第7章 本当の気持ちは?
「……で、どうなったの?」
部屋のベッドにダイブしながら、私はさやかに電話をかけていた。
この前の一部始終を話し終えると、受話器の向こうでさやかが吹き出す気配がした。
『へー、期待を裏切らないなあ。倒れ込んで顔が至近距離? しかも花沢くんが「思ったより軽い」なんて、少女漫画のヒーローみたいなこと言ったんだ!』
「笑い事じゃないってば! 気まずすぎて、今日はおはようもまともに言えなかったんだから……」
『いいじゃない、意識し合ってる証拠だし。花沢くんかっこいいし普通に性格もいいし、いいじゃない?ちょっと山下くんにも教えてあげよっと』
「ちょっと、変なこと言わないでよ!そりゃいいやつだとは思うけどさあ、ずっと仲良く友達してたわけだし今更そんなっていうか、と、とにかく山下くんにはってさやか?」
私の制止も虚しく、さやかは最後適当にごまかして楽しそうに電話を切った。
その頃、放課後の部室棟。
山下は、隣で黙々と靴の紐を結び直している花沢の横顔を盗み見た。
どこか上の空で、指先の動きがいつもより硬い。
「……なあ、花沢」
「……あ? なんだよ」
「佐倉と何かあったのか?」
山下の問いに、花沢の肩が一瞬ビクッと跳ねた。
「……別に、何もねーよ」
「ほんとか? さやかがさ、佐倉が色々大変だって心配してたぞ」
「……あいつが勝手にテンパってるだけだろ。……ただ、ちょっとぶつかっただけだ」
花沢はぶっきらぼうに言い捨てて立ち上がったが、その耳の端がうっすらと赤い。
(……ぶつかっただけで、そんな顔するかよ)
山下は心の中で苦笑した。
花沢自身は「ただの腐れ縁」だと言い張っているが、明らかに動揺が隠せていない。何年親友やってると思っているんだか。
「まあ、お前らがどうなろうと勝手だけどさ。……あんまりあいつを困らせんなよ?」
「……うるせーよ。わかってる」
花沢は綺麗にスリーポイントシュートを決めて、去っていった。山下はその背中を見送りながら、スマホを取り出す。
『案の定、自覚なし。でも耳真っ赤(笑)』
さやかへの報告を打ち込みながら、山下は「この二人は当分このままだろうな」と、ニヤニヤが止まらなかった。そして、もし自覚したらどうなってしまうのかと不安も感じつつ。




