親友とライバル
島田裕也は親友のことを妬んでいた。親友の名前は上田弘樹。成績はトップクラスでスポーツ万能。野球部のキャプテンでピッチャーをしている。上田とは小学校五年生からの付き合いで、ずっと同じクラスだった。同じ少年野球団のチームに入っていたこともあり、お互いのことは誰よりも良く知っている。
でも、俺はあいつが憎い。
「今日は偏差値の低いやつらをぶっ倒してやるから」
上田は島田に向かって調子の良いことを言っている。
こいつなら、最後まで生き残って活躍するんだろうな。俺はいつもこいつの後ろ姿を追っかけてるみたいでホントムカつく。
「まだ、放送が無いな」
島田はイラつきを払いのけるかのように言った。
「焦ることはないぜ。どうせ俺たちが勝つに決まってんだから」
上田は自信に満ちていた。
島田は彼の決め付ける態度が許せなかったが、決め付けが外れたためしがない。
だから、余計にムカつく。
島田は机に転送された武器を手にとって眺めていた。
正直、上田とは違うチームになりたかったが、俺は決して成績が悪いわけではない。自分では真ん中より上だと思っている。だからこそ、優等生の上田と同じチームになったのだ。しかし、本当は上田を倒したくてしかたがない。敵だったら真っ先に上田を倒す。倒せるならだけど。
「そういえば、上田。お前って彼女とうまくいってる」
上田は彼女の話になると、照れくさくなっていつもの調子に乗った態度が変わる。
「まあ、うまくいってるかな」
上田はどこかぎこちない言い方で言ったために、島田は少し変だと思った。いや、そう思いたかっただけかもしれない。
正直、早くこのゲームを終わらせて家に帰りたい。ルーズドッグのメンバーを見る限り、俺たちのチームに勝てるわけが無い。たぶん、上田が敵を多く倒して、ブライトフューチャーズが早い段階で圧勝して、終わる。その後は、上田の自慢話を一時間は聞かされる。憂鬱で仕方が無いし、だんだんムカついてもくる。だからこそ、俺も負けるわけには行かない。リタイヤなんてしたら、上田に馬鹿にされる。プレッシャーが強くなってきて余計憂鬱になる。
「この銃、連射できないんだな。使えねー」
上田が他の生徒の真似をして、銃を教室の天井に向けて撃っている。
確かにレーザーが出るタイミングが遅い。狙いをうまく定めないと敵に攻撃が当たらないということか。
島田も天井に銃を向けて引き金を引いた。銃口から青い光が天井に向かった。レーザーのスピードが速いのでこれをよけるのは無理だなと、島田は少しだけ不安を感じ、銃を机に上に置いた。
上田は他の生徒と話し始めたので、島田は黙ったままその会話には入らなかった。