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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
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裏切りと裏切り

 島田は森から抜け出し、一人何も言わないでその場を突っ立っていた。

「ドンマイだって、島田」

 竹井が励ましてくれた。

「何かやる気なくしたな」

 島田はもう試合に興味がなくなっていたために、このまま学校に帰ろうかと思った。

「そういえば、上田の姿が見えないな」

 竹井が周りを見ながら言った。

「あ、そう」

 島田にはどうでもいいことであった。

「おい、神田」

 竹井は神田を見つけるとこっちへ来るように促した。

「上田知らない?」

「ううん、知らないし、それより優子知らない?」

 神田が逆に坂口の居場所を二人に聞いてきたので

「俺知らないけど、島田、お前知ってるか?」

 坂口か、知らないな。

「知らん」

 島田は不機嫌に言った。

「お前も知らないか。二人ともどこにいるんだ」

 三人はこれから何をすればいいのか迷っていたが

「よし、二人を探そう。試合はそれからだ」

「分かった」

「ふ・・・」

 三人は手分けして二人を探し始めた。島田は森の中に入って二人を探した。

 再び森に入るのは憂鬱だ。ったく二人はどこに行った。

 それからしばらく森の中をさまよっていると、二人がいっしょにいる所を見つけた。

 何でこんな所にいるんだ?

 島田は木の陰に隠れて二人の様子を見つめていた。すると、二人の会話が聞こえていた。

「俺には他に好きな女性がいるんだ。だから君とは付き合えない」

「そんなこと分かってるわ。友子と付き合っていることぐらい」

 え、鮎喰って関口と付き合ってんじゃないの? じゃあ、鮎喰は二股してんのか。

 島田は混乱し始めた。

「でも、友子は二股してんのよ。それでもまだ好きなの?」

「うん」

 上田は顔を赤くして言った。

「でも、私はあなたが好きなの」

 その言葉を訊いた瞬間、島田はショックを受けて倒れそうになった。

 そんな、坂口が上田のことが好きだったとは。

 島田は上田に嫉妬した。くやしかった。島田は坂口に好意を抱いていたからこそ上田に対しての憎悪はすさまじかった。

 悔しい。何でも手に入れているあいつが無性に腹が立つ。一度でいいからあいつを殴りたい。

 島田は右手をグーにして怒りを抑えていた。しかし、それだけでは怒りが収まらなかったので歯を食いしばった。

「私は上田君が好きなの。あなたが友子と付き合ってもいい。でも、私とも付き合って。ね、いいでしょ」

 坂口は自分を見失っているかのようなことを言った。

「そんなこと言われても」

 上田は迷っている様子であった。

 上田、お前の答え一つでは俺はお前を殴ってやる。さあどうする上田?

「そんなことできなし。俺は鮎喰と付き合ってる。例え、鮎喰が他の男と付き合っててもな。それにお前とは友達でいたい」

「私は高一の時からずっとあなたが好きだった。あなたは人気者だし、女子からモテるわ。私だってその一人よ。いいじゃないちょっとくらい付き合っても。友子はただ男子を弄んでいるだけで本当の恋愛をしてるわけじゃないのよ。友子のことは良く知ってるから分かるの。彼女は本気であなたに好意を抱いてるわけじゃなくて刺激がほしいだけなの」

 俺の知ってる坂口じゃない。いつもの明るい坂口はどこにいったんだ?

 島田はショックが大きすぎたために立っているのが辛くなった。

「友子は可愛いし、頭もいい、長身でスタイル抜群。完璧そうな女だけど性格は最悪よ。私の方がいいに決まっている。ね、いいでしょ。もう我慢してるのが嫌なの」

 本当の坂口を島田は目撃しているようだった。島田は悔しさを通り越して悲しくなった。そう思っている自分が悲しくなったのだ。島田は二人にばれないように腰を下ろした。

「お前、そんなに俺のことを・・・」

 上田は次第に坂口に心を許し始めているようだった。

 おい、待て。上田何を言ってる。やめろ、やめてくれ。

 島田は悲しみから恐怖に変わってくる感じを実感し始めた。

 二股してる彼女と付き合ってる男が二股に走る。何だよそれ。恋愛ってその程度なのかよ。こいつら馬鹿だ。人間として最低だ。俺は一体何をしていたんだ。あんな女に惚れてたなんて。自分が嫌になる。もう坂口のことは考えたくない。気持ち悪い。

 島田は坂口に対して嫌悪するようになった。

「そんなに俺と付き合えたければいいよ。でも、俺は鮎喰とは別れない」

 上田は偉そうな態度で言った。

「うん、いいよ。私うれしい」

 坂口は一方的に上田を抱きしめた。上田も彼女をしっかりとハグしてあげていた。

 うわ、気持ち悪りぃ。何だこの気分。もうこんなやつらといっしょにいられるか。でも、心のどこかで俺は哀しんでいる。自分を哀れんでいる。

 島田は恐怖から再び悲しみの感情に支配された。すると、物音に気づいた上田が

「誰だ?」

 と大きな声で言ったために、島田は驚いてその場を駆け足で逃げ去った。

「島田、待ってくれ」

 上田の声は島田には聞こえていなかった。島田は全速力で森から抜けようと必死であった。途中で何回も肩が木にぶつかったが島田は木にせず、走り続けた。それから数分して、島田は森を抜け出した。すると、竹井と神田がいたが、島田は無視してそのまま走り去った。

「おい、島田。二人は見つかった?」

 島田は答えないで二人と通り過ぎた。

「おーい、島田」

 竹井は大きな声で言ったが、島田は依然として走っていた。

 もう嫌だ。全てが嫌になった。ゲームの勝敗なんてどうでもいい。もうやめたい。

 体力に限界が来たのか少しずつスピードが落ちてきた。そして数秒後には完全に歩きの状態であった。

 もし、ここで敵にあったらあっさりやられるだろうな。

 島田は息が苦しいのを我慢しながら、何の当てもなく歩き続けた。それから、しばらく何も考えずに歩いていた。すると、携帯電話が鳴ったが島田はそれを無視して歩き続けた。そして、島田は止まり、今までのことを整理し始めたが何だか悲しくなり、涙が出てきた。そして体を落として地面に両手を突いて思いっきり泣いた。

 何で俺泣いてんだよ。マジダサいし。滑稽だし。でも勝ってに涙が流れ出る。

 島田は両手をグーにして地面にたたきつけた。すると、痛みが両手を通じて前進に流れたために、島田は痛がった。それでも涙は止まらない。

 泣くな俺、涙よ止まれ。

 しかし、涙は止まることはなかったがある人物が島田に話しかけてきたのでやむなく泣くのをやめた。

「大丈夫?」

 パシリの金田が島田の前に立っていた。金田が本気で心配しているようだった。島田は最初、金田が敵であることに気がつかなかったが、両目の涙を拭いて金田を見ると、敵チームであることが分かり、ポケットから銃を取り出して金田に向けた。

「お前、どうして俺を攻撃しないんだよ?」

 島田は照れくさそうにしながら訊いた。

「ごめん、武器持ってないから」

 金田は両手を上げて武器がないことを示した。

「お前、意味わかんねーし。馬鹿じゃねーの」

 今言った事は島田の本心ではなかった。ただ、あまりに自分のかっこ悪さを金田に見られたためにわざと悪ぶっているのだ。

「そうだね。やっぱり武器持ってないと変だよね」

 金田はにこりと笑った。

「変だよ」

 島田は少しきつく言った。

「何で泣いてたの?」

「お前に関係ない。どっかいけよ」

「そうしたいんだけど、敵が多くて移動範囲が限られちゃってあまり動けないんだ」

 金田は頭をかきながら言った。

「そうか」

 島田は小さな声で言った。

「あとさ、言わなきゃいけないことがあるんだけど」

 金田はすごくいいにくそうに言った。

「何だよ?」

 島田は立ち上がって訊いた。

「あれ、見て」

 金田が右方向に指を向けたので島田はその方向に顔を向けると驚いてしまった。

「うわ、マジかよ。放送部が俺たちを撮影してるぜ。最悪」

 島田は一瞬顔を両手で隠してしまった。

「いつからここにいた?」

 島田は放送部から顔を背けた。

「さっきからずっと」

「それを早く言えよ」

「ごめん」

「ったく、リタイヤしたやつらに見られちまったぜ。まったく」

 カメラは体育館のスクリーンと中継がつながっているために多くのリタイヤした生徒に見られてしまったのだ。

 これからどうしようか。何かもうやる気はしないし、興味もない。何もしたくない。

 島田はやることがないのでブレスレットの地図を広げた。すると、C地区に意味不明な点の光が見えた。

「金田、これは何?」

 島田は金田に訊いた。

「あ、これ。これはチーム変えできるボックスだよ」

「チーム変更。そういえばそんなこと言ってたな」

「僕が見つけたやつなんだ」

 金田は少し得意げになって言った。

「そうか、チーム変更・・・・」

 島田はあることに思いついたが、口には出さなかった。

「お前はチーム変更しなかったのかよ?」

「僕はこのままでいいんだ。それに借りがあるから」

「誰に?」

「哀川君に」

 哀川、あの変人くそやろうか。あいつがリーダーにならなければこんなことにはならなかったんだ。全部あいつのせいだ。あのやろう。まあ、そうしたのは橋本だけど。

 島田は哀川に対して一方的な怒りを覚えた。

「上野君に殴られてる所を助けてくれたんだ。哀川君が」

 金田は言った。

「それは、上野が哀川とは別チームだからだぜ」

「それが理由だったら、僕を倒しているはずだよ。僕が上田君といっしょにならないように銃だけ取り上げてどっかに行っちゃったんだ」

 そうか、銃だけ取り上げればリタイヤしたも同然、まして金田だから銃を奪うような姑息な真似はできないしな。

「しかし、これからどうすっかな。マジやる気しねーし」

 島田は顔を空に向けながら考えた。すると、ある考えが浮かび始めた。

「そうか、もう俺にはこれしかない。復讐してやる。倒してやる」

 島田は銃をポケットにしまい、急に走り出した。

「どうしたの?」

 金田はそのまま立っていたままだった。島田はブレスレットの地図を確認しながらボックスのある所まで走った。それから数分後、その場所を見つけた。

「これか」

 島田はボックスの前に立った。すると、島田は急に悩みだした。

 本当にこれでいいのか。このままブライトチームでいれば勝てるだろう。でも、上田とは縁を切りたい。倒したい。こんなチームから抜け出したい。でも、駄目人間が集まった負け犬チームに入るのが癪だ。どうしたらいい? 

 島田はしばらく考えたが、決心した。そして島田は手順を踏んでチーム変更を申請した。


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