうだな。『隠れた変数』があるとしたら、そこだ。そこに隠れた必要な情報さえ見つけ出せば、感情や自白などに頼らずとも真実にたどりつけるはずだ」
ぶつぶつと呟くスフィーを横目に、私は腕組みをして考えた。
……うーん、ホノ先輩が倉畑兄妹を殺す動機に裏がある、か――。
いったい他にどんな動機があるっていうんだろう?
そこでふと私は、さっきのスフィーの言葉を思い出した。
『そもそもホノは、本当に自殺志願者なのか?』
……もしホノ先輩が、自殺志願者を装っていただけだとしたら?
自分は殺されても構わないと言って一切抵抗しないふりをし、その裏で偽装正当防衛殺人を計画する……。
――いや、それじゃただの殺人鬼だ。
……だけど、もし本当に、自分を殺そうとしてきた相手をゲーム感覚で殺し返そうとしたのなら?
その結果、自分の方が死んだとしても構わないと考えて――。
……ホノ先輩が自分の命を軽く見ているのなら、ありえない話ではない。
私はこの推理をスフィーに話してみた。
「……なるほど、面白い推理だな」
からかうでもなく、真面目にそう言う。
てっきり馬鹿にされると思っていたので拍子抜けした。
「まあひねりが推理した通りの動機であれ、一千万円事件の口封じが動機であれ、おぬしの身が危険な事に変わりはないがな」
さりげなく重大発言をするスフィー。
「ど、どういうこと?」
動揺する私に、スフィーはけろっとした顔で言った。
「当然だろう。おぬしは知ってはならぬ秘密を知ってしまったのだ。そもそもホノがあっさり自白した理由も、『真相を知るひねりもすぐに消してしまえば問題ない』と考えたからかもしれぬぞ」
「まさか、ホノ先輩がそんなこと――」
するはずがない――とは言い切れなかった。理由はどうあれ、実際に殺人を企んで実行した人間ならば。
こんなこと疑いたくはないけど、快楽殺人犯の可能性だって捨てきれない。
「長生きしたかったら、他人の秘密なんて暴くもんじゃないね……」
つくづくそう思い、ため息をつく。
「知ってはならぬ秘密を暴くのが探偵の宿命だ。真実を求めるのならば、どんな事であれ知らねばならぬ。恐れず探れ」
……スフィーは簡単に言うけど、実際に二人の殺人志願者――つまりホノ先輩とネイさんに板挟みされるのは私だ。
「で、そのあいだスフィーは部屋でお昼寝してるだけなの?」
私は思わず、いやみを言ってしまった。
だがスフィーはふんぞり返って、それに答える。
「さしたる算段もないうちに、無謀に歩き回れというのか? そのせいで、か弱いわらわが不慮の死を遂げてしまったら、いったい誰が真相にたどりつけるというのだ?」
その尊大な態度にムッとして、私は言い返した。
「私なら無謀に歩き回らされた挙句、不慮の死を遂げてもいいっていうの?」
「そんなことは言っておらん。わらわとひねり、どちらが殺されたとしても、そこで終わりなのだ。おぬしの身を軽んじておるわけではないが、全てが悪い方向に動くこの状況では、リスクは最小限にとどめたいだけだ」
スフィーは少し態度をやわらげ、そう言った。
……確かにスフィーは、事件解決への唯一の希望だ。私だけで真相が解明できるなんて、とうてい思えない。
そう考えれば、危険を伴う捜査は私が請け負うべきなのだろう。もしスフィーの身に何かあったら、それこそ取り返しがつかないし。
「……わかった、言い過ぎてごめん。私がスフィーの変わりに動くから、情報収集はまかせといて。自分の足で駆け回る以外、私は何の役にも立てないし」
「――すまんな、ひねり」
珍しく神妙に謝ったので、私は首にかけたネックレス――『スフィンクスの涙』を持ち上げて、微笑んで見せた。
「このお守りもあるし、私は大丈夫だよ」
「そうだな。だが、くれぐれも気を付けるのだぞ」
そう言ってスフィーは私に背を向け、ベッドの上に飛び乗って丸くなった。
「あれ、スフィーもう寝るの?」
「うむ。寝不足は頭にも体にも毒だからな」
スフィーはちょっと寝過ぎな気もするけど……。
私が苦笑して部屋を出ようとした時、スフィーは小さく――本当に小さく、こう言った。
「……ひねり、感謝するぞ」