新たな武器をその手に
宮本、尾崎、大和の三人は、B地区西から、一番北に位置するA地区を目指していたが、敵に阻まれて、身動きが取れない状態であった。
「やっぱり、そう簡単には行かせてくれないか」
大和が木を盾にしながら言った。
今は、先ほどまでいた林よりも、もっと木が多い所にいた。しかし、敵が八人以上いてなかなか前に進めない。しかも、こっちは接近戦の武器しかないのでどうにもならない。
「他にいいルート無いかな?」
尾崎が二人に聞いてきた。
宮本はその質問に答えようと考えていたが、敵がこちらに接近してきたので叫んだ。
「敵が迫って来るぞ」
尾崎と大和もそのことに気がついた。
三人は後退を余儀なくされ、後ろに下がったが、敵の足が速く、距離がどんどん縮んできた。
宮本はスピードを上げて走ったが、木が邪魔で避けなければならないことにもどかしさを感じていた。しかも、敵は容赦なく攻撃してくるので、シールドでレーザー光線を避けなければならなかったことも面倒であった。
このままでは倒されてしまう。どうしよう。何かいい方法はないか?
宮本は必死で逃げながら、考えたがいい案は浮かんでこない。
くそー。ここでリタイヤなんてしたら、二人の友達の犠牲が無駄になってしまう。せっかく生き残ったんだから、最後まで戦いたい。仮に負けたとしても。
宮本は全力で走った。チャンスがあることを信じて。しかし、いくら走っても何も起こらない。
他に味方はいないのか? 何で俺たち三人しかいないんだ。もしかして、早い段階で来た味方は、敵にやられたのか。誰か助けに来てくれたって良いものだが。
三人はレーザー光線を回避しながら、逃げ続けた。しかし、敵はそんな三人をも逃がすはずがなく、執拗に追い続けた。
宮本は走るのをやめた。
「どうしたサム、何で止まった?」
尾崎が言った。
「どうせ、逃げ切れないなら戦うしかないと思う。二人は逃げてくれ。俺がここを食い止める。さあ早く」
宮本は意を決して敵の正面を向いた。
「そうだな。このまま逃げたって何も解決しないしな。それに俺疲れた」
息が苦しそうな大和も敵の正面に体を向きなおした。
「俺はやだ、俺は逃げる」
尾崎はそう言って、一人逃げていった。
「やっぱりあいつはあういうやつだったんだな。空気の読めないやつめ」
大和が不満を漏らしていたが、
「無理に俺たちに合わせる必要はないし、彼一人でも生き残って欲しいから良いんだ」
大和とは対照的なことを言った宮本だった。
「まったく、お前はお人好しだな」
大和は笑いながら、もう一つの質問をした。
「どうして、剣道部の連中といっしょじゃなくて、俺たちとなの? 俺たちSF研究部は学校の変人扱いされてる連中ばっかりじゃん」
大和はレーザーハンドを構えながら言った。
「別に凡人だろうと変人だろうと人気者だろうと関係ないし。それに、剣道部のやつらはいつもお前たちの悪口ばっかり言ってるしな。全員言ってるわけじゃないけど、何人かは俺がSF研究部に入ってるのを馬鹿にするし。それに何よりも、この学校の剣道部は妙に頭が良いから大半はブライトフューチャーズだしな」
宮本は少し照れながら言ったので、その照れが大和にも移ったらしく、
「そうか、良かった」
とよく分からない言い方をしたので大宮は笑った。
しかし、敵がすぐ目の前に近づいているため、二人は前方に集中した。すると、レーザー光線が連続して放たれたので、シールドで回避しながら、木を盾に身を隠した。
「どっちが先に生き残るか競争しようぜ」
大和が言い出したので
「お前が先に倒されると思うぜ」
宮本は調子に乗った言い方で答えた。
敵がすぐ近くに迫ってきた。宮本と大和は集中して、木の陰から飛び出すタイミングを見計らっていた。
敵は彼らのすぐ近くに迫っていた。
「いくぜ」
二人は同時に同じ言葉を言い。木の陰から敵に向かって飛び出した。敵は慌てて攻撃をしてきたが、シールドにしか当たらない。
宮本はレーザーハンドを振り上げるが、真横から敵の銃口がこちらに向いていることに気がついたので、攻撃をやめてシールドでカバーした。真横からの攻撃は回避したが、今度は真正面の敵からの攻撃が待っている。
くそー、攻撃できねー、本当に負けるかもな。でも、全力で戦えば、一人くらい倒せるかもしれない。やるしかない。
宮本は体制を低くして、レーザー光線を回避しつつ、正面にいる敵に向かって全速力で走った。敵は慌てて後ろに下がったが、宮本のレーザーハンドを回避することはできなかった。
やった。一人倒した。
しかし、敵がまだ多く、宮本に向けて銃口を狙っていた。宮本は、俊敏な動きで近くにあった木に体を隠し、敵の攻撃を回避した。敵は宮本を倒そうと、挟み撃ちにするように移動した。
やばい、挟み撃ちはきついな。どうするか。くそー、体力がきつくなってきたぜ。
宮本は、今までの疲れがでてきたのか体が重く感じるようになってきた。
それを見た大和は援護に行きたかったが、彼も木に隠れるのに精一杯であった。
宮本は、疲れが残っている足を無理に立ち上げて、挟み撃ちにされる前に移動を開始した。敵も彼の移動についていく形で後を追う。宮本はレーザー光線を回避しつつ、移動をやめない。
やばい、足に疲れが来てるるな。これ以上動けない。
宮本はついに走るのをやめてしまった。腰を下ろしてしまい、敵の的になってしまった。
負ける。本当に負ける。ここまで頑張ったのにな。くやしい。もっと戦いたかった。
宮本は腰を下ろしたまま、戦う気力が失せてしまった。それを見た敵の生徒たちは銃口を彼に向けた。
大和、お前一人でも頑張ってくれ
宮本は負ける事を覚悟し、倒されるのを待った。すると、レーザー光線が敵に当たり、敵が一人倒された。しかも、レーザー光線は次から次へと飛んできて、敵を一掃し始めた。そのことに気がついた敵の生徒たちは後退し始めた。
誰が助けてくれたんだ? レーザー光線の数から複数であることは分かるが、人影がない。しかも、一定方向からの攻撃に見える。
敵が全員後退し終ると、宮本は立ち上がり、辺りを見渡して敵がいないことを確認すると、大和の所に向かった。
「おい、大和大丈夫か?」
宮本は、大和の体を起こすのを手伝った。
「大丈夫だけど、さっきのお前じゃないよな」
大和はかなり疲れた顔をしながら聞いてきた。
「もちろん俺じゃないよ。」
「じゃあ、誰だよ?」
二人は辺りを見渡したが、誰もいないようだったが、すぐに誰だか判明した。
「皆、さっきはごめん」
尾崎が木の陰から出てきて二人に向かって歩いてきた。
「尾崎、逃げたんじゃなかったのかよ」
大和が驚いた顔をしながら言った。
「いや、最初は本気で逃げ出そうとしたんだけど、途中でシークレットアイテムって書かれたボックスを見つけて調べたらこれが出てきたんだ」
尾崎は両手で抱えている大きな武器を二人に見せた。
「尾崎、何この武器?」
大和が興奮しながら、その武器について聞いてきた。
「これはレーザーガトリングって言って生徒が使ってるレーザー銃より早く連射できるんだ。さっきの連射すごかったろ」
宮本は先ほどの連続で飛んでくるレーザー光線の謎が分かった。
「そんなのどこで見つけたんだよ」
「林の向こう側にあったのを偶然見つけたんだ」
尾崎はその方向を指で指しながら答えた。
「とにかく、良かったよ。尾崎が帰ってきてくれて。それにこの武器があれば少しは長生きできそうだし」
宮本は尾崎が持っているガトリングキャノンを見ながら言った。
「本当だぜ。これで帰ってこなかったら、放課後お前をいじめてるところだったぜ」
大和が嘘か本当か分からない言い方で言ったので、宮本は少しだけ怖くなった。
尾崎は少し照れながら笑い、大和も尾崎の肩を叩きながら笑った。




