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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
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決別

「ごめんよ、竹井」

 島田は罪悪感に囚われていた。チーム変更をし、竹井を呼び出してライフルだけ奪って彼を倒したことに。

 島田は消えていった竹井に謝りながら、A地区の学校に向かって走っていた。ライフルを担いで走るのは用意ではなかったが、運動部だけにそれなりに耐えられた。

 俺はこのライフルで鮎喰を長距離から狙う。試合前に学校から外に出ないと言っていたから教室にいるはずだ。学校近くに来たらライフルであいつを倒す。ブライトフューチャーズを裏切ったからには腹を決める時だ。鮎喰を倒して上田を倒す。

 島田は元味方である敵に気をつけながら走っていたが、敵が近くにいると分かった島田は市街地にまぎれて敵の動向をうかがった。建物と建物の間の隙間に隠れた島田はライフルを置いて銃を構えた。しかし、敵は島田には気づかずに通り過ぎていった。しばらくして、その隙間から出た島田は敵がいないことを確認してライフルを担いで再び目的地の学校に向かうために走り出した。

 しかし、どこから鮎喰を狙うか? 

 島田はそれを悩みながらも敵を警戒するために道角を止まったりして警戒した。それから順調に目的地に向かうことができた。敵の何人かはスナイパーの練習代わりに倒したりした。時間はかかったが。そしてA地区に入ることができた。しかし、肝心の固定位置が決まらずにいた。しかも、必ず教室にいるとは限らない。しかも、ライフルのレーザー光線は窓ガラスを通さないので、窓を閉じていたら鮎喰を倒せない。教室の場所だって特定できない。

「くそーやっぱ駄目か」

 島田は舌打ちした。しかし、ここまで運よく来られたので何かできるはずだと思い、島田は再び学校に向かった。すると、ルーズドッグの一人が敵に追われているのを目撃する。島田は建物の角で隠れてそれを目撃する。

「誰だよ?」

 ライフルのスコープを使って確認すると、いじめのターゲットにされている鈴木が二人の敵に追われていた。島田は道角からライフルを構えて追ってくる敵に向かって照準を合わせた。そして引き金を引くと、外れてしまった。

「あれ、もう一回」

 再び照準を合わせると、前進してくる鈴木が邪魔で敵が狙えない。

「くそー 邪魔だ」

 島田はライフルをやめて、銃に持ち替えて鈴木に当たらないように敵に威嚇のつもりで攻撃した。すると、敵には当たらなかったが状況が不利と分かり後退していった。島田はそのまま攻撃を続けたが、敵には当たらなかった。その後、鈴木が島田に近づいてきた。

 いじめられっ子の鈴木がよく生き延びてこられたな、すげーぜ。

「大丈夫かい?」

 島田は鈴木を哀れんで言った。一人で逃げていたのでなおさらだ。

「あ、うん大丈夫」

 鈴木は島田の顔を見ないで答えた。

「よく生き残れたな。お前」

 しかし、別方向から攻撃が飛んできた。すると、鈴木にその攻撃が当たり、消えていった。

「誰だ?」

 島田はスナイパーを左手で持って、攻撃してきた方向に目をやると、上田、坂口、神田の三人であった。

「裏切り者」

 上田はすばやく隠れて大声で叫んだ。

「お前とは何も話したくない」

 島田も大声で言った。

「お前、何で負け犬組に入ってんだよ。馬鹿じゃねーの」

「どうせ、俺は馬鹿だよ」

 島田は開き直った。

「黙っていっしょに戦えば勝てたものを」

「お前といっしょはもううんざりなんだよ。くそが」

 島田は銃をしまい、スナイパーで標的の三人に狙いを定めようとした。

「やっぱり俺に嫉妬してるのか。やっぱな」

 上田は勝ち誇る声で言った。

「ああ、そうだよ。俺はお前に嫉妬してる。二股なんて俺にはできねーからな」

 島田は少し声がかすれ声になった。すると、上田からの反応がなかった。

 当然だ。図星なんだからさ。

 島田は三人をスコープでうまく捕らえることはできなかったために、ここから逃げることも考えた。しかし、上田と決着をつけたい島田はその考えを捨てた。

「いいよな。二人の女と付き合えて。教えてくれよ。どうしたらそんなにもてるんだ。」

 上田からの返事はない。

 島田はライフルを構えたまま三人の誰かが姿を現すことを期待していたが、そのようなことはなかった。

 そうだ。上田には透明になれる装置を持っている。まずい、ここを離れないと。

 島田はライフルを下ろしてその場を立ち去ろうとすると、レーザーの光が島田を襲った。かろうじて避けた島田はそのまま彼らから離れるように走った。

 上田の姿が見えない。どうすればいい? どうやってあいつに勝てばいい?

 残りの二人からの攻撃もあり、島田は全速力で走った。数分して、近くの公園に入った島田は円柱の水道に身を隠した。

 上田の透明機能には時間制限がある。そろそろ透明から元の姿に戻るはずだ。そこを狙う。チャンスは一度だけだ。

 島田はライフルを地面に置き、レーザー銃を、水道を盾にして構えた。上田が来るのを待った。

 こい、来るんだ。早く、俺はお前を倒せればそれでいい。

 島田は集中力を高めてチャンスを待った。そして、透明から元の体に戻りかけた上田が公園の入り口にやってきた。

 今だ。

 島田が引き金を引こうとすると同時に上田も島田の存在に気づき、銃を向けてきた。ほぼ同時に発射されたレーザー光線は上田に命中し、島田には当たらなかった。

 勝った。俺はあいつに勝ったんだ。

 上田は消えていった。島田はうれしさのあまり体の力が抜けてしまい、腰を落とした。しかし、まだ坂口と神田がやってきた。島田は力が抜けた状態で再び二人と戦おうとする。腰を上げて、レーザー銃を右手に構えて二人に狙いを定める。しかし、彼らの方が先に攻撃してきたので島田も慌てて攻撃したが、当たらず上体を起こして再び攻撃すると、神田に命中、坂口の攻撃も何とか交わしてもう一度引き金を引いた。二人とも互いの攻撃に当たり、ベルトの転送装置が働き、その場から消え去った。

 島田たちは体育館近くにある転送装置に飛ばされ、そこに突っ立っていた。

「島田、てめぇ」

 島田の前に上田がやってきて胸ぐらを掴んだ。

「うるせー 離せよ、上田」

 島田は上田の両手をジャージから引き離そうとしたが、強く握られていたために離すことが出来なかった。

「お前、何味方裏切ってんだよ。頭おかしいんじゃないのか」

 上田の目は怒りに満ち溢れていた。

 上田は味方を裏切った俺にムカついているのか、それとも俺に負かされたことにムカついているのかが分からない。

「二人ともやめて」

 坂口が大声で叫んだが、二人は無視した。

「離せ、二股やろう」

 島田は上田のジャージの胸ぐらを掴んで叫んだ。すると、上田からの反応がなかったが、胸ぐらを掴れたままであった。

「離せっつってんだろ、二股やろう」

 島田は同じ呼び方で言った。

「うるせー」

 上田は掴んでいた右腕を離して、島田の顔に思いっきりグーで殴りつけた。すると、島田は吹っ飛んでしまった。

 生まれて初めて島田に殴られた。今まで上田とはほとんど喧嘩したことがなかった。だから気がつくのが遅かった。俺は殴られたことで決心した。もっと早く決断すべきだった。俺は上田と絶交する。これは上田が悪いわけじゃない。もっと早く気づくべきだったんだ。

 島田は倒れこんだが、上田に仕返しする気などなかった。上田とは親友じゃないことに気がついたからだ。数秒してから島田は立ち上がり、殴られた左頬を手でさすりながら、近くにいた神田と坂口を完全に無視して体育館に向かった。


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