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07 反逆の刃

執事…想刃は、倉庫で見つけたあるモノを手に…


館の主に反逆の刃を突き立てる…



ではどうぞ

美鈴とのスペルカードバトルから1日…


想刃は今日も朝からガーデンの水やりをやっていた。


右眼の眼帯のガーゼが良く目立つ。


と、水やりをしている想刃に何者かが近づいてきた。


想刃は気配に気付き、気配の方向を振り向く。


振り向いた先に居たのは 下顎から頭に掛けて縦に包帯を巻いている美鈴の姿だった。


「おはようございます」


美鈴は包帯を巻く程の怪我をした気がしないくらいに笑顔で挨拶をする。


「はぁ…おはようございます」


想刃は大丈夫か? と心配になりながらも会釈で挨拶をする。


「あの、大丈夫ですか?」


やはり気になった想刃は美鈴に包帯の事を訊いた。


「なに、このくらいの怪我なんてどうって事無いで s…」


自分の頬を叩いたその瞬間、美鈴の顎から何かが外れた音がした。


「あッ…⁉ えぇ あ! がが…はぁぁッ!」


「本当に大丈夫なんですか…?」


「ふひはへぇん…へんへんはへへふぅ…(すみませぇん…全然ダメですぅ…)」


何を言ってるか全くわからないが、どうやら顎が外れた様子。何となくだが想刃は美鈴が何を言ってるかわかったようだ。


「後は僕に任せて、今日は休んでください」


「ふひはへん…」


想刃は溜め息を吐きながら美鈴に休むよう言い、美鈴は申し訳無さそうに館内に戻って行った。


それからまた想刃は溜め息を吐いた。


ーーそんな事より、早くこんな所から出たいものだ。


溜め息直後に彼はふとそう思い、水やりを終えた。




それから10分後の事だった…



想刃はメイド長 咲夜の命令で紅魔館内にある倉庫へ向かっていた。


命令は勿論倉庫の“掃除と整理整頓”だ。


想刃は倉庫の鍵を開け、戸を開いた。


「ゲホッ! 埃っぽいな…」


咳込みながら自身の顔の前を手で煽る想刃。


ーーさて、始めるか。


想刃は手袋を着け、布をマスクのように口元に巻くと、倉庫の中へと入って行った。


そして手当たり次第に物を退かし、埃を箒で掃く。


と、暫らく掃除していた時、想刃の目にある物が入った。


それは倉庫の隅にひっそりと置かれた埃を被った何か。


ーー何だ一体?


想刃は恐る恐る近づいてその何かを手に取る。


見たところ剣のようだ。しかし、錆が酷く、刃も欠けてる為、明らかに使い物にならない。


「錆びた剣か。使えないな」


想刃自身も 紅魔館から抜け出すのに使えないか と思っていたが、ものの数秒で使えない物と判断した。


そして錆びた剣を捨てようと右手で握り部分に触れた。その瞬間…



キィーーーッ!!!



「なッ…!!?」


突如錆びた剣から光が放たれ、錆がボロボロと剥がれていく。


ーー何だ一体⁉


想刃は剣のグリップ部分を握ったまま片方の手で眩い光を遮る。


暫らくすると光は止み、想刃は遮った手を退けた。



そしてその直後、想刃は今までに無い程驚愕した…



何故なら右手に持っている剣が綺麗な剣になっているからだ。


先ほどまでの埃だらけ錆だらけのボロボロの剣の姿は無い。


不思議に思った想刃は持ち上げ、剣の刀身を上に向ける。


確認したところ、先ほどまであった刃の欠けが見当たらない。寧ろ新品並みに煌びやかである。


特徴的な湾曲した刃…


何だこの剣ーー。


想刃はジックリと剣を見つめていた。


「何をしてるの?」


突然想刃の後ろから聞こえた声。主はメイド長の咲夜であった。


少々慌てながらも想刃は咲夜の方を向き、剣を背中に隠した。


「掃除です」


「後ろの手に何かあるのかしら」


「何も無いですよ」


「両手を見せなさい」


咲夜は想刃に両手見せるよう言った。


ーーまずい…このままでは剣を見られてまた“同じ惨事(こと)”になる。


想刃は刹那に思考を巡らせ考えた。そして出た答えは…


「…ほら、何もありませんよ」


想刃は両手を咲夜に見せた。

すると咲夜は腕を組んだ。


「サボらずちゃんとやるのよ」


そう言って、組んだ腕を解いて歩いて行った。


「……ふぅ」


想刃は深くも静かに溜め息を吐き、ズボンに入ってあった剣を手に取る。


実はあの時、背中に隠した剣をズボンの後ろ側にグリップ部分を深く入れたのだ。


想刃自身の身長も功を奏し、何とか剣を隠す事に成功した。


「とりあえず、何とかバレないようにどこかに隠して置くか」


その後、想刃は倉庫の掃除と整頓をあっという間に終わらせ、剣を持って倉庫を出て閉めた後に急いで紅魔館の図書館に向かった。


それから図書館の決して目に付かない隅に剣を突き刺し、剣に関する書物を探した。


暫らく探した後、漸く見つけたのが「全世界の剣大全集」であった。


ページを開いて探ると、様々な剣の情報が絵と共に載っていた。


と、暫し読んでいたら、さっきの剣が載っていた。


想刃はそれを静かに読んだ…


TALWARL(ターワル)…遥か東方より伝来する剣。湾曲した鋭い刃は凄まじい斬れ味を誇る。刃の形状により、扱いが困難だが、その威力は魔物を一撃で葬る…」


ーーなるほど、その強力な威力を持つ剣が今ここに存在してると言う事か。しかも俺の手に…


想刃は少しばかり考えた…


ーーひょっとしたら、俺の力と合わせればこんな場所から抜け出せるんじゃ…


そう思ったその瞬間、想刃は本を元に戻し、隅に突き刺しておいた剣、TALWARLを引き抜き、図書館を出た。


ある程度図書館から離れた後、廊下に誰も居ない事を確認し、目を瞑ってから壁に向かって剣を振り回す。


すると、振り回した分だけ壁に深い斬り傷が出来ていた。でも、想刃は壁から2m以上は離れていた。


一体何故なのか?


「やはりな、フランドールに殺されそうになった時、無意識的に俺が出した攻撃がフランドールを断ち切った。そして本当に意識が途絶える瞬間、俺の失くなった右眼に力が入った。この力さえあれば、紅魔館を抜け出せる。今すぐにでも」


そして剣を逆手に持ち、廊下を一歩歩んだ時、想刃は止まった。


「いや、せめて傷の一つ。いや、二つや三つじゃ足りない。どうせやるなら、100もの傷を与えてやる」


その言葉の直後、想刃は廊下を駆け出した。


向かう場所は勿論…



「レミリア…今すぐお前を倒してやる」






その頃、レミリアは朝食を終えた直後だった。

横にだだ長いテーブルでいつものようにティーカップに入っている紅茶を飲んでいた。


のんびりしている様子。だが、直後 何かの気配に気付く。


そして怪しく微笑んだ。


「咲夜、構えなさい。来るわよ、彼が」


「えっ? 彼?」


咲夜は誰が来るのか全くわからないが、レミリアはそれをわかっている様子。


そしてその直後…



バァーン



レミリアが居る部屋の扉が勢いよく開く。


扉を開いたのは想刃である。

彼が扉を蹴破り、ターワルを右手に持って今まさにレミリア達を倒そうとしている。


その表情は真剣そのもの。


「あなた、何のつもり? まさかお嬢様に逆らうつもりかしら」


重く想刃にそう言うと、咲夜が瞳を赤く染めてナイフを数本取り出す。


「逆らう? いや、どちらかと言うと殺しに掛かるつもりです」


想刃は無表情で皮肉気味に返す。

想刃はそのまま続けた。


「ハナから嫌だったんですよ、こんな気味の悪いところ働くのも居るのも。あんた達の存在もな。それと俺は一度 死に掛けた、レミリアお嬢様、あなたの妹にね。それ等 諸々全部含めて仕返しとして殺させていただく」


所々で口調が変わる想刃。これは彼が抑えてるモノが今にも溢れ出しそうだと言う事だ。


つまり彼が抑えてるモノとは“怒り”…



今にもその怒りが爆発しそうなのだ。



と、想刃の言葉に対しレミリアが嘲笑した。


「殺す? 吸血鬼であるこの私をか、ハハハハハッ! 笑わせるな、お前如きの人間に何が出来る。お前は私を殺す事は疎か、触れる事さえ侭ならないぞ」


そう、レミリアは吸血鬼と言う名の“人外”

人間の想刃と比べたら力も速さも全てが吸血鬼より遥かに劣る。闘いを挑むのは言うまでも無く無謀だ。


だが、想刃はニヒルに口元を緩ませて笑っていた…


「その口がいつまで叩けるか実物(みもの)だな。ところでこれが何だかわかるか? お前等」


想刃は右手の剣、ターワルを突き出した。


「ん? それは…TALWARL? お前、何故それを持っている。しかも完璧な形で。それは倉庫の中で錆びだらけ、刃欠けの状態で隠し置いてあった筈…何故完璧な状態で持っているんだ⁉」


レミリアは想刃に怒号を飛ばす。

それに対し想刃は冷静に返した。


「倉庫で掃除をしてた時、偶然見つけてな。俺が触れた瞬間に光が放たれて、気が付いたらこの状態だ」


「……嘘をつくな…そんなバカげた事が…」

「起こってんだよ、現に俺が持ってるモノは遥か東方より伝来した剣、ターワルだ。斬れ味も本物だ。何なら試すか? お前のその身体で」


想刃は至って余裕だった。


レミリアは恐れている。だがターワルなどでは無い。ターワルは刃が銀製で無く、扱いずらい。


斬れ味が凄まじい以外にこれと言ってあまり取り柄が無いのだ。


レミリアが恐れているのは想刃である。


想刃の何気ない余裕な姿が、ターワルを完全な状態で持っている彼が、何故か恐いのだ。


一体何を持ってして自分を倒そうとするのかーー。


そう レミリアは思ったのだ。


「お嬢様、ここは私が。反逆者を黙らせます」


咲夜がナイフを構えてレミリアの前に立つ。そして勢いよく想刃に向かって走り出した。


「お嬢様に逆らった者の末路を今ここで教えてあげる…! 奇術『エターナルミーク』!」


咲夜はスペルカードを唱えると、腰辺りからナイフを指一杯に挟んで持ち、高速でナイフを連続で大量に投げる。


想刃に向かってばら撒かれるナイフに人の通れる隙間は見当たらない。


ーーふんっ、そのまま何も出来ず私のナイフの餌食となるがいい!


その瞬間…



バキィン



ガラスが割れるような音が部屋中に響き渡る。

それは咲夜の投げたナイフが全て真っ二つに断たれた音だった。


その時、一瞬にして咲夜の余裕の表情も変わった。


「な…んだとッ…⁉」


状況が飲み込めない咲夜に想刃が歩み寄る。


「これが俺の能力(ちから)だ」


そう言葉を発した直後、想刃は目にも止まらぬ速さで咲夜の顔面へ蹴りを放った。


蹴り飛ばされた咲夜はレミリアの横を高速で通過し、真後ろの壁に強く直撃した。


レミリアは咲夜が通り過ぎた後に素早く咲夜の方向を振り向く。


だがレミリアはただ茫然としているだけ。


すると咲夜は蹴られた影響で鼻血を出しながらもナイフを構え、想刃に向かって駆け出し、スペルカードを取り出す。


その瞬間、レミリアが咲夜に声を掛ける。


「待って咲夜!!!」


更にその瞬間であった…



シャン



想刃が動き出したと同時に何かが綺麗に切れた音がした。


「あ…あぁッ…あッ……」


咲夜が目を見開いて佇み、小刻みに震えている。


レミリアは咲夜の下に目を向けた。

そして直ぐに理解した…理解してしまった。



咲夜は腹部を斬られていた と…



咲夜の足下には斬れた腹部から垂れた血と内臓があった。


何が起こったかもわからない咲夜は見下ろして自分の切れた腹と垂れた血と内臓を見た後、ゆっくりレミリアの方を向いて…


「れ…レミリア…お…おッ…お嬢…さ ま゛…!」


息を絞り出すようにレミリアの名前を口にして、崩れるように膝からうつ伏せに倒れた。


レミリアが想刃の方を見ると、咲夜の真後ろに立っていて、右手のターワルの刃には血が滴っていた。


いつの間にと思ってしまうほどの速さで想刃は咲夜を斬ったのだ。


速過ぎる、あまりにも速過ぎるーー。


だがレミリアの想刃に対する見方は既に“恐怖”から“怒り”に変わっていた。


「私は人間が死んでもどうとも思わない。だからお前を殺す。殺すと言ったら殺す。その身体をバラバラに引き裂いて、髪の毛一本残さず消してやる」


レミリアの瞳は真紅の色を放ち、全身から凄まじい紅い殺気(オーラ)を放つ。


だが想刃はレミリアの殺気に怯えるどころか、自分から向かって行く。


「手下を殺されて悔しいか、俺を殺したいか。掛かって来い、俺もあんたにはムカついてるんだ」


想刃は剣の尖端をレミリアに向ける。


直後、レミリアは想刃に向かって高速で駆ける。


ところが、想刃はレミリアの動きに見事反応し、身体を動かしてかわす。


それだけでなく、レミリアが自身を通り過ぎる直前に背中に肘の一撃を叩き込んだ。


想刃の感覚が人間を超えている。


肘の一撃を背中に見舞われたレミリアは進んだベクトルの勢いのままに床を激しくバウンドする。


だがレミリアは直ぐに体勢を立て直した。

でも想刃には向かって行かず、そのままその場で踏み止まる。


「驚いたよ、少々お前を舐めてたようだ。だがこっから少しお前に合わせていこう。そしてお前の限界を見つけたらその時点でバラバラにしてブチ殺す」


そう言葉を口にした直後、高速で床を連続で飛び跳ねながら想人に接近する。


レミリアの動きを読んだ想刃はレミリアに向けてターワルを横に振るう。


が、ターワルを振り切った直後、レミリアが消えた。


「残像だ」


ふとレミリアの声が自分の足下から聞こえ、反射的に身体を後ろに反らす。


想刃が身体を反らした瞬間、レミリアが先ほどまで自分の頭があった位置に向かって飛んでいた。


もしも反射的に身体を反らさなかったら今頃はレミリアが想刃の頭を貫いていただろう。


身体を反らした想刃は両手を床に付き、バック転をして立ち上がる。


だがレミリアは動きを止めず、間髪入れずに壁を蹴ってスクリュー回転をしながら再び想刃に向かって高速で突進する。


想刃は後ろからの殺気を感じ取り、タイミングを読んで身体を半転させながらターワルを縦に振る。


するとレミリアは消え、左真横に移動していた。


想刃はレミリアの位置を読み、横に270度回転してターワルを横に振る。


そしてレミリアはまた消え、また想刃の真後ろに回った。


またレミリアの位置を読み、想刃は半転しつつターワルを思い切り縦に振り切る。


振り切った瞬間 床に深い斬傷が付いた。

でもレミリアは消えていた。


「どうした、私はここだ」


背後から気配を感じた想刃は上半身のバネを使い、零距離の狙い澄ました剣突きを繰り出した。


ところが…


「なッ…⁉」


また消えていた。


今度は頭上から気配を感じる…


「まだまだ限界では無いだろ? 私に対抗してみろ!」


想刃の頭の上に立つレミリアは宙返りをしながら想刃の後頭部に蹴りを繰り出した。


蹴りを受けた想刃は顔から前倒れに吹っ飛ぶ。

そして床に上半身からぶつかって勢いのまま転がる。


転がった想刃は直ぐに立ち上がり、レミリアを睨み付ける。


レミリアは不気味な笑みを浮かべ出す。


「どうした人間? 私を倒すんじゃ無かったのか? 所詮はその程度、飛ぶ事も出来ないただの人間が、吸血鬼に敵う筈など無いのだ!」


レミリアはそう言うと、高く飛び上がって自身の後ろの壁に張り付き、スペルカードを取り出した。


「夜符『バッドレディスクランブル』!」


唱えた直後、壁を強く蹴って猛烈なスクリュー回転をしながら超速で想刃に突進する。


想刃はターワルを強く握り、レミリアに向かって跳ぶ。


そして…



ドガァッ



強く何かが当たる音がした。


想刃が吹っ飛ばされていた。

想刃は錐揉み状に回転をして床に落下した。


レミリアは既に着地をしていた。


するとレミリアは立ち上がり、想刃に歩いて近づいた。


「今からお前をバラバラに出来ると思うと嬉しくてたまらないよ」


そう言って右手を振り上げた。その時…



「誰がそう易々とてめぇに殺られるかよ…!」



仰向けに倒れている想刃が突然 目を開けてレミリアに言葉を吐く。


驚愕したレミリア。突如レミリアの頬から全身が切れ出す。


「うフゥ゛ッ! アァッ…!」


足が切れた瞬間、膝を付けて痛がるレミリア。


その隙に想刃が立ち上がった。


「貴様…一体何をした!!」


レミリアが想刃に怒号を放って問う。


想刃はレミリアを見下ろして言った。


「俺とお前がぶつかる瞬間、俺は僅かに錐揉み状に一回転した。その瞬間、俺の力でターワルで斬った数を無数に増やした。ただそれだけだ。お前の突進は俺の横腹に少し当たっただけだ」


「なるほど、どうりで当たった感触があまり無かったワケだ…それとお前の能力…気になるな」


フラつきながらレミリアは立ち上がり、想刃に訊く。


「お前が立てなくなったら教えてやる」


「フン、まあいい。どうせお前はここで私に殺されるんだからな! 神術『吸血鬼幻想』!」


レミリアはスペルカードを唱え、真っ正面から両後ろ斜めまでの範囲に大玉弾幕を数個ずつ撃ち出し、壁に反射させる。


だが……レミリアは目を疑う光景を目の当たりにした。



想刃に近づいた弾が全て真っ二つに切れて消えていく。



途中から出現した紅い弾幕でさえも想刃の近くにあった弾は全て真っ二つになって消える。


それから想刃はレミリアに向かって歩き始めた。


「フッ…偶然だ、今度こそ! 紅符『スカーレットマイスタ』!」


レミリアは少々焦ったが、再びスペルカードを唱え、大玉、中、小と言った様々な弾を大量に振り撒く。


ところが振り撒かれた弾 全てが想刃の目の前で真っ二つに切れて消えていく。


ーー何だ…⁉ 何なんだ一体⁉


さすがにもう焦りが隠せないレミリア。


「う…うわァッ! 神槍『スピア・ザ・グングニル』!」


レミリアは片手に紅いエネルギーを集束させ、巨大な槍として形成して想刃に目掛けて投げ飛ばす。


それでもレミリアの放った槍は想刃の目の前で容易く断たれてしまった。


「閻閣『孤高の朱炎刃』…」


想刃がそっと呟くと、ターワルの刀身が朱い炎を纏い出す。


想刃の躊躇無い姿に後退るレミリア。そしてまたスペルカードを取り出す。


「来るなッ! 紅魔『スカーレットデビル』!」


レミリアは自分の周りにエネルギーを展開し、真上まで広げてエネルギーシールドのように放出し続ける。


だが、レミリアがエネルギーを展開したのも束の間、直ぐにエネルギーが裂けてしまった。


そしてレミリアの周りからエネルギーが消えた直後、レミリアの目には 右手に持ったターワルを左上に振り切ってる想刃が映っていた。


レミリアの目に想刃が見えた瞬間、突然黒いモノがレミリアの身体にぶつかり切り裂く。


「な、何…?」


「飛燕『烏の傷翔』…」


想刃がまたそっと呟いた瞬間、レミリアに向かってターワルを連続で思い切り振って空を斬る。


振って空を斬れば斬るほど黒い剣気がターワルから放たれ、レミリアを切り裂いていく。


そして黒い剣気を散々くらったレミリアは床に叩きつけられるように落下した。


と、落下したレミリアに既に近づいていた想刃。


「そろそろ訊いとくか? 俺の力を」


想刃が倒れているレミリアを見下ろして言う。


「そんな余裕は無いが、とりあえずお聞かせ願おうか…」


レミリアが答えると、想刃はターワルを持ち手部分で回して話し出した。


「俺の力は全てを断つ。例えどんな力であってもな。あんた等の弾幕ごっこ(ルール)で言うなら、俺の力は“全てを断ち切る程度の能力”になるのだろう」


「全てを…断ち切る⁈」


「所詮は程度でしか考えて無えって事か、ふざけた頭してんなあんた等。でもそんな事はどうだっていい」


「やる事は決まってる…わよね…?」



「てめぇを殺す」



想刃がそう言葉を発した直後、縮地で駆け抜け、その勢いでレミリアを真上に吹き飛ばす。


そしてターワルを右手でしっかり握り、レミリアに向かって高く跳んだ。



瞬間 想刃は壁を蹴って何度も超速で大量の残像を残しながらレミリアに交差する。



最後にレミリアの真後ろで想刃がターワルを振り切った時…



ヴァァシュッ



凄まじい勢いでレミリアの全身が切り裂かれ、レミリアは大量の血を撒き散らした。


「 『朱き三日月』…お前の象徴を斬り裂く意味だ」


想刃が言葉を吐いた直後、レミリアは床に落下し、自身の血に覆われた。


ターワルに付着した血を振って払い、逆手に持って出口に向かって歩き出した。


ふと気づいた。

想刃が斬って死んだと思われる咲夜が居ない。


血はあるが体が消えている。


ーーフン、どうでもいい。


だが想刃は気にせず、部屋から出て行った。


そして玄関を開けて、外に出て門番不在の門を抜け、紅魔館から抜け出した。


想刃は深く深呼吸をした。


「……なかなか空気がうまいな」


と、そこへ白黒服の女が箒に乗ってやって来た。

例の本泥棒、霧雨 魔理沙だ。


「おっ? お前は確か…レミリアとこの執事だったか。名前は…ん~忘れた! ところで門外に出てどした? また私と弾幕ごっこでもするか!」


魔理沙が想刃に話し掛けるも、想刃はチラッと魔理沙を見て素通りしてしまった。


「あ、おい! 無視すんなよ!」


魔理沙は本来の目的も忘れ、想刃を追い掛けて行った。








続く

その後…




レミリアは自分の血の上で天井を見つめてた。


「少し本気出したのに、また人間に負けちゃったわ」


レミリアは手に着いた自分の血を払い、頬の血を手で拭き取って眺める。


「お嬢様! レミリアお嬢様!」


突然部屋の入り口から咲夜が現れた。


「咲夜…咲夜? 何故、生きていたの?」


「はい、実は斬られた後、倒れましたが、実はまだ意識はありました。でも、いつこの命が尽きるかと思ってました。でもそこへ、パチュリー様と小悪魔が現れて、私を部屋から出してから魔法で傷を治してくれました」


「そう…パチェには後でお礼を言っとかないとね」


レミリアは目を瞑った。


「お嬢様…大丈夫ですか?」


咲夜がレミリアを心配する。


「良いのよ、もう少しこのままにさせて。紅白や白黒と同じ、いいえ、それ以上に愉しめたわ。それに自分の血で自分を紅く染めるのも悪く無いし、疲れたからこのまま休んでいたいわ」


レミリアは両手を組み、胸辺りに置いて眠り出した。


「……わかりました。また様子を見に来ますね」


咲夜は微笑みながらそっと部屋を出て行った。



後日談終了!



また次回!

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