表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

女は死にかけていた。


身体中のいたるところに大小の傷が刻まれ、血は、もはや生命を維持するのが難しい程に失われていた。

特に致命傷なのは、二の腕の半ばから切断された左手と、剣に貫かれた腹だ。

こうして意識を保っていられるのが不思議なくらいで、もはや動く事も叶わない。


自分は死ぬ。

それは紛れもない事実。


もはや周りに味方はなく、あるのは自分が屠った死体のみ。今の状況を考えれば、助けは期待するだけ無駄だろう。

多くの命をこの手で摘み取ってきたのだ。それが今回は自分が摘み取られる立場になっただけのこと。

こうなればもう、神の加護とやらも自分救う事は出来ないだろう。いや、あれは呪いか……。もうすぐあの忌々しい声を聞かないで済むかと思うと清々する。


「……ふ…っ…」


思わず笑いがこみ上げた。

同時に、涙が頬を流れた。


最後に想うのは、―――――のこと。

愛する私の半身。

きっと自分の死は、―――――を苦しめるだろう。



声が、聞こえた。

懐かしい声。

愛しい半身の声。

ずっとずっと聞きたかった。


……ああ、でも、そんな。


その声に宿るのは、身を引き裂かれるような絶望と……狂気で。


女は何かを言おうとした。


しかし、それが発せられることはなかった。


その瞬間、闇が世界を覆った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ