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3-31 息子さんとの契約、そして姿とかお名前とか

 森の精霊さんが宣言するように契約をすると言うと、彼女の足元にいた息子さんが前に出て来て、凛々しい表情で「キューン」と鳴いた。そして、キッカの方にトコトコ駆けて行ってジャンプし、キッカにキスをした、って、え!?


 いま、確かに口付けしたよな!? え、お前何やってんの? キッカはよくわかっていないみたいだけど、「んー? なんか口の中に入ってきたような」と言いながら口を手で拭った。


 あ、そうか。契約ってそういう感じだっけ! 忘れてた。僕もフウコとやったなあ。


 あ、なんか息子さんがタヌキ型で良かったな。人型だったら、ちょっと許せないかもしれない。動物とだったら、女の子でもキスしたい人も多いだろうし、まあセーフと言ってもいいかな、多分。


 息子さんはそのまま、ミアリーに口付けし、その次にリヨーナにも口付けした。


 「うむ、これで我が息子と小娘どもとの契約は結ばれた。めでたいことじゃ」


 「えーっと? 3人と契約が結ばれたというのは?」


 「そこが面白い所じゃ。じゃが、その前にこの契約はな、このポマズ山の森や新しく生まれた木々のあたりのみでの契約となる。なにせ、我が息子はまだまだ妾のそばにおらねばの。息子もそう望んでおるしの」


 え、そういう契約もありなのね。森でしか精霊魔法が使えないということか。親バカのせいでそんなことに…


 「勘違いするなよ。新しく生まれた木々のためにも我が息子は森を離れるべきではないのじゃ。その判断ありきじゃからな」


 ああ、ちゃんと理由はあるのね。疑わしい気もするけど、余計なことは言わない方がいいよな。せっかくの契約なのに精霊さんがへそを曲げたら面倒だし。


 「そして、この契約は3人を相手に結んでおる。といっても、1人で森にいても2人でいても魔法は発動できるが、3人のうち誰かが森にいて、かつ別の場所にいるときには使えん。つまり、森にる小娘どもが同じところにいるときにのみ魔法がつかえるのじゃ。森に来るときには、一緒にいることじゃな」


 「え、なんでそんなことになるんですか」


 「我が息子がそう望んだからに決まっておろう」


 え、どういうこと?


 「我が息子が言うには、3人が助け合う姿にほだされたということじゃ。まことに、優しき我が息子らしいの」


 うーん、うん? いい話、なのかな? なんか、ハーレム願望とかじゃないだろうな。そんな疑いを持つのは、僕の心が汚れているからか?


 「さて、それはともかく妾からも試練を乗り越えた褒美をやろう」


 褒美? 大丈夫か? 森の精霊さんのセンスもあんまり期待できない感じがするけど。


 僕がそう失礼なことを考えていると、森の精霊さんの右腕が伸びて地面に刺さった。あ、これなんか見たことあるな。なんだっけ? あ、土の大精霊さんがシバ族の村の村人にやったやつだ。ということは…


 そう思ってキッカたちの方を見る。キッカたちは不思議そうに僕の方を見ていたが、その足元から細い木の幹のようなものが生えてきて、キッカたちの体に巻き付いていく。その幹は体中にぐるぐる巻きついて、顔の辺りで枝分かれして鼻の上とか額のあたりに何重にも巻き付いていった。


 うわ、なんかキモいな。キッカたちが見えなくてよかったかもなと思っていたら、森の精霊さんが「ほれ、なにをしておる。魔法を使う故、魔力を使わせるように言え」と言った。


 えぇ、大丈夫なのかなあ。森の精霊さんはいい人っぽくはあるけど、精霊さんたちはすぐ暴走しちゃうけどなあ。


 まあでも、僕にはあんまり拒否権とかはない。まあ、キッカたちなら、森の精霊さんが暴走して、強すぎる力を与えちゃったとしても、ちゃんと節度を持って使いこなしてくれるだろう。


 僕はキッカたちに「森の精霊さんが、褒美をくれるから魔法を使いたいって。魔力を吸われるのを抵抗しないようにして」と伝えた。


 キッカたちは不審そうな表情のままだったけど、小さくうなずいた。そして魔力を使ってもらうようにしたのだろう。すると、キッカたちに巻き付いている幹が光り出し、そしてキッカたちの体も薄く光っていった。


 「うわ、なにこれ!?」とキッカが叫んだ。「心配するな。よいことをしてやるでな」と森の精霊さんが言った。いや、はっきり説明しないから心配になるんだけど。


 そのうち、体の光がだんだん頭に集まっていき、キッカたちの目が光り出した。キッカが「え、どういうこと!?」と言ったけど、何が起こってる?


 その時、キッカの足元にしゃがんでキッカを見上げていた息子さんが「キィー」と叫んだ。そしてキッカが息子さんを見て「うわ、何このタヌキ!?」と言った、って、えっ!?


 「え、キッカ、見えるの? 足元のタヌキみたいなのが息子さんだけど!?」


 「え、息子さん!? このタヌキが? え、じゃあ僕に精霊が見えているってこと?」


 え、そうなの?


 「うむ、本来、精霊と契約すればその精霊が見えるようになるものじゃがな。多少時間がかかりそうだったゆえ、妾が手助けしてやったのじゃ。せっかく契約したのに我が息子の可愛い姿を見えぬのは気の毒じゃと思うての」


 ああ、息子さんの姿が見えるのが褒美ってことね。キッカたちも嬉しいだろうからいいけど、親バカの匂いはするけどね。


 キッカだけじゃなく、ミアリーやリヨーナにも息子さんが見えたみたいで、2人も息子さんの周りに集まってきた。


 「え、息子さんってこういう感じ…」「とっても可愛いですね!」


 3人が楽しそうに息子さんを見て話している。可愛いとか言っちゃっていいのかな。森の拡張の時は上司みたいなものだったんだけど。プライドに触ったりしないよな。


 その時、息子さんが「クー」と言いながらキッカの顔めがけて飛び上がった。キッカがとっさに息子さんをつかむ。


 「うわ! え、軽! てか、あ、触れる!」


 そしてキッカは嬉しそうに息子さんをそのまま抱きかかえた。まあ、でかいぬいぐるみを持っているみたいで、確かに可愛くはあるかな。


 息子さんはそのままキッカの顔をぺろぺろしている。リヨーナが、「息子さん、私も触ってもいいですか?」と聞いたら、息子さんがリヨーナの方を向いて、「キー」と言って頷いた。それを見てリヨーナが恐る恐る息子さんの頭を撫でると、息子さんはふわっと飛んで今度はリヨーナに抱きついた。


 リヨーナは「本当だ、軽い」とつぶやいて息子さんの背中のあたりを撫でた。そしてミアリーの方を向いて「ミアリーちゃんも触ってみたら?」と言った。それを聞いたミアリーも頷いて、息子さんの背中から尻尾に手を伸ばす。


 息子さんも幸せそうに眼をつぶっている。…本当に下心とかないんだろうな。なんか、タヌキ型の見た目のせいでこちらの感覚も狂う。精霊は下心とか持たないという理解で大丈夫か?


 リヨーナは息子さんを持ち上げると座って、自分の膝の上に息子さんを抱きかかえた。その息子さんをキッカとミアリーが左右から取り囲んで熱心に頭のあたりとかおなかのあたりを撫でたりしている。息子さんの方も何考えているか分からいけど、キッカたちの息子さんへの扱いも、敬意的なものを感じないんだけど。


 そう思っていたらキッカが言った。


 「ねえ師匠、息子さんに名前を付けてもいい?」


 ああ、これは完全に息子さんをペット的な存在として認識したな。さっきまで上司として敬っていたのになあ。姿が見える弊害かなあ。


 さすがにそれは許されないのでは、と思ったが、まずフウコが「いいじゃんそれ!」と言い、息子さんが興奮したように「フー」と言った。


 え、これは許される流れなの? でも、お母様はどうだろう? そう思ってちらっと森の精霊さんを見たら、慈母の微笑みという感じの表情で息子さんの方を見て「うむうむ、お主が望むのであれば母は反対せぬよ。若者らしく、今風のあだ名を付けてもらうがよいぞ」と言った。


 うん、理解のあるお母さんで良かった。僕はキッカに向かって「いいみたいだよ」と伝えると、キッカたちは3人で色々と名前の案を上げ始めた。


 そんな3人の話し合いに参加しているように、フウコも身を乗り出してふんふん頷いている。そして、息子さんも3人の顔を眺めまわしながら真剣な顔で聞いている。あ、そういえばキッカたちはフウコとか森の精霊さんは見えないっぽいよな。これもそういうものなのかな?


 僕は、乗り遅れたというか、まあここはキッカたちに任せた方がいいかなという気分なので、ちょっと離れた所から見守っていた。なんか、フウコが戯れていた青い小鳥も、話し合いに参加するみたいにキッカとミアリーの間にいてみんなを見上げて固まっている。ちなみに、森の精霊さんも見守りモードみたいで、キッカたちというか息子さんたちを微笑みながら見ている。


 やがて、息子さんが「キーッ」と高らかに叫んだ。そんな息子さんの周りで3人も頷き合っている。


 「どう、決まったの?」と聞いたら、キッカが笑顔で言った。


 「うん、息子さんの名前はポンドリアン! 縮めてポンちゃん!」


 え、ポンちゃんはさすがにじゃない?と思ったけど、フウコの声が響き渡った。


 「いいねー! 可愛いよー!」


 それを聞いて満足そうに森の精霊さんが言った。


 「うむ、若い者の感性は分からぬが、我が息子がよいと思うのであればよいのじゃろうな。妾もこれからはポンちゃんと呼ぶことにしようぞ」


 あー、大丈夫なのね。なんか森の精霊さんの親バカに救われた気がする。まあ、とりあえず、ポンちゃん、今後ともよろしくね。

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