隠れ家レストラン まんまと戦場に行かされた件スピンアウト 散文詩
因幡姉妹との出会い まんまと戦場に行かされた件 抜粋
ドラマを詩のように書いて能の幽玄ぽい世界を作りました。散文詩として発表します。
因幡姉妹が隠れ家レストランに現れるシーンです。
これで、興味が出たら本編もお楽しみください。
ちょっと前までの昼の光が残る
うっすらと白く見えていた月が
日が海に隠れていくにつれて
黒い虚空を背負って輝きはじめる
水面にもすっかり満ち満ちた丸い影を落としている。
その周りで
西にある一番星以外の星も
我も我もと瞬きだし
まごうこと無き日本の秋の空が
主張し始める。
その涼しさを肌に感じるようになると
他の感覚も鋭くなってくる。
さっきまでさほど大きく聞こえなかった波の打ち寄せる音さえが腹に響くように聞こえ始める。
空には雁
浜には夕映えに
キラキラ光る波と
追いつ追われつする千鳥
その小さな鳥が群れとなって
波の上を右へ左へ飛ぶ姿
そんな細かい有様さえも見えてくる
幻想的な世界。
鎌倉の頃も、奈良や平安、そのさらに昔も日本人は同じ景色を見ていたに違いないと思い。目の前の過去に何も疑いなないという錯覚に陥ってしまうものだ。
八十島も目の前に見ている過去を「見ているのは○○の時代の姿」ですよと言われれば「そうか」と信じてしまうだろう。
それが仮想現実 Virtual Realty というもの。
いわば昔話を絵巻物で読んでいるかのような情景である。
そういうわけで、作者は古くさい比喩や表現を用いて話を進めようとしている。
もうあと少しだけお付き合いください。
煌々と輝く秋の名月
その光の下
須磨の浜辺の松林の上に
さぁーさぁーと通り雨が降り
松を揺らす潮風が吹きます
月の光の中の雨と風
その幻想的な雨風がすっと止むと
月光に染み出すように現れたのは
夕霧が虹色に光を返す橋
その下に細い砂の露路が銀に光る
そこにそんな道があったのでしょうか
幻が作り出した道かも知れません
そこに日本画から出て来たような
若く美しい女がふたり
こちらのほうに
やって来るではありませんか
「オーナーがお見えになったようです」
と魔女、もとい奥山紅葉。
彼女の美しさは本物だと作者も思う。
この絶景の異次元にいるに相応しい。
だが、今現れたふたりは少し異なる。
ふたりこそがこの異次元空間の主人であり異次元存在の理由なのだから。
砂地の露路の上をやって来たのは、ビルのオーナーと呼ぶに相応しい大人の女、、、ではなかった。少女が大人の女を演じているような幼さと妖しさが漂う姉妹だった。




