ホントのキモチ
作者初の『恋愛』のジャンル+初の『短編』なので、少し変かも知れませんが作者的には良くできたつもりです。
私は素直になれない。私はホントのキモチを伝える事が出来ない。何でって、アイツは私を『女の子』としては見ないから。私はこんなにアイツの事を思っているのに、アイツは私を何とも思ってないから。
まったく!あいつは!!ほんとにまったく!!!
身長体重ともに平均位で髪はロング、顔は美人とは行かないけどカワイイ?くらいの私、矢代美観はイライラしていた。それは何故かと言うと、
「よう美観。どうした?忘れものでもしたか?」
この馬鹿、野田奏太のせいだ。コイツは私と同じ高校二年生で、お隣さん、要するに幼馴染だ。そして不覚にも私の片思いの相手である。
そしてコイツはやたらモテる。端整な顔に面倒見の良い性格、勉強スポーツどちらも抜群でクラスの中心的人物。まあ、これでモテないほうがおかしいんだけど……。したがってよくコイツは告白される。今日も、教室に呼びだされてた。それが、無性に私をイライラさせた。
「何だよ。シカトか?」
コイツは今まで一度も告白を受けたことが無い。それは、好きな娘がいるからその娘以外興味が無いってことらしい。だから誰にでも等しく接している。そしてその『好きな娘』は私じゃない。その娘を知ってるわけじゃないけど、私とコイツは幼馴染、つまり家族の様なもの。だからアイツは私を『女の子』としてじゃなくて『幼馴染』として見ている。したがって私はコイツの恋愛対象ではない。
私はこんなにもコイツを意識しているのにコイツはどこ吹く風で全く私を意識したりしない。
ああ腹が立つ!この馬鹿!!
「お~い~美観さん~~。どうしました~?現実逃避ですか~?」
「で、何か用?」
「おお~やっと俺の存在が認められた」
「用は?」
「お前が寂しそうだから一緒に帰ってやろう」
えっへん、と胸を張って答えるこの馬鹿。何かそれがコイツらしくてちょっと笑った。
「あはは、良いわよ」
軽く笑って誤魔化したけど、嬉しい。凄く嬉しい。
コイツと一緒に帰るのなんて中学生以来だ。
「なあ、美観」
「何よ」
それまで無言で歩いていた奏太が突然口を開いた。しかも、いつもと違って真剣な口調だ。
「俺にはさ、好きなヤツがいるって美観には言ったよな?」
「うん」
「俺、そいつに告白しようと思うんだ」
その瞬間、世界が終わった様な気がした。少なくとも、私の世界は終わった。今までは、コイツに好きな人がいても、私は幼馴染として隣にいられた。でも、彼女が出来たらもう私はコイツの隣にいられない。
きっと告白は成功するだろう。そして、それからはコイツの隣には私の代わりに彼女がいる。
「だから、お前はどんな告白をされたら嬉しい?」
私は心の中で叫んだ。そんな事言わないで!嘘だって言って!!
私は泣きそうになった。でも、コイツの前では泣くわけにはいかない。泣いたりしたらコイツは心配するだろうそして、何で私が泣いたのかに気付いて、告白をためらってしまうはずだ。私はコイツに幸せになってほしい。心からそう思う。もちろんコイツが私と一緒にいて、それで幸せならそれがいい。でも、コイツは私といるのより好きな人といる方が幸せなんだ。だから私は泣けない。
「そうだね……突然抱きしめられて耳元で愛の言葉を囁かれたら嬉しい………かな?」
それだけ言って私は走って奏太から逃げた。無我夢中で逃げた。もう我慢できなかった。我慢しようと思っても涙が溢れてきた。
私は、気付くと公園のベンチで泣いていた。周りには誰もいなかったから、私は思いっきり泣いた。目が腫れても、涙が止まることはなかった。
「美観!」
「………」
「どうしたんだよ!?突然飛び」
「アンタのせいよ!!!」
コイツの言葉を遮り、叫んだ。
もうコイツのためとか関係ない!全部叫んでやる!!!
「アンタがそんなに優しいからじゃない!!ちゃんと私じゃない好きな子がいるのに!
アンタは私を『幼馴染』としてじゃなく『女の子』として見た事がある!!?ないでしょ!私はこんなにアンタが気になって気になってしょうがなくて!アンタが告白されるたびに怖くてたまらなかったのに!!」
「美観…それって」
「見てよ私を……『幼馴染』の私じゃなくて、『女の子』の私を。告白なんかしないで私とずっと…ずっと一緒にいてよぉ」
最後のはワガママだ。ただ私がそうなってほしいと望んだだけ。コイツの事を何も考えていない。でも、それは同時に私の本心だ。コイツといたい。コイツとずっと一緒に、死ぬまでずっと一緒でいたい。
でも、コイツはそんな事望んでいないだろう。
「ごめん、それはできない」
『それ』って何よ。私を『女の子』として見る事?告白をしない事?ずっと一緒にいる事?
そんな事を考えていた私の体が、不意に腕に包まれた。私が「え!?」と声をあげる前に耳元で何かをささやかれた。
「何て………言ったの?」
顔を上げ、涙も拭かずに私は尋ねた。と言うかこの状況は………
「何だよ。2度も言わせるなんてお前は言わなかったぞ。……えっと、その………好き。好きだ。大好きだ。愛してる!」
「ひぇ?どどどど…どううゆう事?」
たぶん、いや確実に今の私は耳まで真っ赤だろう。顔が熱い。状況が理解できない。
「だから、俺が好きな娘ってのは……お前で………ずっと好きだったんだよ!
それにな!俺はお前のことを『幼馴染』として見てたのなんて小学生までで俺はお前をずっと1人の『女の子』として見てたんだよ!!」
コイツの顔も真っ赤だ。でもそんな事がどうでも良くなる位に私は嬉しかった。コイツが私と同じ気持ちだったことが、これからも一緒にいれる事が、コイツの彼女になれる事が。
「何恥ずかしい事言ってんのよ」
「お前は?俺の事どう思ってるんだ?」
今さっき聞いたくせに。………いや、好きとは言っていないか。と言うか、そんな真剣な顔で見つめないでよ。
「アンタなんか、アンタなんか……………大好きよ」
それが初めて言った私のホントのキモチ。
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