3-21 ミアリーの悩み、そして偉大な来訪者
さて、どう答えようかな。先輩として、しっかりとした答えをしたいところだけど、難しいな。まあ、思っていることを言おう。
「僕も冒険者のことをそれほど知らないから、絶対に大丈夫とかは言えないけど、伸びしろはたくさんあると思うよ」
「伸びしろですか?」
「うん、結局、ミアリーたちに足りないのは戦闘力でしょ。それ以外は、なんなら僕よりちゃんとしているし」
「え、そんなこと無いですけど」
いや、実際、真面目だし手を抜かないし、下調べもちゃんとするし、採取とかも丁寧だし、知識もしっかり身に付けているしね。
「いや、本当にちゃんとしてると思うよ。特にミアリーはしっかりしてるよね」
キッカの暴走をしっかり止めてるしね。僕も暴走がちなバディがいる者として見習いたい。
「えー、そんなこと無いですよぉ」ってミアリーが照れたように言った。これは、あざといわざとのやつじゃなくて、きっと本当のやつだと思う。
「いや、本当にそうだよ。だから後は戦闘だよね。3人の戦闘は何度か見ているけど、ちょっと思ったことはあるから、それは今度伝えるよ」
「え、何で今度なんですか? 気になるじゃないですか」
「まあ、こんな夜中に話すことでもないから。今度特訓でもしよう」
「えぇー」ってすねたようにミアリーが言った。キッカはわりとこういう感じで話すけど、ミアリーが言うのは珍しいかもな。ちょっとは僕に心を許してくれたってことかな。それか眠くなってきただけかもしれない。
「じゃあ、明日も朝から頑張らなきゃだし、そろそろ寝てきたら」
「そうですね。じゃあ、すみませんけど見張りをお願いします」
「うん、了解。おやすみ」
「はい、お先です」
そして、ミアリーは3人で使っているテントに戻っていった。
ミアリーたちの戦闘か。僕も、戦闘経験が多いわけじゃないけど、観察していてもっとこうすればいいのにっていうことには気付いたんだよな。どうやって伝えるかとか、どうやって訓練するかとか、先輩として考えておかないとな。
僕はなんとなく焚火に枝を放り込んだ。その辺に浮かんでいたフウコも僕の隣の方に来てくれた。さて、ここから長丁場だ。安全だろうとは言え、居眠りをしていたら後輩たちからの信頼を失いそうだしな。しっかりと起きておかないとな。そう思っていた時、焚火を見ていたフウコが顔を上げて言った。
「お、きたきた。そろそろ来るんじゃないかと思っていたんだよね」
ん? フウコ、何が来るって? 魔物か?
僕が腰を浮かした時、突然、風も無いのに木々がバサバサと音を立てて揺れ始めた。そして、何か得体の知らない恐ろしいような感情が体の奥からあふれ出してくる。
お、これは!? ん? なんか既視感があるというか、土の大精霊さんの出現の時みたいな感じじゃないか。ということは…
フウコが森の上の方に飛んで行きながら言った。
「こんばんはー。私はフウコだよー」
すると、木々の上からでかい女の人が顔を覗かせた。
「おお、珍しいな。風の精霊よ、人間と強い契約をしておるではないか」
「うん、こいつはケースケ!」
おおお、紹介されてしまった。この方は間違いなく精霊さんだよな。
「ふむ、ケースケとやら。このところそなたらが何度も森に立ち入っていたことは気付いておったぞ」
ああ、紹介される前から既にばれてたのね。
「妾に会いに来たのかと思ったが、なかなか来んのでこちらから出向いてやったわ。感謝するのじゃぞ」
ん? 会いに来たというか、存在を初めて知ったくらいだけど?
その時、後ろからミアリーの切迫した声がした。
「師匠、大丈夫ですか!?」
振り向くと、ミアリーがテントから顔を出している。
「ああ、とりあえず大丈夫だから、落ち着いていてね」
「大丈夫なんですね。なんか急に木のざわつく音が聞こえてから、体の震えが止まらなくて…」
「うん、かなり強力な精霊さんが会いに来てくれたみたい。平和に話し合えるみたいだから、心配しないで」
強力な精霊と聞いて、なんとなく状況が分かったのか、「はい」と言って頷いた。
「キッカとリヨーナは大丈夫そう?」
「あ、はい、2人とも寝ています」
2人ともこの感じで起きないのか… ある意味大物だな。
「とりあえず、テントの中で待機していて」
「はい、わかりました」
そして、ミアリーはテントの中に戻った。
さて、ではこの大きい精霊さんに対応しないとな。まずは自己紹介、の前に、ミアリーが怖がっているみたいだし、力を抑えていただけないかな。
「初めまして。大変力の強い偉大な精霊の方とお見受けいたします。恐れ入りますが、私の連れが偉大なお力に当てられてしまったようです。少し力を抑えていただけないでしょうか」
話し方から見て、こちらは畏れ敬うような話し方が有効と見た。そこで、できるだけ丁寧な話し方でお願いをしてみた。シバ族の村の長老さんが、こういうのうまかったよな。
「ふむ?」と言って、その精霊さんはこちらをのぞき込むような表情をした。そして言葉を続けた。
「まあよかろう。お主も妾を敬う気持ちは持っているようであるしな。お主とそこの風の精霊に免じて、妾の力を抑えてやろう」
そういうと、木々の上から覗かせていた精霊さんの頭が小さくなっていき、木の向こうに消えて言った。お、威圧感みたいなものも消えていったな。これでミアリーも安心だろうと思って、振り返ってミアリーたちのテントを見たら、ミアリーが心配そうに顔を覗かせていた。
「ミアリー、今から精霊さんと話すけど、ちゃんと話が通じるみたいだから心配しないでね」
「はい。見ていてもいいですか?」
「うん、別にいいと思うけど、変にパニックになったりしないように気を付けてね」
精霊さんって、突然突拍子もないことをしたりするからな、びっくりしないように事前に言っておかないと。
でも、考えてみたら、見ていても話も聞こえないし、何も見えないんだよな。何か、変な勘違いとかしでかさないよな。慎重派のミアリーなら大丈夫かな、直情型のキッカあたりなら危ないかもしれないけど。一応、念を押しておくか。
「ミアリー、僕は精霊さんとお話しするのは慣れているし、いきなり危険なことになったりはしないと思うから、もし奇妙なこととかが起こったとしても落ち着いていてね。万が一何かがあっても、僕がちゃんとみんなを守るから」
その言葉を聞いて、ミアリーが笑顔になって「はい。分かりましたした」と言った。
ちょっとカッコつけすぎたかな、「みんなを守るから」とか言っちゃった。いやいや、それどころじゃないから、精霊さんとのお話しに集中しよう。どういう話になるか分からないけど、くれぐれも失礼のないようにしなくては。




