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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
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スパイの苦悩

 鈴木は、敵味方の位置が分かるブレスレットを見ながら、C地区に到着したが、そこも戦闘が激しく、鈴木は敵味方から見えない所に隠れるしかなかった。

 次は誰を倒したらいいのかしら。ブレスレットのおかげで敵味方の位置が分かるから、すぐに逃げられるし、攻撃だってできる。

 鈴木は、隠れるのをやめて味方が固まっている所に移動することにした。

 この道の右に味方の反応がいくつもある。とりあえず、彼らの何人かを倒そう。

 鈴木は道の角を利用して、姿を隠し、顔だけ出して確認した。

 味方は四人いっしょにいて、私と同じように角を使って敵を攻撃してる。私がいることにも気がついていない。今がチャンスだ。

 鈴木は銃口を味方に向けた。四人いるうち一人だけ角から攻撃しないで隠れてるだけの生徒を狙い、引き金を引いた。味方の一人は消えていったが、それに気づいた仲間の一人がこちらを向いてきたので、鈴木は慌てて顔を引いた。

 見つかったかも。逃げなきゃ。

 鈴木はその場を離れた。ブレスレットを見ると味方の青い印がこちらに向かっているのを鈴木は分かっていた。

 そうか、逃げる必要は無いんだ。だって私味方だし。

 鈴木は逃げるのをやめて、あたかも今ここに来たばかりのしぐさをした。すると、すぐに味方の生徒が一人やってきた。

「あれ、さっき攻撃されたんだけど。お前が倒したの?」

 その男子生徒は鈴木を疑う様子がない。これを見た鈴木は

「今、敵を倒したところなの」

 と嘘をついた。

「そうか、助かったよ。じゃあ」

 男子生徒は背を向けて、仲間の所に戻って行った。

 彼らはほっといて他の味方を倒そうかしら。

 鈴木は彼らと離れるために別の道を歩き出した。ブレスレットを確認して敵味方がいない所に向かった。あまり体力に自信がないために、休憩が必要であった。

 どこかに椅子はないかしら。疲れて足が重くなってきた。

 鈴木はブレスレットの地図を確認しながら、落ち着ける場所を探した。しかし、なかなか見つからない。

 私は一体何をやってんだろう。本当なら、友達のいっしょにわいわい騒ぎながら敵と戦っていたかった。けど、友達は愚か会話する相手はいないし、皆して私をいじめてくる。しかも、脅されたからって味方を裏切るなんて。つまらないことしてる、私。

 数十分後、ようやく椅子が道沿いに見つかったので座った。

 今にも壊れそうな椅子。どうしてこんな所にあるのかしら。まあ、助かったからいいけど。これからどうしようかな。

 鈴木は地図を何回も確認しながら考えたが、思いつかなかった。鈴木はしばらく、椅子でじっとしていると、ブレスレットに赤い印が現れたので少し驚いた。

 誰でも良いけど、私は味方を倒すだけ。

 鈴木はじっと味方が迫ってくるのを待った。赤い印が少しずつ鈴木に近づいてくる。道の角から、同い年の女子生徒たちがやってきた。

 うそー あの人たちがどうしてここへ?

 鈴木は顔を背けてしまった。

 彼女らはよく、私を見ると、変な目で見るし、ひそひそ話しをし出す人たち。何でこんな場所にくるのよ。

 鈴木はその場を離れようと思ったが、足に疲れが溜まっていたため、もう少しここで休んで生きたいという願望に負け、座ったままでいた。

 彼女らは鈴木が一人椅子に座っていることに気づき、固まって、ひそひそ話しをし始めた。三人の内少し体格がふっくらとしている生徒が、わざと鈴木に聞こえるように言った。

「あいつ、一人で何やってんの。あ、そうか友達いないんだ。かわいそうに。性格が悪いのね、きっと」

 鈴木は悔しさとかなしみが入り混じった気分になった。

 どうして、私がこんな思いをしなきゃいけないの。私が一体何したっていうの?

 鈴木は彼女ら味方を倒すために、腰のポケットに入っている銃を手に取り、そのままじっとしていた。

「本当に固まってる。まるで地蔵みたい。マジきもい」

 ふっくらした体型の女子生徒が、笑いながら悪意たっぷりに言った。

 鈴木は彼女らが去るまでずっと怒りを堪えながら待った。

 怒りがこみ上げてくる。何で私がこんな仕打ちに我慢しなければいけないの。

 鈴木は必死になって堪えて一、二分で彼女らは道の角を曲がっていった。

 よし、いまなら後ろから攻撃できるわ。あんなやつら、消えてしまえばいいのよ

 腰をあげた鈴木は、彼女らに向かって走っていった。街角に差し掛かった時、ポケットの銃を取り出して、街角の塀から体を出して両手で銃を構えた。そして、引き金を引いた。痩せ型の女子生徒一人を倒した。

 私が脅されていなくても、彼女らを攻撃したに違いない。だから、罪悪感なんて感じなくていい。

 続けて、身長が低い女子生徒に銃口を向けた頃には彼女らも気づいて、後ろを向いていた。しかし、鈴木の射撃が早く、また一人を体育館送りにした。

「あなた、何考えてるの」

 最後に生き残ったふっくらした体型の女子が銃を構えながら叫んだ。

「あなたたちがいけないのよ。私を侮辱するから」

 二人は同時に引き金を引いたが、女子生徒は射撃が下手だったためか狙いを外し、鈴木の攻撃を受けた。

「マジ最悪」

 女子生徒はそう言い残して転送された。鈴木は、銃を下ろして、改めて自分の境遇に絶望した。

 本当に何やってんだろう私。


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