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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
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親友の奮戦

 高倉と林はいっしょに森に隠れて坂田、戸宮、佐藤の三人と戦っていた。木を盾にしながら戦ってはいたもののお互いに敵を倒せなかった。

「当たれー」

 高倉は叫びながら攻撃したが当たらなかった。

 くそー三人を倒してリーダーに迫っている部隊を阻止したいのにこれじゃ駄目だ。

 高倉は焦っていた。

「林、この森の戦いで決着がつくかもな」

 銃の引き金を引きながら高倉が別の木に隠れて攻撃している林に言った。

「かもな」

 ニヤニヤ顔の林はこのゲームを楽しんでいた。

「あ、林向こうを見ろ。増援が来てるぜ」

 高倉が指を指す所に増援らしき生徒たちが数多く迫っていた。

「おい、林。坂田が俺たちを回り込もうと移動してやがる。あっちだあっち」

 高倉がさっきとは別方向に指を指した。林もそれを確認した。

「やべー他に味方はいないのか?」

 高倉は辺りを見渡したが、林と二人の下級生以外付近には誰もいなかった。森が広いために高倉は次第に孤独感を味わうようになった。

「これじゃ、二年連続で修学旅行いけねーよ」

 高倉は中学時代、修学旅行直前で体調不良で休んでしまい、行けなかった。そのため、高校時代は絶対行きたいと思っていたが、高校一年生の時のサバイバルゲームで負けてしまったので次こそはと思っていた。

「今年も駄目だな。こりゃ」

 高倉と同じく高校一年生時に負けてしまい、修学旅行に行けなかった林も嘆いていた。すると、別方向からの攻撃されたが、二人には当たらなかった。

「坂田か」

 高倉は坂田が嫌いだったのであいつだけには負けたくないと思っていた。

 あんなやつだけには負けてなるものか。人をののしることしかできないやつなんかには。

 高倉は坂田がいるであろう方面を攻撃し始めた。しかし、手ごたえがない。

 高倉は姿勢を低くして坂田からの攻撃を回避した。けれど、敵の数は増える一方だ。

「ここは一端引くという考えが浮かんだが、林はどう思う?」

 高倉は林に相談した。

「いいかも」

 高倉は、林のニヤニヤ顔がなくなってきていたことに気がついた。高倉は再び攻撃する方に顔を向けると、坂田からの攻撃がなくなっていた。高倉は少し心配したが、別方面の敵に攻撃を続行した。それから、数分して高倉は坂田がいた方面に顔を向けると、謎の光が高倉の頭上を飛んできたことを確認した。

 何だ。今のは? 横に一メートルから二メートルくらい広がった板状の光が飛んできた。

 高倉は林の方を向くと、林もそのことに気づいたらしく、唖然としていた。すると、今度は横ではなく縦に広がった光が飛んできたが二人には当たらなかった。

「これはやばい。林、ここから逃げるぞ」

「いいかも」

 高倉は敵がいる所から反対方向に移動し始めた。それに続いて林も後を着いてきた。しかし、広がった光が二人を襲い続けた。

「何なんだ、あの光は」

「シークレット・・・アイテム」

 林が低い声で言った。

「くそ、じゃあ、拡散レーザー光線ってことか」

 高倉は自分なりに分かりやすい名前をつけたが、林に理解してもらったかは分からなかった。二人は走り続けた。リーダーの場所に近づかないようにしながら、二人は走っていると、高倉は石につまずいて転んでしまった。

「いてー」

 高倉は両手をつき、立ち上がろうとするが右足に激痛が走った。

「やべー捻挫したみたいだ」

 高倉は何とか立ち上がることはできたが、右足首に体重をかけた時に再び痛みだした。

「お前は逃げろ、林」

「大丈夫・・・かよ」

 林はどこか笑いながら高倉の左腕を自分の肩に回して支えた。

「俺は気にするなよ」

「けが人を・・置いて・・いけるかよ」

 林は高倉の左腕を持ちながら、当てもなく進んでいったために、攻撃することができないでいた。すると、また扇上の光が二人を目掛けて飛んできたがかろうじて外れた。しかし、攻撃が止むことはなかった。

「このままじゃやられるな」

 高倉が足の痛みを堪えながら言った。敵は刻一刻と迫ってきていた。二人はもうリタイヤを覚悟していた。

「大丈夫、二人とも」

 氷川がどこからともなくやってきた。

「一体何があったの。本当の戦場じゃあるまいし?」

「俺が足を捻挫しちまったの」

 高倉は痛みを堪えた顔で言った。すると、氷川は高倉の右腕を持った。

「ここから逃げましょう。もう戦えないし」

 高倉は悔しくてたまらなかった。自分を責めていた。それに気がついた氷川は

「高倉君、気にしなくてもいいのよ。誰だって怪我くらいするものよ」

「ああ、ありがとう」

 すると、氷川はブレスレットをつけていない方に知らない機具をつけていた。

「今からここを脱出します」

 そう言うと、氷川はボタンらしき物を押すと、三人はその場から消え去った。気がついた時には、どこかの転送装置の前に立っていた。

「え、俺たちさっきまで森にいなかった」

 高倉は混乱したままだった。

「このアイテムで転送したのよ。私たち三人を」

 氷川は腕につけている機具を二人に見せた。

「じゃあ、ここはどこ?」

 高倉は質問し続けた。

「ここはC地区の二番転送装置の前」

「何でここにしたの?」

「このアイテムって転送装置にしか行けないのよ」

「そっか、じゃあもう森には戻れないな」

 高倉はがっくりとした。

「そうね、後は森の味方がどれくらい持つかだけど時間の問題よ」

 氷川はしんみりとしていたが、あることを思い出した。

「あ、そうだ。私って本当馬鹿。忘れていた」

「何、どうしたの?」

 高倉が訊いた。

「リーダーを転送しに行く予定だったのよ。脱出させるために。でも、ついあなたたちを助けちゃったの」

「あ、そうか、ごめん」

 高倉はちょっとだけ罪悪感を覚えた。

 本当はリーダーを助けるために森に入ったのに役立たずの俺を助けるなんて。

「そういう意味で言ったわけじゃないのよ。今からもう一度リーダーを助けに行くわ」

「え、でも少し距離があるし、やられるかもしれない」

「でも、私この試合に勝ちたいの」

 一瞬間が空き、高倉が口を開いた。

「林を連れて行けばいいよ。俺はここに残るから」

 高倉は無理の腕を引っ張り、自分の足だけで立った。

「え、でも」

 氷川は一度林を見て、高倉に顔を戻した。

「いいって。俺はここに残ってるから。それにここはもう人なんていなそうだから」

 高倉の決心は揺るがない。それを氷川は理解した。

「分かったわ。じゃあ、リーダーを助けたら必ず戻ってくるから」

 氷川は林といっしょに再び森に向かって行った。

 あーあ。俺一人になっちまったぜ。まったく、哀川は一人でどこへいるのやら。森にこいとは行ったけど本当に来るのかな。まあ、今頃来たってしょうがないけど。

 高倉は転送装置の前で腰を下ろして銃を右手に構えた。敵が来た時の要人のためだ。

 哀川に女がいたなんてなんか笑えるな。誰も知らない哀川の女。おもしろい。妙におもしろい。普段は女に興味ないぜって顔してるくせにさ。やっぱりあいつも男だしな。俺も恋人ほしいな。そういえば氷川さんは哀川とどんな関係なんだ。まさか三角関係とか。うわぁ、哀川のイメージが。

 高倉は無意味な妄想をしながら、二人を待っていた。


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