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7 食事と睡眠、そして頭の上のアレ

 その後、集落の人たちがたくさん出てきたが、結局、とりあえずは受け入れてくれることになったらしい。最初に話した男や、長老と呼ばれていた年配の男性なんかは詳しい事情を聴きたがっていたようだけど、疲れ切った僕に同情してくれたのだろう、最終的に僕は集落の中に案内された。


 水も食べ物も出してくれた。食べ物といっても、肉とよくわかんない草みたいな野菜が入ったスープだけだけど、本当にありがたかった。一宿一飯の恩義って言葉、時代劇かなんかで聞いた時は宿と食事ぐらいで大げさだなあと思ったけど、これぞ本当に一宿一飯の恩義という感じだった。


 食後はすぐに、敷いてもらった布団で横になった。現代日本人の僕の感覚だと粗末な布団だけど、布団で眠れるというだけでありがたい。昨日は岩場で横になっただけだったからな。


 布団に横になった後、集落の人が部屋から出て行ったのを見て、小さな声で話してみる。


 「フウコ、聞こえる?」


 「聞こえるよー。どしたの?」


 「フウコ、本当にここまで連れて来てくれてありがとう」


 「オーケー、気にしないでって。とりあえず、死ななくて済みそうで良かったじゃん。じゃあ、私はここの精霊とちょっと話してくるから、また明日ね」


 ん? ここの精霊? どういうこと? 聞こうと思ったけど、フウコは部屋の仕切りをすり抜けて外に飛んで行ってしまった。


 気になることが出来てしまった。まあでも、「また明日」と言っていたので明日もいてくれるのだろう。一応、ここまでは連れて来てくれるっていう約束だったから、もしかしたらここでお別れっていうこともあるのかなと心配したけど、とりあえず明日は大丈夫そうだ。


 フウコが今後どうしたいかとかも、明日聞いてみたいところだ。


 そういえば、長老と呼ばれていた男性からも、「詳しい話は明日にしましょうぞ」と言われていたな。明日も大変な一日になりそうだ。


 あと、今日は疲れ切っていたから触れなかったけど、この集落の住人って… うん、そのことも明日考えよう。でもちょっとテンションが上がるというか、びっくりというかだよな。


 色々気になるけど、もう今日は限界だ。明日のことは明日考えることにして、今日は眠気に身を任せることにしよう。


-----------------------


 次の日、がやがやする人の声で目が覚めた。


 「おはよー。もうここの人たちはみんな起きてるよ」


 声の方に顔を向けるとフウコが浮かんでいた。周りを見回しても部屋には誰もいない。がやがやする声は外から聞こえていた。


 「おはよう。ここの精霊さんとは話せた?」


 「うん! 後でケースケも話すといいよ。その前にここの人たちと話すことになりそうだけどね」


 フウコによると、この集落の人たちも、僕の処遇を巡って遅くまで話し合ってたらしい。細かい内容までは分からなかったけど、なんとなく不安な感じがする。


 そんな感じで、フウコから集落の様子を聞いているときに部屋の入口の方で人の気配がした。見ると、女性が入り口から顔を覗かせている。女性というより思春期ぐらいの女の子かな。


 「おはよう」と出来るだけ笑顔を浮かべて声をかけたら、無表情にうなずいた。シャイなのかな? それとも警戒されているのかもしれない。女の子が無表情のまま言った。


 「朝ご飯たべるよね」


 「ありがとう。いただくよ」


 「じゃあ持ってくる。あと、ご飯食べたら、長老が話があるからここで待っててって」


 「わかった」


 無表情だったけど、多分悪い子ではなさそうだ。集落の入口の見張りをしていた若い男と少し似ているから、もしかしたら兄妹とかかもな。そして頭の上に…


 いや、今は余計なことを考えている暇はない。問題は山積みだ。まずは長老との話し合いだな。ご飯を食べながら、しっかり作戦を練っておこう。


 「うむ、長老と話… これはフウコも頑張らねば!」


 お、おう、フウコありがとう…これ、多分精霊の得意分野じゃないから、気持ちだけ受け取りたいところだけど、だめかな?


--------------------


 そして食後、長老に呼び出されて別のテントに行った。


 僕の前には長老と、見張りをしていた青年が座っている。青年はやっぱりさっきの女の子と少し似ている気がする。


 ちなみに、この集落の家は、モンゴルの遊牧民の使うテント、ゲルとかいったかな、あれみたいな形だ。そして、テントの中はゴザが敷いてあって、椅子などはなく、僕たちは座布団のようなものの上に座っている。


 日本人としては慣れた形なんだが、正坐をするかあぐらでいいのかは迷った。でも、長老たちがあぐらなので、僕もあぐらで座ることにした。フウコも、やってやるぜっていう風な顔で僕の隣に来たけど、フウコの声は長老たちには聞こえないはずだし、くれぐれも邪魔をしないでほしい。


 僕が座ると、長老が話しかけてきた。


 「ゆっくりお休みになれたかな」


 多分、気を使って雑談から入ってくれたんだと思うんだけど、顔が無表情でちょっと怖いんだよな。それから頭の上に「あれ」がある。


 「はい、ゆっくり休めました。それから、お食事もご馳走いただきありがとうございました。大変助かりました」


 「なに、困ったときにはお互い様じゃ」


 いい人みたいだ。いや、人という言葉でいいのか? 僕はさりげなく長老の頭の上に視線を向ける。


 そこには、上向きの耳が生えていた。


 そう、この集落に到着したあと出会った全ての人の頭には、上向きに耳が生えていた。これは、ファンタジーの定番、獣人というやつではないだろうか。


 耳はピンと尖った感じだ。キツネにしては小さめだし、狼か? それか、犬の獣人かもしれない。柴犬とかの感じもあるし。


 「さて、まずは自己紹介をさせていただこう。儂はこのシバ族の村の…」


 「ブホッ」


 柴犬の耳の事を考えていたらシバ族という名前だったので、思わず笑いそうになってしまった。咳き込んだふりをしてごまかしたけど、大丈夫かな。


 「む、大丈夫かな。もし体調が優れないようであれば、まだ横になっていてもらっても構わないが」


 「い、いえ、お構いなく。少し咳が出ただけですので」


 変な風に思われないように緊張感を持ってこの話し合いに臨んだつもりだったが、こんなところに罠があったとは。


 フウコも、あきれたような目で見てくる。でも、今のは仕方ないと思うんだ。しかし、この話し合いに人生がかかっていることも忘れてはならない。もう一度気を引き締めなおしてこの話し合いにいどまなくては。

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