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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
41/51

集い~

「マジかよ。何で俺なんだよ」

 正一は大声で嘆いてしまった。

「リーダーになった感想は?」

 金田と出会ってからなぜかついて来ている中村に聞かれた正一は

「憂鬱だよ。まったく」

 正一はため息をついた。誰かが見つけたアイテムのせいでランダムに決まってしまったので、正一は自分の運の無さに絶望した。また、正一はリーダーという言葉が嫌いだったので余計に気分が悪かった。すると、正一の携帯電話が鳴った。

「もしもし」

「おい、哀川どういうことだよ。これは」

 高倉の声であった。

「そんなこと言われても」

 正一は高倉の怒鳴り声に困ってしまった。

「お前、今どこにいるんだよ?」

「今、B地区とC地区の境かな」

「俺の所に来い、B地区にある転送装置二番にいるから」

「面倒くせーなー」

 正一は本当に面倒であった。

「俺のとこなら安全だからとりあえず来い」

 高倉はそれだけ言って電話を切ってしまった。

「これからどうするの?」

 放送部の中村が話しかけてきた。

「友達に会いに行くよ。何すればいいか分からないしね」

 正一は歩き出した。その後を中村が着いてきていた。二人は無言のまま数分が過ぎた。

「ねえ、あなたこの試合に勝てると思いますか?」

 中村がカメラを持って正一に訊いた。

「さあね、案外俺たち負け犬たちが勝つかもよ」

 正一はカメラを気にせず言った。

「あなたは修学旅行に行きたい派?」

「正直どっちでもかまわないよ。だって、たかが修学旅行だぜ。別に行かなくたって死にやしないんだからさ」

 正一は今度はカメラ目線で言った。

「そうなの」

 その後、二人は再び無言になった。正一はその方が安心できると思っていた。

 放送部も大変だな。撮影して何がおもしろいのか俺には理解できないな。

 正一は周りを確認しながら歩いていると、少し遠くで人影がこちらに向かって攻撃してきた。

「なんだと」

 正一はそう言って、シールドを展開した。レーザー光線はシールドに当たり、正一には当たらなかった。

「あれは・・」

 正一は自分と同じ色のジャージを着ている鈴木が攻撃してきたことに気がついた。鈴木はその場を逃げ出そうとしていたために正一はその後を追った。その後ろを中村が追いかけた。

 何で味方に攻撃される。人のことは言えないが俺が味方に狙われる理由がない。しかも、鈴木のあの慌てよう。おかしい。

 二人は鈴木の後を追いかけ続けた。鈴木は攻撃せずにただ逃げてるだけなのですぐに追いつくと正一は思っていた。

「待てよ、何で俺を攻撃したんだ」

 正一は怒鳴った。

 本当なら、味方であろうと攻撃する俺だが、皆からいじめをうけている鈴木を見ているとどうしても同情しないではいられない。俺の弱い所だな。

 一分後、正一は鈴木の腕を掴んだ。

「離してよ」

 鈴木は涙目になりながら叫んだ。

「どうして俺を攻撃した。味方の俺を」

 自分で言う資格はないけど。

「別に、何も」

「別にはないだろう。お前、まさか」

 正一はこの女子生徒の境遇や態度を見て自分なりに察しがついてしまった。

「お前、味方を裏切ってたんだな。そうだろ」

 正一は怒鳴るどころか丁寧に話した。

「・・・・・」

 鈴木は黙ったままであった。

「何てこった。スパイかよ。どうしてこんなちんけなゲームでそこまでするんだよ」

 正一は妙に悲しくなった。この女に対して。

 ただ楽しむだけのゲームなのにどうしてこんなことを。そうか、こんなことを考えてしかも実行するやつは鮎喰だけだな。

 正一はため息をついた。そして、鈴木の腕を放してやった。

「何人味方を倒した」

 正一は鈴木に訊いた。

「・・・・」

 鈴木は何も答えず、目線も地面に向けたままだ。

「そうか、分かった。じゃあ、誰に言われた?」

 正一はやさしく訊いた。

「・・・・」

 鈴木はまだ答えない。正一はますます鈴木が哀れで、同情してしまった。

 すると、鈴木は銃を哀川に向けた。

「あなた」

 中村は驚いてしまった。

「ごめんなさい。こんなつまらないことして」

 鈴木の銃が震えていた。

「別にあやまることはないよ。死ぬわけじゃないんだし。それに俺は負けたって別にかまわないぜ。だって、修学旅行なんかどうでもいいから。でも、もしお前が俺を撃ったら、同じチームの仲間はどう思うかな」

 正一は笑みを浮かべながら言った。

「何が言いたいの?」

 鈴木は涙目になりながら言った。

「今、中村がカメラで撮影してるだろ。このカメラは体育館に中継されてるから、皆がお前と俺を見てる。もちろんリタイヤしたルーズドッグのメンバーたちも」

 正一は一瞬カメラに向かって微笑んだ。

「理由は分からないけど、お前が俺を倒したらゲーム終了、ルーズドッグは負けて皆お前のせいになる。そして、お前はまた地獄の学園生活を送ることになるんだぞ。俺は人の不幸は嫌いじゃないけど不幸にするほど性格は歪んでないよ」

 正一は林みたいなニヤニヤ顔になった。鈴木の銃口はまだ正一に向いている。

「お前が救う道は一つ。この試合に勝つことだ。俺がリタイヤした生徒ならそう思うけどな。だろ、だからさこの試合に勝たなきゃな」

 鈴木は銃を下に下げた。そして、カメラに向かって

「皆、ごめんなさい」

 と言った。

 ふー。危ない所だったぜ。それにしても俺良いこと言った。でも、どうやって勝とうかな? とりあえず、生き延びることが先だな。

 正一は再び周りを見渡した。敵はいなかった。

「じゃあ、とりあえず歩きますか」

 俺、キャラ違くない。何かいい人になってる。こういうの偽善者っていうのか?

 正一は少し混乱しながら、高倉がいる方面をブレスレットの地図で確認しながら歩き始めた。

 風が心地よい。なんかこの風、懐かしいな。

 正一は草川といた思い出にふけり始めていた。

 草川と草原にいた時もこんな風が吹いたっけ。感傷的になってきてるな、俺。どうしたんだ。一体。

 三人は風がそよいでいる中、無言で歩いていた。しかし、その沈黙も長くは続かなかった。レーザー光線が飛んできたのだ。正一はシールドを展開し銃を構えた。

「哀川、やっと会えたな」

 大声で坂田の声がした。すると、坂田、戸宮、佐藤の三人が武器を構えてやってきた。

「俺は会いたくなかったぜ」

 笑みを浮かべながら正一は言った。

「それに佐藤、まだ生きていたか」

「今度は私たちがあなたを倒して試合を終わらせるわ」

 佐藤が顔を上げながら言った。

「ごめんよ。後一時間はかかるぜ」

 正一は調子に乗った。

「意味わかんねーし、やっぱお前、馬鹿だし」

 坂田は扇形の武器を持ちながらしゃべった。

 何だ。あの武器は。くそー、ちょっときついかも。

「頭いい振りしてるお前よりよっぽどましだぜ。坂田君」

 坂田の顔が怒りに満ちていた。

「うるさい、お前なんかに何が分かる。死ね」

 坂田は引き金を引いた。中村は五人から離れて撮影していた。正一は鈴木を自分の後ろに隠し、シールドで攻撃を防いだ。坂田の放った攻撃は扇上に広がったレーザーの光であった。

「じゃあ、三人ともそういうことで」

 正一は鈴木をつれて走り始めた。

「どうして、私を助けるの?」

 鈴木が訊いた。

「もし、お前がリタイヤしたら、体育館で酷い目に遭うぞ」

 正一は説明し、三人から逃げ始めた。

「待て、逃げるな」

「逃げるなと言われて逃げないやつがいるか」

 正一は右手に持っていた銃で攻撃した。しかし、三人には当たらなかった。

「この卑怯者―」

 坂田は再び例の武器で攻撃してきたが、外した。

「へたくそが」

 二人は近くにあった草むらに隠れた。

「お前にこれ貸すからいっしょに戦え」

 正一は金田から取り上げた銃を鈴木に渡した。

「え、私が」

「数で負けてるからな」

 正一は焦っていた。勝てる自信がなかったのだ。しかも、逃げきるための隠れる場所などがなかったために戦うしかなかった。近くの草むらに隠れても時間の問題でどうにでもなってしまう。

 やばいぞ。しかも坂田は新兵器を持ってるし。あれを避けるのは大変だ。

「お前はここで戦え」

 正一は鈴木に命令した。

「え、うん」

 鈴木は小さな返事をしたので正一は銃とシールドを持って別の草むらに隠れようと移動することにした。正一は鈴木が二つの銃で攻撃すれば命中率は高まると考えた。

 あんなやつらに負けるわけにはいかない。俺が倒してやる。

 正一は草むらの広さに感謝しながら、三人にばれないように移動していた。すると、レーザー光線の発射音が聞こえた。正一は少し焦りながら体勢を低くしながら、敵の位置を把握しようと少しずつ顔を上げた。三人は固まって攻撃をしている。

 よし、そのまま近づいて攻撃するぜ。そのまま動くなよ。

 正一は三人が現在位置から動かないことを願ったが、そう甘くはなかった。三人はばらばらになったのだ。戸宮が正一の近くに移動してきていたのだ。戸宮は体勢を低くしていた正一には気がついていなかった。

 ようし、そのままこっちにこい。倒してやる。

 正一はシールドの脇において銃を構えた。戸宮は何も知らずに向かってくる。鈴木のいる所に目を向けていた戸宮を正一は攻撃した。すると、戸宮に攻撃が当たって転送されていった。

 一人目は倒した。でも、まだ二人残っている。鈴木の心配もある。これで増援なんかがこられたら溜まったもんじゃないな。

 正一はシールドを持って再び移動を開始した。坂田がやみくもに攻撃しているのを正一は気がついたが正確な位置が把握できていなかったので注意した。すると、佐藤が誰かに連絡している様子が正一の目に映った。

 やばい、俺の場所を連絡している。間違いない。早くここを脱出しなければ。

 正一は焦りと緊張に満ち溢れていたが、集中して佐藤のほうへ忍び寄った。すると、別方向から草を掻き分ける音がしたので正一は坂田が近くにいることを理解した。体の向きを変えて、正一は移動したが、予想外のトラブルに合った。携帯電話が鳴ってしまったのだ。正一は慌ててシールドを落として携帯電話を左手で取った。

坂田と佐藤は携帯電話の音に気づき、正一に近寄ってきた。正一は切ろうと思ったが、助けがほしかったので電話に出た。

「もしもし」

「哀・・川」

 林の低い声が聞こえた。

「何でもいいから助けに来い。B地区とC地区の境の草むらにいるから」

 正一は低い声でしかも慌てながら言った。

「あ、分かった」

 林はそう言うと、正一は坂田がこっちを狙っていることに気がつき、慌てて右に体をでんぐり返しで避けた。扇型のレーザー光線はかろうじて正一には当たらなかった。正一は立ち上がり銃を向けると、坂田も同じように銃を向けた。正一は引き金を引いた。坂田も引き金を引いたが、連射するまでにかすかな時間があったので光線は発射されず、正一の攻撃が坂田の頭部に命中した。

「くそー」

 坂田が大声で叫びながら転送されていった。しかし、佐藤からの攻撃が飛んできたので、正一は踏み潰された草の上に置いてあったシールドを手に取り、体を守った。そして、佐藤を攻撃しようとした時にはすでに彼女は転送されていった。

 どうした、鈴木がやったのか?

 正一は立ち上がり、辺りを見渡すと、一0メートルくらい先にに林がいて、その横に氷川がいた。正一はうれしさと恐怖を同時に感じた。

「よ、林助かったよ」

 正一は逃げたことを氷川に悟られないように二人に近づいたが、正一の前に氷川が立ちはだかった。

「あなた、よくも私を見捨てたわね。戻ってくるって約束したのに」

「何のことやら?」

 正一はわざとらしくとぼけて空気を和ませようとしたが逆効果であった。

「はあ、何とぼけてるのよ。そんなに私が嫌い。私のどこに問題があるの?」

 氷川はそう叫びながら涙目になったので正一は慌ててしまった。

「ごめん、悪かった。本当は元に戻ろうとしたんだけど少しだけ装置から離れたら攻撃されて帰れなくなったんだよ。本当に悪かった」

 正一は大嘘をついた。氷川はそれを信じていないのか正一の顔を覗き込んだが、納得したようだ。

「そうなの、だったら許してあげる」

 何が許すかだ。一体何なんだこの女は?

 正一は少しムカついたが必死で抑えた。

「鈴木、こっちにこいよ。もう敵はいないから」

 正一は鈴木のことを思い出し、呼んだ。

「鈴木って同じ学年の鈴木さんのこと?」

 氷川は鈴木のことを知っているみたいだった。鈴木は茂みから顔を出した。いかにも内気な少女の顔だった。

「氷川さん」

 鈴木は小さな声で言った。

「お前たち、同じクラスなの?」

「そうよ、知らなかったの?」

 氷川の言い方に正一は少しムッとしたが堪えた。

「まあいいや、早くここを出たい。逃げるぞ。あ、そうだ。鈴木、武器返して」

 正一は鈴木からレーザー銃を返してもらい、走り出そうとしていたが、それを氷川が止めた。

「待って、四人いっしょに転送するから私につかまって」

 氷川は右手で鈴木の手をつないだが、正一はためらった。

「林君は哀川につかまって、哀川は私につかまればいっしょに転送されるから」

 一体なんのことやら?

「どういうことだよ?」

「話は後よ」

 氷川は話をさえぎった。

「分かった」

 正一は氷川の肩につかまろうとすると、氷川が無理に正一の手をつかんでブレスレットとは別に取り付けてある機器のボタンを操作して四人は転送された。

 四人はC地区の二番転送装置の前に現れた。そこには足を痛めた高倉が腰を下ろしていたが、四人の出現に少し驚いている様子であった。

「哀川、久しぶりだな」

 高倉の言い方にはどこか嫌みが感じられた。

「お前、まだ生きてたのか」

 正一も嫌みな言い方で対抗した。

「うるせーよ。それにお前、今までどこでどうしてたんだよ?」

 高倉は妙に怒っている様子だった。

「そんなことはいいじゃないか。それよりもこれからどうする」

 正一は高倉の話を受け流し、本題に入った。

「う・・・・・」

 四人は皆黙ってしまった。すると、正一は

「そういえば、氷川のアイテムは一体どんな機能がああるんだ?」

「あ、これ」

 氷川は腕に取り付けてある機器を顔の高さにまで上げた。

「これは、転送装置に転送できる装置なのよ」

「なるほどね」

 正一は納得した。そして、調子に乗ったことを言い出した。

「じゃあ、こういう作戦はどう? 俺は一人で逃げ出すから残りの三人でリーダーを倒しに行くっていう画期的なアイデア・・」

「ダメ」

 高倉と氷川が同時に言った。

「あなたはどうして一人で行動したがるの。勝ちたかったら力を合わせるべきよ」

 あーやだ。俺は力を合わせるって言葉が嫌いなんだ。性格にに合わないんだよなそういうの。まあ、鈴木を助けたのは例外だけど。

 正一は面倒くさくなったが、心のどこかで勝ちたいという気持ちがあるのに気がついた。

「じゃあ、こういう作戦はどう? A地区西にある転送装置三番に皆で転送してそこから学校に奇襲をかける」

「でも、転送装置に敵がいたら」

「それは情報を操作しようぜ。な、鈴木」

 正一は鈴木の方に顔を向けた。

「え、私」

 鈴木は戸惑っていた。

「鈴木さんが何なの」

「彼女が女王蜂の鮎喰に嘘の情報を流して、A地区の三番転送装置にいる敵や他の地区の敵を陽動するんだよ」

「どうして鈴木さんがしなきゃいけないの?」

「鈴木、たぶんお前、女王蜂の連絡先知ってるだろ?」

「そうだけど」

 鈴木はぼそぼそと言った。

「え、そうなの?」

 氷川は少し驚いていた。

「でも、チームが違うから連絡しても意味ないと思うんだけど?」

 氷川が言うと、正一と鈴木は黙ってしまった。

「どうしたの?」

 氷川は正一の黙りこみに違和感を感じた。

「その・・・」

 正一は態度をはっきりしない。

「何なのよ?」

 氷川は少しイラつき始めていた。

「ごめんなさい」

 鈴木が急に氷川、林、高倉の三人に謝りだした。

「え、何で?」

 氷川は混乱し始めていた。

「私、皆を裏切ってたの」

 鈴木は体が縮こまってしまった。

「おい、それって、スパイしてたってことか?」

 高倉が足の痛みを堪えながら言った。

「ごめんなさい」

 鈴木は二度謝った。

「いいじゃねーか、ただのゲームなんだし、気にすることないぜ」

 正一が珍しく気をきかせた。

「お前、よく平気でいられるな」

 高倉は怒り心頭だった。

「だって、俺修学旅行に興味なんてないんだもん、別に負けたっていいじゃん」

 正一は調子に乗って言った。

「お前は去年勝ってるからいいけど、俺なんて中学時代の旅行すら行ったことがないんだぜ。一度くらいは行きたいよ」

 高倉興奮しながら話した。

「別にたいしたことじゃねーよ。そんなにおもしろいか修学旅行って」

 正一には高倉の気持ちが理解できなかった。

 クラスで固まって行きたくもない所につれてかれてさ。できればもう行きたくないのが心情だが。でも、このゲームは勝ちたいかな。負けてもいいけど、できれば勝ちたい。鈴木のしたことなんてハンディキャップみたいなもんだ。それに、死ぬわけじゃないんだしさ。興奮しすぎなんだよ、高倉は。

「まあ、鈴木のことは許してやってくれよ。好きでこんなことしてるはずはないんだしさ」

 正一は明るく言った。

「私は修学旅行に行きたい。だから絶対に勝ちたいの」

 氷川は急に怖い顔になった。

「どうした?」

 正一は氷川に顔を向けた。

「鈴木さん、あなたが皆から白い目で見られてることは知ってるわ。でも、正々堂々と戦っていた人に対して失礼だと思わないの」

 氷川はますます怖い顔になった。

 場の空気が乱れてきた。

「ね、どうしてそんな卑怯なことをしたの。教えて」

 氷川はしつこく鈴木に迫った。

「私・・・」

 鈴木ははっきりしない。

「ね、はっきりしてよ」

 氷川は強く迫ったが、鈴木は何もしゃべらない。

「誰かに脅されたからに決まってんじゃン」

 正一はこういう緊張感に包まれた空気が大嫌いだった。

「そうなの?」

 氷川が鈴木に訊いた。しかし、鈴木は何も答えない。

「そうなんだよ。人を裏切る趣味を持った人間なんていないだろ」

 もしかしたら、俺がそうかも。

 正一は心のどこかで笑っていたが、顔には出さないようにした。

「そっか、そうだよね」

 氷川は納得したようだった。

「そうなのか」

 高倉はまだ疑っていた。

「よし、じゃあA地区の三番転送装置の敵を陽動して、俺たちを転送するぞ」

 正一は気まずい空気を壊すかのように気合を入れて言った。

 そういえば、放送部消えたな。いっしょには転送されなかったしな。


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