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第10章  勉強会

昨晩急にさやかから勉強会を開くと言われてさやかの部屋で4人で勉強会をすることになった。4人で机を囲んでいるけれど、実質的にペンを動かしているのは私と花沢だけだ。

「ねえ山下くん、ここってさ」

「えー、俺もわかんね。……つーか、ここってこうだっけ?」

私の目の前でさやかと山下くんが一つの参考書を覗き込みながら肩を寄せ合っている。教えているのか、いちゃついているのか。手が触れ、肩がぶつかるたびに、山下くんが愛おしそうにさやかを見つめる。

「……ちょっと、山下くん!さやかから離れてよね!」

「いやに決まってるだろ、やっと手に入れたんだ。」

「……」

正直ちょっと呆れつつも、こんなに愛されるさやかが羨ましくもある。そんなことより本当に、

「わからないよー!この数式計算合わない!」

「……うるせーぞ、佐倉。集中しろ」

低い、落ち着いた声。見ると、花沢がすでに数式を解き終え、シャーペンを置いていた。彼は驚くほど集中が早く、解答スピードも異常だ。一度スイッチが入った時の彼は、周囲の雑音を完全にシャットアウトする。

「……もう終わったの? バケモノだー」

「お前が遅すぎるんだよ。……ほら、そこ。符号間違ってるぞ」

花沢が椅子を引き、私のノートを覗き込んできた。一気に距離が詰まる。彼の腕が私の肩に触れそうなほど近く、化学室聞いた「夜の豹変」という女子たちの噂が、唐突に脳内で再生された。

(……夜になったら、花沢くんは、そっと手を触れて唇に触れてそのあとは…)

この前聞いたばかりの「最後まで」という生々しい言葉。それが至近距離にある花沢の体温と重なり、私はパニックに陥った。

「……っ!」

私は慌ててノートを隠すように、ぎゅっと身を縮める。

「なんだよ、急に。……さっきから見てりゃ、怒ったり、焦ったり、今度は茹でダコみたいに赤くなって。お前、顔に出すぎだろ」

花沢くんが見たこともないような意地悪な笑みを浮かべて私を覗き込んでくる。ずっと笑ってる、失礼なやつ、

「……なんでもないし?」

「面白れーやつだなほんと、さては今、なんかヤラシーこと考えてただろ」

「は、はあぁ!? バカじゃないの!? 考えてないわよ、一ミリも!」

図星すぎて声が裏返った。そんなに顔に出てたのか、死にたすぎる。その時机に置かれた花沢のスマホが、短く震えた。画面には、知らない女子からの通知。『明日少し話せませんか?』という文字。花沢はそれを一瞥いちべつすると、面倒そうにスマホを裏返した。

「……無視かよ。モテる男は違うねぇ」

山下くんが冷やかすけれど、花沢は「関係ねーだろ、早く解け」と冷たくあしらう。

(連絡取り合う女の子なんていたんだ、)

「まあ、花沢多分今まで何人の女を泣かせたか計り知れねーからなあ。」

「佐倉花沢ってやっぱ学校でもずっと告白されまくってるのか?」

「え、あ、そりゃあね。よく紹介してほしいとか言われるし、まあ、モテない方がおかしいよね?」

山下くんの問いかけに答えはしたけどさっきのメールがなんか引っかかってちょっとモヤモヤしてしまったまま勉強会は終わった。

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