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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
29/51

傍観者

 放送部部長の中村恵はC地区の公園での戦闘を撮影しながら走っていた。

「バッテリー交換しなくちゃ」

 あらかじめ用意していたバッテリーを交換するために、公園の入り口付近でしゃがんだ。

 今、良いところなのに。

 中村は急いでバッテリーを交換して立ち上がった。

 さっき、上田君が透明になったところをしっかり撮ったのは良かったけど、彼どうしたのかしら。透明で見えなくなったから今どこにいるか分からなかったけど。

 カメラを持って撮影を開始すると、上田の友達の島田とその仲間たちが公園に潜入していく所だった。

 そういえば、ルーズドッグの攻撃が少しだけ弱まったような。

 中村は島田をカメラで撮影しながら、上田の行方が気になっていた。すると、島田を撮影している枠から上田が透明から元の体に戻っていくのを撮影できた。

 透明になって敵を倒したから、潜入できたってわけね。少し卑怯な気がするけど。

 数分後、島田のファインプレーや上田の透明機能のおかげでブライトフューチャーズは前進していった。もちろん、二人の活躍を中村はしっかりとカメラに収めた。中村は二人の跡をつけるために、カメラを持って走ったが、生徒の邪魔にならないように撮影することは決して楽ではなかった。そのため、生徒よりも息が上がってしかたがなかった。

 リーダーの橋本君はどこにいるのかしら。もっと向こうだと思うけど。これでもし、思っても見なかった場所、例えばここじゃなくて別の場所に逃げていたらすごくおもしろいのにな。けど、早く終わって欲しい気持ちもある。

 中村は生徒同士の戦闘に巻き込まれない木の陰に隠れて撮影していた。レーザー光線が飛び交っていて、中村は少し前に見た、大昔のSF映画の中にいる気持ちになった。

 もっと前進して、リーダーがいるであろう場所で撮影しよう。

 中村はカメラを持ちながら走った。生徒たちの邪魔にならないように人気のない所を進んで行ったが、木が邪魔でなかなか前には進めなかったが、近くに生徒がいない分、気を使わずに走った。

 足が疲れてきたわ。もう限界。来年このゲームを題材にした映画はやめたほうがいいかもね。

 中村はかなり足に疲れが溜まっていたので走るのをやめて、遠くからの撮影を始めた。

 この公園は本当に広い。リーダーはどこにいるのかしら。もっと、近くにいてくれればここから撮影できるのに。

 木の陰から撮影し始めた中村は遠くからではあったが、ルーズドッグのメンバーの撮影に成功できた。

 あの男子生徒は・・・分からない。同じクラスメイトじゃないからな。

 その男子生徒といっしょに別の男子生徒と固まって戦っていた。一人は体がちょっとだけ筋肉質っぽい体型で、もう一人はちょっとだけ小柄な体型をしている。同じ木の陰に隠れて、下に小柄な男子生徒、上に筋肉質の男子生徒がレーザー光線をやみくもに撃っている。

 名前が分かればいいのに。

 中村は彼らをしばらく撮影していた。筋肉質の男子が小柄な男子に何やら話をしているが、レーザー光線の飛び交う音にさえぎられて分からなかった。

 すると、彼らの背後に一人の女子生徒が迫っていた。ブライトフューチャーズのその生徒は狙いを彼ら二人に合わせて引き金を引こうとしていた。

 あぶない。

 中村はその言葉を口に出しそうになったがどうにか抑えた。すると、その女子生徒が急に消えたのである。

 え、どうして?

 口に出さないように撮影を続けると、二人の男子生徒の背後に片手で銃を持っている黒のキャップ帽を被った女子生徒がやってきて二人を助けたのだ。

 あの女子、誰かしら?

 中村はこのままカメラの位置を変えなかった。

 知らない子を見ると、無性に気になっちゃうのよね。

 中村はその女子生徒が気になってしょうがなかった。その女子生徒は二人の男子生徒に何か話をしている様子であったが、二人の男子生徒は困った顔をしている。

 一体何の話をしているのだろう。気になるわ。

 中村は、疲れが少し取れてきたので、三人に近づこうと考えた。もちろん、実際には距離があるため、すぐ近くというわけにはいかなかったが。

 それでも、中村が彼らに向かって歩いていると、レーザー光線がこちらに向かって飛んできた。中村は驚いてしまったが、すぐに攻撃された原因が分かった。

「ごめん、俺がいるから君に光線が当たっちゃって」

 中村は後ろを振り返ると、関口直紀が体を伏せながら謝っていた。

「ううん、気にしないで」

 中村は少し驚いてしまったが、彼が体育会系であったことを思い出し、カメラの位置を変えて、関口を撮影しだした。

「俺、カメラ苦手なんだよ」

 関口は顔を赤くしていたので、中村は彼が恥かしがりやであることが分かった。

「このゲームって楽しい」

 中村は急にインタビューしたくなったので質問した。

「え、まあ楽しいです」

 関口は意表を突かれたような顔だった。

「ご、ごめんちょっと」

 関口は銃を構えて敵に攻撃した。

「ごめんなさい。邪魔しちゃったね」

 中村は本来の仕事に戻ろうとする。

「別にいいよ。中村さんがいなかったら、さっきの攻撃で俺倒されてたから」

 関口は木を盾にして再び攻撃していた。

 関口君はこのゲームにかなりはまってるって感じ

 中村はカメラを、関口から彼が攻撃している場所に切り替えた。互いの攻撃が当たってないことが中村にはよく分かった。

 あれ、さっきまでいた三人がいない。

 中村はカメラ越しにそのことが分かった。

 撮影してる方向は同じはずだから、どこかに行ってしまったのか。探さなきゃ。

 中村はカメラを持って当ても無く南に進むことに決めた。

「関口君、頑張って」

 中村は小さな声で言ったので関口は気がついていなかった。疲れが残っている足で歩き始めた。


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