負け犬のうなり声
坂田、戸宮、佐藤の三人はリーダーを確認するも、高倉と林に攻撃され、追うことができなかった。
「くそーあと少しだってのに邪魔しやがって」
坂田は悪態をついた。しかも、高倉と林は体を森林に隠しながら攻撃していたため、無防備の三人は攻撃しづらかった。
「どっかに隠れないと」
戸宮が言った。しかし、ここにはたいした建物がないので隠れる所が見つからなかった。
「どこに隠れればいいの?」
佐藤が聞いてきた。すると、レーザー光線が佐藤のすぐ横に飛んできた。
「きゃあ」
佐藤が悲鳴を上げた。
「やべーここ離れるぞ」
坂田が二人を右方向に促した。
くそー、木の陰から攻撃されてる上に、距離が遠いから不利だ。後少しでリーダーを倒せたのに。ちきしょう。リーダーがあそこにいるってことは、上田たちは失敗したのか。公園の近くにいるべきだった。くそ。
坂田は後悔の念が頭の中を支配していたが、今は生き残ることが優先であることは分かっていたので、レーザー光線を回避するためにその場を離れた。
もう、敵がいない。ここに来た時にはウジャウジャいたのはずだが、今は味方が少しいるくらいで、後の仲間は公園にいるのだろう。このことを上田や島田に話すべきかどうか。試合に勝ちたいなら言ったほうがいいに決まってる。だけど、活躍したければ、黙っているほうがいい。
坂田は安全な所で足を止めて、考え始めた。
「これから、どうするのよ?」
佐藤が二人に聞いてきたが
「知るかよ」
と坂田は冷たく言った。
「他の人集めてリーダーを追いかけようよ」
戸宮がもっとも合理的なことを言った。
「わざわざ、皆に声かけるの。面倒くせーよ」
坂田が言った。
「その方法でいいんじゃないの」
「分かったよ。じゃあ、お前言って来いよ」
坂田がいかにも面倒そうな顔で言った。
「なんで私なのよ」
佐藤が反論した。
「俺はやだぜ」
「なんで」
坂田はそこで言葉が詰まった。
手柄を独り占めしたからとは言えない。でも、これが本心だし、三人で戦う分には不満はない。もし、戸宮や佐藤が敵リーダーを倒しても、悔しいが我慢できる。でも、上田とか島田みたいに人気があり、優秀なやつらに活躍させてたまるか。
「三人でやろうぜ。そんなに大勢で戦ってもウザイだけだし、それに集団でいけば目立つだろうし。どっちにしても、もう俺たちが勝つのは決まったようなもんだしな」
「なんで。まだ決まってないじゃないの」
佐藤は疑い深い顔になった。
「知らないのか。まず、公園は完全に占拠したっぽいじゃん。それに始めの頃に敵の主力がほとんど壊滅したんだよ。敵戦力の集団がまっすぐ学校に進んで来たから左右待ち伏せして攻撃したからあっという間に敵はいなくなったし。だから、もう敵が鮎喰を倒すチャンスなんてないんだよ。ルーズドッグに残された道は、無意味な時間稼ぎだけなんだよ」
坂田は今までのできごとを簡単に述べた。
「そうだったの。私たちは作戦無視して適当に動いてたから分からなかったわ」
「だから、三人で戦った方がおもしろいじゃん、援軍なんて連れてきたらおもしろくないし。集団フルボッコもいいところだぜ」
坂田は一生懸命二人を説得した。二人はそれなりに納得した顔になった。
「でもさ、もう敵リーダーはどっかに行っちゃったよ。当てもなく探すの?」
戸宮がもっともな意見を言ってきた。
「あ、確かに」
坂田はそれを忘れていた。さっきの攻撃でリーダーを見失ってしまったことを思い出した坂田は再びイラつき始めてきた。
「方向的に森の方に行ったんじゃないの」
坂田は適当なことを言った。
「そうかもね。て、そうよ。あの方向には森しかないし、あそこなか隠れやすいし、守りやすいわ」
佐藤が言ったので坂田と戸宮は納得してしまった。
「じゃあ、今からその森に行きますか?」
坂田は二人に訊いた。
「それはいいけど、公園近くの林にいた敵はどうする?」
「無視に決まってるだろう」
坂田は冷たく言い放った。
「そう」
佐藤は素直にそれを認めた。
「じゃあ、行くぞ」
三人は東のE地区を目指して走り始めた。しかし、林から再び攻撃されたが三人は完全に無視して走り続けた。




