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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
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放送部の撮影準備

放送部の二年生、中村恵はカメラのセッティングに忙しかった。自分がSFサバイバルゲームを元に映画を取ろうと言い出したことを、今は少しだけ後悔している。数多くの生徒をいろいろな方面で撮影しなくてはならないため、持ち運び用のカメラと、他の地区を撮影するための固定カメラなどをセッティングするために昨日から働きっぱなしである。

「先輩、このカメラはどこに置けば良いですか」

「それは私がやっとくから他のとこお願い」

 中村にはこの後のSFサバイバルゲームでの撮影があり、カメラを持って動き回らなければならない。

 正直、憂鬱ではあったが、自分が言い出したことなのでしかたがない。

 過去の放送部でもSFサバイバルゲームの撮影はあったが、映画を取る目的ではなかったので今に比べてそんなに大変ではなかった。しかし、映画を撮るためには多くも方向から撮影しなくてはならず、人手が足らず、生徒会から何人か貸してもらって撮影を行う。

 私が先週撮影した各チームのミーティングでは明らかに差があった。そもそも、チーム分け自体がおかしい。前回行ったテストで成績順にチームメンバーを決めたので、二チームには戦い以前に偏差値に差がある。

 担当した偏差値が高いブライトフューチャーズの撮影では、先生方がリーダーを選出するところから始めていた。リーダーになりたくない人が圧倒的に多いことは明らかであった。なぜなら、このSFサバイバルゲームのルールはどちらかのリーダーが倒された時点で試合終了なのである。つまり、リーダーには責任が伴う。しかも、戦闘や計画を立てる際にはリーダーが中心になって行うので余計に重くなる。三年生の放送部員が引退したので、私が今の部長であるが、それでも、ゲームのリーダーにはなりたくない。しかし、このチームには鮎喰友子がいた。二年生なら誰でも知っている生徒である。成績は学年トップ、運動神経は抜群であるが、吹奏楽部に所属、しかもかなりの美人である。つまり、すべてを兼ね備えた人間と言っていいほどの生徒である。男女ともに人気があり、多くの男子生徒と付き合っては振っていると言われており、一部の女子生徒の集団からは嫌われている。私も、正直嫉妬するところがあるが、元々持っている才能なので私が太刀打ちできる相手ではない。その彼女がリーダーに立候補したのだから、誰も反対する人がいない。

 しかし、本当に驚いたのはその後であった。彼女はリーダーに襲名されて始めにしたことはチーム名を決めることであった。先生たちがそのように促したのであるが、彼女は要領よく生徒たちを促してチーム名をあっという間に決めてしまったのである。また、学校を拠点とすることは決められていたので、どのように生徒を配置するかや、作戦を全部一人で案を出し、決めてしまったのである。他の生徒も案や意見が合っただろうが、彼女の案が一番いいと皆分かっていたので、誰も発言する人はいなかった。

 中村はカメラを持って、校庭に向かうように部員に指示を出し、教室を後にした。部員たちは中村の後に、カメラを持ちながらついて行った。

「先輩、今日の試合、チームが勝つと思いますか?」

 後輩の男子生徒の秋山雄樹が話しかけてきた。

 彼は身長が小さく、明るい性格をしていたので放送部では誰からも好かれる生徒であった。

「私は、ブライトチューチャーズだと思うわ」

 その発言には自信があった。

 ミーティングの撮影が終わり、部室に戻った際にもう一つのチームであるルーズドッグのミーティングの話を聴く限り、ルーズドッグに勝ち目がないと思った。ネーミングのそうであるが、ミーティングにかける時間が無駄に長かったことが挙げられる。リーダーの橋本健二はリーダーの資質は無くはないが、周りの人材が悪いので話し合いがうまく行かなかったのである。リーダーの選出に時間が掛かった上に、チーム名や作戦の話し合いは意見が一つも出てこなかったので更に時間が掛かってしまったのである。結局、守備と攻撃を学年別に分けただけでミーティングが終わった。

「僕も、先輩と同意見です」

 秋山は明るい声で言ったので、中村は少しだけイラついたが、その後は他の部員といっしょに会話を楽しみながら階段を下りていった。

 校庭では生徒会の人たちがカメラのセッティングをしていた。監視カメラのようにいたるところにカメラが設置されており、校長先生と教頭先生がなにやら笑顔で話し合っているのを中村は見逃さなかった。

一体何の話をしているのだろうか?

 中村は少しだけ気になったが、準備があるので足を早めた。

 秋山が持っていたカメラを校庭の中心を写せるように一脚に固定して、中村が方向を調節した。

「先輩、体育館のスクリーンの設置が分からないので来てくれませんか」

 後輩の女子生徒が呼びに着たので、ここを上野たちに任せて、体育館に向かった。

 体育館はSFサバイバルゲームで敗退した人たちがベルトの転送装置を使って体育館の隣にある転送ドアに現れて、体育館で試合を見届けなくてはならない。その時に設置したカメラを使って多くのスクリーンに映し出される試合を見なければならない。

 中村は駆け足で体育館に向かった。

 運動はあまり得意ではなかったので前で走っている女子生徒について行くので精一杯だ。 

 体育館に着いた中村は、靴を脱いで体育館内に入った。

 走ったために、息が苦しくなったので、カメラを持ってSFサバイバルゲームの撮影ができるか心配になってきた。

「すいません。スクリーンをどこに設置したらいいか分からなくなってしまって」

「こっちに来てください。教えますから」

 中村は丸まったスクリーンを持った生徒たちを誘導した。



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