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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
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決着の時

 鮎喰はとてもイラついていた。なかなかゲームが終わらないことと、嘘の情報をつかまされたことである。

 あの馬鹿鈴木が。リーダーはD地区にいるって。ふざけんじゃないわよ。D地区どころか学校の近くにいるじゃない。散らばった仲間たちが学校に来るまでに持ちこたえなければならなくなった。

「マジ引くし、あのクソ女」

 鮎喰はレーザーガンを机に叩きつけた。その後、教室の窓から今の状況を確かめた。護衛隊は退屈そうにしていた。しかし、その退屈もすぐに吹っ飛んだ。

「何、あの光?」

 とても太くて迫力のあるレーザー光線が護衛隊に飛んできたのである。二、三人の仲間が倒された。それは校庭でのできごとであった。護衛隊は慌てて攻撃してきた方向に攻撃した。しかし、その方向に敵がいなかった。

「違う。あれは長距離からの攻撃だわ」

 鮎喰は携帯電話を取り出して護衛隊の一人に連絡を取った。

「長距離からの攻撃よ。何人かでその方向に向かって」

「了解」

「ったく、面倒くさいし、マジで」

 鮎喰は携帯電話を切った。

 上田君や神田、坂口は皆倒された。原因が島田の裏切りで。もし、三人が生きてたら今頃ここについていたはずなのに。

 鮎喰は窓ガラスから状況を把握していた。ルールではレーザー光線はガラスを通さないことになっている。

 今度は普通のレーザー銃の光が飛んでくるのを目撃した。

 次は何よ?

 仲間の一人に当たって消えてしまった。護衛隊は慌てている。すると、今度は仲間から連絡が入った。

「リーダー、長距離からの攻撃です。対応できません」

「接近しなさい」

「わ、分かりました」

 鮎喰は電話を切って舌打ちした。

 もっと早く味方が集まってくれれば良かったのに。鈴木さえ嘘をつかなければ。後で仲間集めて徹底的にいじめてやるわ。

 しかし、鮎喰は次第に不安になってきた。

 もし、やつらがただの長距離攻撃をしているだけなら時間を掛けて対処できる。でも、学校に侵入する目的ならかなりやばいかもしれないわ。護衛隊は慌てて進入を許すかもしれない。

 鮎喰は銃を持って教室のドアから顔を出した。誰もいない。鮎喰は安心した。そして、教室の窓ガラスに戻って状況を再確認した。何人かが攻撃してきた方向に向かっていたが、さっきに大きな光線が再び飛んできた。

 まだやってる。でも、シークレットアイテムを使っていたとしても物理的に数が多い方が勝つわ。時間の問題よ。

 すると、ベランダのドアから一人の男子生徒が現れた。

「誰?」

 そこには光る剣と盾をもった宮本がいた。鮎喰はベランダから離れて攻撃した。しかし、宮本が持っていた盾が宮本の身体を守った。

「何なのよ」

 鮎喰は教室のドアを抜けて廊下に出た。ルールでは下駄箱のドアと拠点とした教室以外は全て鍵がかかっている。よって、ここから脱出するには拠点とした教室のベランダドアと下駄箱のドアのみである。他の教室には入ることができない。

 鮎喰は下駄箱のドアまで走ろうとすると、廊下に関口が立っていた。

「どうしたの?」

「敵が潜入してきたの」

「分かった、僕に任せて」

 関口は教室から出てきた宮本に攻撃したが、当たらなかった。

「よろしくね」

 鮎喰はそのままドアに向かって走った。そして、ドアから後少しという所で思いもしなかった敵と対面する。

「よ、鮎喰さん」

 哀川正一が下駄箱のドアの前に立っていたのである。

「何であんたが」

 鮎喰は慌てて攻撃したが、宮本と同じ武器で防がれた。鮎喰はそのまま左にあった階段に足を運んだ。

「何であいつがあんな所にいるのよ。馬鹿じゃないの?」

 鮎喰は恐怖でいっぱいであった。負けるという恐怖に。小学時代に戻った感じだ。

 階段を上り終えて、もう一度上るか、それとも、この階で留まって戦うかの選択を迫られた。しかし、正一は階段を上ってきていた。

 こうなったらここで決着をつけていやるわ。私が負けるわけないもの。だって私は皆の上に立つ女よ。それに現リーダーのあの変人を倒せば私たちの勝ちだし。

 鮎喰は階段を曲がった所で待ち伏せした。しかし、階段から上ってくる足が聞こえない。

 私を警戒してゆっくり上ってきてるのよ。そうよ。

 鮎喰はそのまま角で待機してきて彼が来た時に攻撃する態勢のままでいた。しかし、いくら待ってもやってこない。すると、哀川の声が聞こえてきた。

「おい、そこにいるなら返事しろ」

 誰が返事なんてするやついる? あいつイカれてる。

「小学校の頃が懐かしいよ、まったく」

 鮎喰はそれを聞いてびくっとした。正一と同じ小学校だからである。

「それがどうしたのよ。試合中よ」

 あ、つい声に出してしまったわ。

「昔、皆からいじめられて浮いてたお前がいまじゃ、女王様だもんな。すげーすげー」

 鮎喰は封印していた過去を思い出してしまった。

 鮎喰は小学時代、クラスから浮いてしまい、孤独を味わったことがある。友達もできずに一人でいたとき、あの哀川正一と出会ったのである。誰にも左右されないマイペースな人間に。鮎喰は彼に惹かれていった。しかし、彼は恋愛にまったく興味がなく、というよりガキだっただけかもしれないが、鮎喰を友達としか見てくれなく、彼のある言葉が鮎喰の人生を変えたのである。「もし、いじめられたくなかったら、いじめから逃げるか、逆にいじめをする側に着くかだ。まあ、いじめをする側につきたければ生徒を支配するぐらいの存在にならなくちゃ」と言ったのである。「どっちもできない」と言ったら「いじめを支配する側につくのは簡単さ。圧倒的な存在感で生徒を魅了することだ」と言ったのである。その時に、鮎喰の何かが目覚めたのか、モデル雑誌に目を通し、服装や髪型を徹底的に研究して見た目に気をつかうことを学んだのである。すると、クラスの私を見る目が変わったことにすぐ気がついた。それ以降、私は自分に自信がつき、クラスの憧れの存在になったのである。その時、私をいじめた張本人である坂口と友達になってクラスを仕切るようになったのである。でも、一つだけ後悔しているのは、よく友達から初恋の相手は誰と聞かれることである。すると、私の頭の中に必ず哀川のことを思い出さざる終えないことである。どうして、そんなやつを好きになったのかと鮎喰は後悔し続けたのである。しかも、今の自分があるのも哀川のおかげというのも癇にさわる。哀川はイケてない友達しかいなかったことを思い出すと自分もかつてはイケてない仲間だったみたいで本当に気分が悪い。

「黙りなさい、哀川のぶんざいで」

「うるせーな。女王蜂が」

「私を虫呼ばわりするのはやめなさい」

「鈴木にスパイをやらせるなんて最低だな」

「それはあくまで作戦よ」

「性格悪ぅ」

「あんたなんかに言われたくないわ」

「まあ、いいや。ゲームももうすぐ終わるしな」

 正一は冷静にしゃべっていた。鮎喰はうんざりして階段から離れた。廊下を走って別の階段に向かったが宮本が剣をもって現れたのである。

「鮎喰さん、最後だ」

 宮本は鮎喰に向かって走ってきた。鮎喰は持っている武器で攻撃すると盾に当たってしまった。しかし、もう一度、よく狙って攻撃した。すると、わずかに宮本の右肩にレーザー光線がかすったので彼は消えていった。安心したのもつかの間で階段を上ってきた正一が鮎喰を狙っていた。鮎喰は体を右に避けながら正一に攻撃した。

「ふ・・」

 正一は両方の手に自分の銃と金田から奪った銃を持って鮎喰に攻撃したが交わされることを予測していたために、正一も足を滑らせたかのように仰向けに倒れこんだ。すると、鮎喰の放った攻撃を避けることができた。そして、背中が完全に地面にぶつかると同時にもう一度攻撃し、左手に持っていた銃の攻撃は当たらなかったが、右手に持っていた銃の攻撃が鮎喰の顔のおでこに当たったのである。


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