3-32 魔石ゴミの処理終了、そして卒業式
キッカたちがビッグバボヌを倒し、息子さん改めポンちゃんと契約をしてから約半月後、僕たちはついにその時を迎えようとしていた。そう、魔石ゴミの処理という長期に渡ったお仕事もついに終わりを迎えようとしているのだ。
ポンちゃんと契約してからは、魔石の処理もますます捗った。これまで、ポンちゃんにやってもらっていた枝を木に育てる作業をキッカたちが自分でできるようになったしね。ただ、最初は慣れないせいか、うまくできないことも多くてポンちゃんにずいぶんフォローしてもらっていたけど。
まあでも、それは精霊魔法の練習のようなもので、修行の一環としてはちょうどよかったかもしれない。なんか、僕が思いつきで言った“修行”って言う言葉もここにきてそれらしくなってきたし、キッカたちもポンちゃんも力が入っていたし、良かったんじゃないかな。
そして、魔石ゴミもどんどん処理されていき、もう後は1すくい分と残りかすみたいなのが残っているだけ。それの処理を終えればミッション完了となる。
そして今日は、キッカたちとポンちゃんは僕と別行動で、朝早くから森に入っている。なんでも、最後はポンちゃんのお気に入りの木を植えたいのだそうだ。
思えば、キッカたちが僕やフウコがいないときに森に入るというのも、ポンちゃんと契約をするまでは無かったことだ。その前だったら強い魔物と戦えないだろうからね。でも、今なら問題ない。ポンちゃんがいれば、森の中ならたいがいの事はできちゃうし、キッカたちの精霊魔法も炸裂するかもしれない。
さて、こっちはこっちでやる事をやっておかないとキッカたちに怒られちゃうよな。
「フウコ、話した通りにお願いね」
「うん、任せて!」
僕とフウコは、もともと大量の魔石ゴミが放置されていたところのすぐそばにいた。見渡すと、ゴミのあった所は、森の中の小池が枯れたような感じになっている。元々は、南側には森は全然なくて荒野に面していたし、小池のようなくぼみの所には魔石のゴミが溜まっていたんだよなあ。短期間でよくこんなに処理できたもんだよなあ。
フウコは両手を挙げながらくぼみの真ん中のあたりに進んで行った。そのあたりには、少しだけゴミが残っている。そして、フウコは「えーい!」と言いながら独楽のようにぐるぐる回り出した。
すると、フウコを中心にゴミやくぼみの土が空中に巻き上がっていく。くぼみは表面が削れるようになって深さを増していき、膝ぐらいまで深くなったら、今度は空中の土が少しずつその上に積み重なっていった。
「できたよー! これでゴミと土は混ざったよ!」
「魔石ゴミのかけらとかは表面には出てない?」
「もっちろん! ばっちりだよ」
「じゃあ、後は穴を掘るかな」
僕はそう言って、木を植えるための穴を掘るためにシャベルを持ってくぼみの下まで降りていった。
そして、しばらく掘って、まあこんなもんかなというぐらいになった時にフウコが言った。
「ポンちゃんたちが帰ってきたみたいだよ! もうすぐここに着くよ!」
お、グッドタイミングだなと思って、くぼみから出て山の方を見る。しばらくそっちを眺めていると、キッカたちが3人で杉みたいな木を抱えて森の中から出てきた。キッカの足元にはポンちゃんが、そして後ろにはミアリーとリヨーナ、さらにその後ろには森の精霊さんがいる。
「お疲れ。けっこうでかい木だね。大変だったでしょ」
「ぜーんぜん。大変なところはポンちゃんが手伝ってくれたからね!」
キッカは笑顔でそう言った。
「じゃあひと休みしてから作業する?」
「このままやっちゃおうよ。この木がこのままだと可哀そうだし」
まあ、ポンちゃんが選んだ木が多少地面から離れていただけでどうにかなるとは思えないけど、根っこのところに申し訳程度に土がついている感じは確かに寂しい感じだしね。
「オッケー、じゃあ一番底の方に穴が掘ってあるから、そこに持っていこう」
僕はそう言って、木を担いでいるキッカとミアリーの間に入った。
「師匠は見ててよ。僕たちだけでも大丈夫だよ」
「まあ、最後ぐらい僕も参加するよ。ちょっとだけだけど」
「そっか。じゃあ、“虹色の綿毛”の4人で運ぼうか! わっしょいわっしょい!」
キッカが明るく変え声を上げると、ミアリーとリヨーナが笑い声をあげる。そして皆で声を合わせながらくぼみの下まで降りてきた。
そして、慎重に木を穴に入れる。まっすぐ立てるのに苦戦していたら、根っこが土の中に伸びていって、勝手に立つ感じになった。ポンちゃんが手伝ってくれたのかな。
「じゃあ師匠、私たちが支えているから穴を埋めてよ」
「了解」
僕はそう言って、木から手を離しシャベルを持って、掘った穴に挿した木の周りを土で埋める。そして、再び木を持った。1本の木を僕たち4人で取り囲んで、みんなで木を支えているような感じになった。木を触った僕を見てキッカが言った。
「じゃあ、ポンちゃん、お願い」
ポンちゃんが頷き、僕の足元に来て僕を触る。すると僕の魔力が吸われる。そして、ポンちゃんは今度は前脚を木において、みんなを見渡す様にして「キィ」と言った。
キッカたちは、それを聞いて頷くと、木を見上げた。そして、キッカたちの体と木が共鳴するように淡く光り始める。そして、それが合図だったように、植えられた木がぐんぐん太く大きくなっていった。
木はどんどん伸びていって、他の木の高さを大きく超えたところで成長を止めた。
僕はその木を見上げているみんなを見て言った。
「じゃあ、これでこの仕事は完了だね」
すると、キッカが木から手を離し、気をつけの姿勢になって言った。
「うん、師匠、これまでありがとうございました」
ミアリーとリヨーナも、同じ姿勢になって「ありがとうございました」と言った。
「うん、こちらこそありがとうね。で、えっと、一応記念品というか、みんなに渡すものを準備しているんだよね」
そう言って僕は懐から3つの袋を取り出した。
「えっと、まあ、卒業式みたいなものかな」
「卒業式?」
「うん。もともと、みんなは僕に弟子入りをしようしたじゃない。僕は断っちゃったんだけど、僕が師匠なら、今日でみんなは卒業だ。君たちは、ちゃんと一人前の冒険者になったからね」
実際、3人でビッグバボヌを倒せるなら、中堅冒険者の中でも上の方じゃないだろうか。さらに、ポマズ山の森の中ならポンちゃんの手を借りられたり精霊魔法を使えたりなので、ほとんど無双できる。一人前どころか、腕利きの冒険者と言えるかもしれない。
「じゃあ、キッカ、おめでとう」
「おめでとうって変な感じにゃ」
「まあ、一応そういうものだから」
そして、キッカに袋を渡す。そして、ミアリーとリヨーナにも声を掛けて袋を渡した。
そして、「開けていいよ」と言ったら、3人が袋を開けた。キッカが「うわ、すごい!」と言った。そして、袋の中の物を取り出す。それは、銀の腕輪だった。
「僕の腕輪と同じデザインで作ってもらったんだよね」と言って、僕は右腕の裾をまくった。そこには、シバ族の村の林の精霊エインさんに貰った木の腕輪が嵌まっている。そして、「まあ、4人の絆ってとこかな」とおどけて言ってみた。
キッカたちが笑ってくれる。そしてキッカが言った。
「ねえ師匠、やっぱり“虹色の綿毛”を抜けるのをやめない?」




