勝ち組の劣等感
島田は上田の後を追いながら、C地区の公園を進んでいる時に、変なボックスを見つけた。説明があったシークレットアイテムだとすぐに分かったから、表示画面に俺のクラス番号を入力した。すると、そのボックスがなくなり、代わりに円柱の箱の上に四角形の物体が置いてあった。すると、立体映像が急に飛び出してきて、この四角形の装置の使い方が示されていた。ベルトにはめて、四角形の物体にあるボタンを押すと、透明になると書かれていた。けれど、それは二分間だけであって、時間が経過すると五分間は使えなくなると書かれていた。
「島田、どうした?」
いつのまにか上田が俺の背後にいた。
「い、いやなんでもない」
そう言ってごまかそうとしたが無駄だった。
「隠すなよ。例のアイテムだろ。俺に貸してみろ」
そう言うと、強引に島田のアイテムを取り上げた。島田は非常にムカついたので
「返せよ。上田」
「お前より、俺の方がうまく使えるし」
上田は、説明を呼んで使い方を学んだ。
それから数十分後、二人や他の仲間たちは、C地区の公園に到着した。
上田が坂田を馬鹿にした後、こう着状態が抜け出せなかったため、上田が言った。
「俺がこれを使って透明になるから、攻撃やめさせておいて、皆に。味方の攻撃に当たったら嫌だから」
上田はベルトに四角形の物体を取り付けて、ボタンを押した。すると、体が見る見るうちに透明になった。
「マジすげー」
島田はあまりに透明すぎるので驚いてしまった。
「じゃあ、後よろしく」
上田の足音が、かすかに聞こえるがもうどこにいるか分からなかった。島田は、近くにいる仲間たちに攻撃を止めるように促した。
「ごめん、悪いんだけど二分間だけ攻撃やめてもらえる。本当おねがい」
「何で」
「二分間だけ頼む」
島田は手を合わせながら他の生徒たちにも同じようにお願いした。
何で俺がこんな役回りなんだよ、くそ。俺の武器だったのにさ。
約二分間待って、攻撃が弱まったのを見計らった島田は、皆に
「皆、公園に突入するぞ」
と大声で言い、島田を戦闘に入り口に入って行った。彼を戦闘に他の味方の生徒も中に入っていった。敵が完全にはいなくなってなかったが、島田たちは敵がいたであろう木を盾にして応戦した。
「どこだ、上田」
島田は上田の無事の確認をした。というより無事じゃないことを確認したかった。
「俺はここだよ」
上田が笑顔で、別の木に隠れていた。
くそ、生きてんのかよ。
島田はつい舌打ちをしてしまったが、上田には気づかれていなかった。
まあいいや、とりあえずこの試合を早く終わらせて部活に行きたい。上田の活躍は癪だがしょうがない。これが運命かもしれない。
島田は懸命に攻撃したが、敵も物を盾にして戦っていたため、攻撃が当たらない。また、こう着状態が続くと思われたが、数分後、上田が透明になって、敵を蹴散らした。
リーダーはどこだ? もっと先に行かないと駄目か。
この公園はとても広い。もっと南に行くと子供向けのアスレチックゾーンがある。そこにも障害物がたくさんあるから上田の透明能力が必要になってくる。あいつに頼るしかないのは悔しいがしかたがない。だから、早く終わって欲しい。
木が多かったために、敵味方ともに防戦一方であった。上田の透明機能もまだ発動できない。
島田が悩んでいると、誰のか分からないシールドが地面に落ちていたことに気がついた島田は決心した。
ここは一か八かやるしかない。
島田は落ちていたシールドを手にとってスイッチを入れた。シールドから立体映像のような光が飛び出し、広がった。
これで敵に突っ込むしかない。俺ならできる。上田より運動能力は劣っているが決して悪くは無い。むしろ良い方だ。
島田は右手に銃を左手にシールドを持って、木に隠れてる敵に向かって走った。敵は島田に向かって容赦ない攻撃を仕掛けてきた。しかし、すべてのレーザー光線はシールドに阻まれてしまう。
そうか、銃とセットにしなかった理由がはっきりした。銃とシールドをセットにすると敵を倒しにくくなる。けれど、剣との装備なら話が別だ。剣だと接近しなければいけないからどうしても盾が必要になってくる。この盾は悪くない。今後、生きてたら絶対に上田に貸さないようにしよう。良い所をこれ以上奪われたくないし。
島田は木に隠れている敵の一人に向かって走った。
一人ずつ倒すのは大変だ。自分の盲点である横から攻撃されたらすぐにゲームオーバーだ。しかし、どうにかするしかない。
木にたどり着こうとしていた島田に容赦ない攻撃が飛んできたが、連射するのに数秒時間がかかるレーザー銃なので、その隙の島田は隠れた敵を攻撃しようと考えた。敵が木から顔を出すのを見計らって、島田は野球部で学んだスライディングをした。たまたま地面が芝生だったので自然と体を仰向けにすることができた島田は敵の攻撃を交わし、倒れながら敵の横を取って銃を向けて引き金を引いた。敵はその攻撃を受けて消えていったが、右方向の敵が島田に狙いを定めていた。それに気づいた島田は仰向けの体制から、シールドを右側に向けるためにレーザー銃を持っている右手を地面に置いて、それを軸に体勢を仰向けからうつ伏せにして、攻撃をシールドで守って、軸にした右手のレーザーガンで敵をまた一人倒した。
やべー、今の俺かっこいいかも。
しかし、敵はまだ多く存在するのでレーザー光線の嵐が島田を襲う。うつ伏せから立ち上がった島田は体を小さくしながらシールドで体を守ったが集中砲火はやまない。
しまった。身動きが取れない。くそー調子に乗りすぎた。
なおも集中砲火を受けている島田は上田が助けてきてくれることをつい期待してしまった。その願いは通じてしまい、上田が透明になって敵を倒していたために、攻撃が少しだけ弱まってしまった。
「島田、何かっこつけてんだよ。マジダサいし」
透明になっていて島田にはどこから話してるのかが分からなかったが助けてもらっていることに気がついた。
俺は結局あいつに助けられるのか。
島田は少しずつ木に近づいて隠れた。
上田がどこにいるか分からなかったが敵が消えていく姿はよくわかる。俺も負けていられるか。
島田は再びシールドを前面に構えてリーダーがいるであろう方向に走り始めた。




