土曜日
三題噺もどき―はっぴゃくさん。
目を覚ますと、突然の光の攻撃に思わず布団にもぐりこんだ。
二階にある私の部屋は、家のつくりのせいで、小さな窓から毎朝、光が入り込んでくる。遮光カーテンを付けられるものならつけたいのだが、カーテンレールがついていないのだ。だから、突っ張り棒でのれんのようなモノをつけているだけになっていて、太陽の光なんて簡単に貫いてくる。
「……」
まだ視界の端に、光の残像が残っている。
いっそこのまま寝直そうかと思った。
けれど私はそういうのはあまり得意ではない。
「……」
起きたら、目が覚めてしまう。というか、脳内BGMがとてつもなくうるさい。コレのせいでたまに眠れなくなるのだから、たまったものじゃない。
―あの子は毎日二度寝してしまうと嘆いていたけれど。完璧に見えて抜けているところがあって可愛いなと思う。
「……」
部屋は冷え切って布団から出る気にもなれない。
悩んだすえ、布団にもぐったまま、手だけを伸ばし、スマホを手に取る。
その一瞬だけでも、鳥肌が立つくらいに空気が冷たい。
「……」
充電器につないだままだから、何かに引っかかったが、気にしない。さっさとこの冷えた空気から逃れたい。
この部屋には時計なんてものは置いていないので、時間を確認するにはスマホを見るしかない。まぁ、確認したところで今日は休みなのだけど。
「……」
暗い布団の中で、スマホを開くと、中途半端な数字が並んでいた。
けれど学校には確実に遅刻している時間。昼前と言われても過言ではない時間。
これがまだ昼過ぎでないだけマシだろう。
「……」
ふむ―と、なんとなく耳を澄ませてみる。
今日は土曜日。
他の家族は家に今いるのだろうか。
「……」
母は確か仕事のはずだが、妹はどうだろう。
部活があればいない時間だろうけれど。
……いなさそうだな。
「……」
家の中は、しんと、静まり返っている。
一階にあるリビングからのテレビの音も聞こえない。人が動くような気配も音も聞こえない。もしかしたら、一階の炬燵に潜っている可能性はあるが……。
「……」
家に誰かいようがいまいが、起きたのだからさっさと動けばいいのだけど。
どうにも動けないのは私だけではないと思いたい。
寒さもあるが、寝起きというのはそう簡単に動けるようなものではないだろう。学校や仕事があるならまだしも、今日の私は休みだ。
「……」
それにスマホはもう手元にある。
気付けば、充電器を抜いて、毛布の中でゴロゴロとしながらスマホをいじっていた。
そうしてしまえば、時間というのはあっという間に溶けるもので。
「……」
気付けば、もう昼過ぎになっていた。
時計はもう半日を過ぎたことを示し、時間を無駄にしたと言う虚無感のような罪悪感のようなよくわからないものが襲ってくる。
別に時間を無駄にしたところで、なにかあるわけでもないのに。
「……」
叶えたい夢があるわけでもなし。
進学の事を考えているわけでもなし。
勉強が好きなわけでもなし。
宿題が何か出ているわけでもなし。
「……、」
はぁ、と心の中で溜息をつきながら、スマホを適当に放り投げる。
潜っていた布団の中から、顔を出せば、もう陽光は刺してこない。
ただただ白い光だけが入り込み、カーテンの光れたほんの少しくらい部屋を申し訳程度に明るくしているだけ。
「……」
それにどうやら妹も帰ってきたようだ。
リビングでは何やらガタガタと物音が聞こえる。
「……」
私も起きて、動くとしよう。
別にすることなんて何もないけれど。
お題:時計・溶ける・夢




