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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
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行動開始

 島田は、多くの生徒といっしょにC地区の公園に向かっていた。上田と竹井といっしょに会話をしながら。

 前方にはシールドとレーザーハンドを持った生徒が先行している。まるで、本当の軍隊みたいだ。修学旅行が賭け事の種にならなければ、皆好き勝手に動いているだろう。ルーズドッグは好き勝手に動いているのだろうか。鮎喰がリーダーでなければ自由に動けたはずなのに。あの女には逆らえない。例え、男の俺でも。前に、訊いた噂では、彼女のグループに反抗したグループがシカトにあったり、私物を壊されたりしたらしい。しかも、先生たちにはばれないように。孤立したグループのメンバーの彼氏がそれを聞いて、その男子メンバーが鮎喰のグループに仕返しをしようとしたが、鮎喰のグループに加担する男子生徒に返り討ちに合ったと訊いた。彼女は美人で頭もいい。学園ドラマに出てくるような生徒で、男子や女子からも人気がある。噂を知っている生徒は別だけど。俺は鮎喰のグループと仲が悪いわけではないので噂を信じるわけにはいかないが、あんまり完璧すぎると、その人の欠陥を知りたくなる。だから、上田の欠陥を知りたい。こいつの無様な姿を見たくて仕方がない。けれど、彼を助けるもしくは助けられる立場なので、そんなこと絶対口に出していえない。

 集団で歩き続けて数十分が過ぎると、さすがに緊張感がなくなってくる。早く敵が現れないかな。

「あれ、敵じゃねーか」

 上田が遠方を指差しながら言ったので、島田は顔をその方向に向けた。

 敵だ、間違いない。青いジャージを着ている。

「皆、敵だ攻撃しろ」

 上田が大声を出したので、第一部隊のメンバーは急に慌しくなったが、前方の生徒がシールドのボタンを押して立体映像みたいな光が楕円形に広がっていく。体全体を守るほどの広がりはないが、横に肩幅くらい、シールドは顔半分から、太ももまで隠れて守れる長さだ。その後ろにいる上田と俺は銃を取り出して、引き金を引いた。敵もこちらに気がついて銃を取り出していたが、レーザー光線が体に当たった。すると、かすかによろけながら消えていった。転送装置が働いたのだろう。きっと、彼が最初のリタイヤだ。

 続けて、敵からの攻撃があったので戦隊を崩さないように攻撃していったが敵がばらばらになっていったので、固まって攻撃するのが辛くなった。

「皆、バラけろ。分散して戦え」

 上田が皆に怒鳴ると、メンバーが散らばり始めた。島田も道の角まで避難して攻撃を繰り返した。シールドを持った生徒も後退し始めた。

「敵の横に回りこむぞ。何人かは俺について来い」

 すっかりリーダー気取りの上田が何人かの生徒を連れて走り始めた。

 島田は彼を後には続かなかったが竹井は上田について行った。島田は家の塀を利用して、銃を撃ち続けたが敵も同じように塀に隠れて撃っているのでお互いに当たらない。島田はまるでアクション映画の主人公になった気分になっていったために、テンションが高くなってきた。

 おもしろい。去年もそうであったがこのゲームはマジでおもしろい。負けるととても悔しいだろうが、生き残っていると変な優越感に浸った感じがする。しかし、これでは敵を倒せない。他の道に回りこむか。いや、上田たちが向かっているのだからいいか。とりあえずここを死守しなくては。

 すると、シールドとレーザーハンドを持った生徒が敵に向かって走り出した。

「ま、待て。今行くなよ」

 島田の声を無視して、その生徒はシールドを左手に、右手に剣のような立体映像のレーザー光線を出したレーザーハンドを持って、敵に向かっていった。敵の攻撃をシールドで守り、あと少しで敵に攻撃できる範囲になったのだが、足を打たれてその生徒は消えてしまった。

「くそ!」

 島田は消えた生徒に対して無性に腹が立った。テレビゲームでもそうであるが島田は無駄に倒されるキャラクターを見るとイラついてくるのだ。

 しかし、敵の攻撃が急に止んだ。

 上田がやったのか。

 島田は顔を塀の角から出すと上田と他の味方の生徒がいた。

「一人やられた」

 島田は残念そうに言うと、

「でも敵は俺たちが三人倒したからいいよ。その内二人は俺が倒したけど」

「そう、良かったじゃん」

 島田は上田に活躍の場を与えてしまったことが悔しくて仕方がなかった。

 くやしい。今度は絶対に俺がたくさん敵を倒してやる。

「皆、C地区の公園に向かおう」

 上田は皆に促して、先に進んで行った。島田はいやいや上田の後を追った。そして、島田の横に竹井がやってきた。

「俺は一人倒したぜ」

 島田は今、誰とも話したくはなかったが、無視するのも悪いと思い、

「良かったじゃん」

 とそっけなく言った。

 しかし、ふてくされている場合ではなかった。敵がどんどん迫ってきているのが遠くではあったが見えたので気を取り直して足を動かした。

 何、レーザー光線がこちらに飛んできた。

「危ない」

 島田と竹井は体勢を低くして、道の隅の方に隠れた。レーザー光線の方向から敵の潜伏場所は分かるはずであったが、その方向に人影がなかった。しかも、近くにいるならば、先ほどの攻撃を外すわけがない。遠くからの攻撃かもしれない。

「俺が敵を倒してくる。お前や上田は先に進め。何人かは俺について来い」

 竹井がシールドを持った生徒といっしょにレーザー光線が飛んできた方向に進んでいった。

「そこは任せた」

 島田は竹井に感謝して、上田と先に進もうとしたが、上田や他の生徒のほとんどはそこにはいなかった。

「無視されたのか?」

 正直、上田といっしょに行動したくはない。けれど、上田を頼っている自分がいる。悔しいが。

 島田は、他の生徒といっしょに前に進むことにした。

 皆、友達といっしょにおしゃべりをしながら、のん気に歩いている。


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