最後のハイタッチ
「じゃぁ、また明日な!」
「おう!また明日!」
サッカーの練習が終わり、一緒に帰っていた孝志と別れのハイタッチをした
俺、西島凉介と孝志は、今年度で西中学校2年になった。
俺はいつも通り自転車を再びこぎはじめた
キキイィィィィィッ…
俺は不意にブレーキを踏んだ
「危ないなぁ…」
猛スピードで走っていた俺の前を子猫が通りかかったのだ
「はぁ…」
その時、ふと孝志の顔が浮かんだ
しかし、その時俺はまったく気にしないで前進した
*次の日*
「おはようございます」
いつも通り、先生が朝の読書中に教室に入って来た
「ちょっと、読書をやめてください」
いつもは見せない先生の表情を見たクラスメートは、速やかに本を置いた
「…増田孝志くんが、昨日車と接触事故がありました」
…!?
孝志が!?
「その後、すぐ病院に運ばれましたが、今日の午前三時に…」
…いやだ…
「死亡が確認されました」
……うそ…だろ……
昨日まで一緒に笑ってたのに
昨日まで一緒にサッカーしてたのに
…そんなの…
「西島くん、この後会議室に来てください」
…俺…何も知らねぇよ…
「その日、君は増田くんと一緒に帰っていたんだよね?事故のことは知らなかったのかい?」
会議室に行くと、警察に事情を聞かれた
「はい、今まで全く知りませんでした」
「そうか…」
「孝志になにがあったんですか!?俺…」
若干取り乱す俺の背中を先生がさする
「…増田くんは、ひき逃げされたと思われるんだ」
「……」
「血痕が、約10mほど続いていたんだ」
その話を聞いた俺は、頭が真っ白になって、学校を早退した
家に着き、自分の部屋に鞄を置いた
母も父も仕事で、部屋はシーンと静まり返っていた
その時、カタンと音を立てて何かが倒れた
それは、サッカーの大会で優勝したときの写真
「…俺が…もう少し…もう少し孝志の方に目線をやっていれば…こんなことには…」
皮肉にも、写真の孝志は、こちらも頬が緩むほどのいい顔をして笑っていた
「…孝志…お前がいなきゃ…俺…サッカーなんかできないよ…」
「…そんなことねぇよ」
空耳かと思った。
確かに今、孝志の声がこの部屋に響いたのだった
「…孝志…!?」
「よっ!凉介♪」
声は確かに聞こえる
ここに…孝志がいる!
「たっ…孝志!お前…なんで死んじまうんだよ!」
「あ〜…ごめんごめん!なんっか…耐えられなくてさぁ〜」
「なにがあったんだよ!」
「…猫だよ」
徐々に、うっすらと孝志のシルエットが見えて来た気がした
「猫…?」
「子猫が俺の前を急に横切ったんだ」
どこかで…
そうだ、俺も昨日、子猫が目の前を通ったんだ
「ひかないように急ブレーキをかけたら、逆に俺がひかれちゃった!」
「孝志…」
「…凉介…」
孝志が明確に見えるようになった時、彼の顔は写真とは裏腹に、寂しそうな顔をしていた
「俺…もっと凉介と一緒にサッカーしたかったな…」
「孝志…」
「俺な、正直何回か、凉介なんかサッカー辞めればいいのにって思ってた」
孝志の言葉に一瞬凍り付く
「悔しかったんだ、勝てない自分にイライラして、凉介に八つ当たりしてた。でも、その写真の大会で思ったんだ。俺は凉介がいないとサッカーできないんだって」
「俺もだよ孝志!俺だって孝志がいないと…」
「違う」
「…え…?」
孝志は、部屋にあったサッカーボールを手にとった
「だって、凉介、強いじゃん!俺は凉介がいないとゴールに近づくことすらできない。でも、凉介は違う。誰といたって同じ力を発揮できるよ!」
その言葉は、俺の心にぐさりと刺さった
孝志が俺を必要としていないように聞こえたんだ
「…そうじゃないんだよ孝志…」
「なにが?」
「…他のやつじゃダメなんだよ…孝志じゃないとダメなんだよ!一緒に小学生のときからやってるお前じゃなきゃ!一緒に8年間一緒に走ってきたお前じゃなきゃ意味がないんだよ!こうやって一緒に孝志と笑えなきゃ意味がないんだよ!!!!」
さっき倒れた写真を孝志に向けた時には、また孝志の姿がはっきり見えなくなってきた
「…おぃ…孝志…」
「…あ…やばいなぁ…時間無いや」
「孝志…」
「じゃぁな!凉介」
「孝志!」
「俺、どこ行っても凉介のこと、親友だって思ってていいか?」
「もちろんだよ!!!」
どんどん薄れていく孝志
「ありがとう…」
「孝志…」
「またな!」
「……おう!」
俺たちはハイタッチした。
それは昨日のハイタッチよりも、深い意味を持つハイタッチになった。
一生忘れない…ハイタッチになった。
ちょっと書いててわけわかんなくなったですますです。