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3-20 依頼を受けて山に行く、そしてミアリーとのお話し

 やたら張り切っているフウコはほっておいて、キッカたちと一緒にギルマスの話を聞いてみた。


 話は、要するに街から南の方角にあるポマズ山の調査依頼だった。なんか、山で不穏な情報が冒険者ギルドに多く寄せられているらしい。そういえば、僕たちもビッグバボヌの群れに遭遇したな。フウコが瞬殺していたけど。


 そんなわけで、山での依頼をこなしている冒険者たちから、苦情というかなんとかしてくれという要望が多く来ていたらしい。


 「そういうことでな、山の奥まで調査に行ける冒険者を探していた。通常なら最低でもBランクってとこだな。Dランクのお前らに頼むことじゃないかもしれん。だが、お前らは自由に山を動き回っているって話だ。どうだ、引き受けちゃあくれねえか?」


--------------------


 ギルドマスターの依頼は、全員の意見が一致して引き受けることにした。そして、その日は準備に当て、次の日の早朝に僕たちはポマズの山に出発した。今回は、かなり広い範囲を移動する予定で、9泊10日分の準備をして調査に臨む。


 ちなみに、僕が“虹色の綿毛”に加入してからは毎日キッカたちと行動を共にしているが、泊りの依頼は初めてで、僕は少しだけ緊張していた。セクハラ的な変な勘違いをされないように、そして変な勘違いをしないように、これが個人的に思っている今回の依頼の最大の注意点だ。


 なにしろ、泊まりって聞いてからフウコのワクワクが止まらない。頼むから変な気の利かせ方はしないでくれよ。ラッキースケベとか、今の時代はむしろめちゃくちゃアンラッキーになったりするんだからな。


 それにしても、ポマズの山って呼ばれている地域は思っていたよりもだいぶ広いみたいだ。どうも、見えている山の向こう側にもだいぶ山地や森が広がっているらしい。そっちの方は、立ち入られることは少ないらしいが、今回はそっちにも立ち入って異変などが無いか調査する予定だ。魔物も強くなるという話だが、油断しているわけではないけど、あまり心配していない。フウコさんがきっと何とかしてくれるだろう。


 ともあれ、僕たちは山に入り、山の奥の方に向かって進んできた。これまでにない重要な依頼だし、ギルドマスター直接の指名依頼というやつだ。成功させれば評価も大きく上がるだろうし、これはチャンスだ。


 まあでも、あんまり気負ってもしょうがないしね。僕としては、いつも通りの仕事ぐらいの気分で、フウコと2人で魔物の対処や斥候や道案内を頑張りたい。というか、フウコに頑張ってもらいたい。


 そんな僕の考えがよかったわけでも無いだろうが、初日も2日目も特に問題は起きなかった。僕の料理がみんなに褒めて貰えたぐらいだ。シバ族にいた時にトゥハンたちに教わっておいてよかった。


 そして3日目の夜中。僕はテントの外から声を掛けられて目を覚ました。


 「師匠、交代の時間です」


 ミアリーの声が、見張りの交代を告げていた。落ち着いた声だし、何事も無いみたいだな。僕は「了解」と返事をして伸びをして目を覚まそうとした。横を見ると、フウコも伸びをしているけど、精霊は寝ないはずだし、人間の真似をしているだけのはずだ。


 そしてテントから出ていく。ミアリーが外で待っていてくれたので、「お疲れ。何もなかったかな?」と声を掛けたら「はい、何もなかったです」と返事があった。


 まあ、何もなかったのは分かっていたようなものなんだけどな。実は、フウコには寝ている間の警備を頼んでいる。だからパーティみんなで熟睡していたとしても、まず安全と言ってもいいんだけど、キッカたちにそう言ったら、さすがに自分たちで見張りをしたいということだった。


 そして、「師匠は寝ててもいいよ」ということだったけど、それはさすがに僕が駄目な先輩すぎるだろうということで、4人で交代で夜の見張りをすることになった。


 ということで、ここからしばらくは僕が1人で見張りをすることになる。まあ、1人と言ったけど、フウコが付き合ってくれるだろうし、のんびりフウコとおしゃべりタイムかな。


 僕は、着替えなんかが詰まったバッグを焚火の前に置き、そこに座った。そして、ミアリーの方を向いて、「じゃあ、おやすみ」って言った。


 ミアリーは、「はい」と言ったけど、そこを動かず、「師匠、もうちょっとだけ起きていてもいいですか」と言った。


 「ん? 別にいいけど」と言ったら、焚火の前に置きっぱなしだったミアリーの荷物に座った。


 え、夜中に焚火に2人っきりって… という思いが一瞬頭をよぎったけど、その思いを見抜いたわけじゃないだろうけど、ミアリーが言った。


 「私、見張りの時は、キッカやリヨーナともこんな感じでしばらくお話ししてたんですよ。普段離せないことが話せたりするし」


 さすがミアリー、勘違いされないようにさりげなく釘を打ったな。「あなただけじゃないですからね」的なことだな。このあたりの危機管理は見事だ。まあ、もちろん僕はそんなことで勘違いしたりしないんだけどね。


 「そうなんだね」と返事して、僕は焚火を見た。さて、どんな話をしようかな。こういう時は、先輩が話題を見つけた方がいいよな。そう思ったんだけど、寝起きで頭が動かない。しばらく無言でぼおっとしていたら、ミアリーが話をしてくれた。


 「師匠はなんで冒険者になろうと思ったんですか?」


 「うーん、まあはっきりした理由があるわけでも無いんだけど。お金とか名声とかが手に入って有力者とのコネとかが手に入りそうかなって思って」


 「なんか意外かも。師匠って、あんまり欲とか無さそうなのに」


 「うーんと、まあ、お金も有力者とのコネも、目的のために必要だと思ったんだよね」


 「目的って聞いてもいいですか?」


 うーん、言ってもいいかもしれないけど、僕が異世界から来たってことも、シバ族の村のことも、一応言わない方がいいかもな。そんなことを知ることでかえってミアリーに迷惑がかかる可能性もあるし。


 「ごめん、一応秘密。まあでも、ある情報が欲しいんだけど、それは普通には手に入らないらしいんだよね。あと、僕がやりたいことをするには、国家レベルの動きが要るっぽい」


 異世界の情報とか、荒野の向こうにあるシバ族との交易とか。思ったより大変かもしれないよなあ。


 「そうなんだ。やっぱり師匠はすごいですよね」


 「そんなことも無いんだけどね、成り行きでね」


 「そんな成り行きあります?」


 そう言ってミアリーが笑った。まあ確かにね。でも本当に成り行きなんだけどね。


 「ミアリーはなんで冒険者になったの?」


 「私も、成り行きと言えば成り行きですね。キッカが冒険者になるっていうので付いてきちゃったんです」


 「そうなんだ。親御(おやご)さんには反対されなかった?」


 「私、両親とも村を出る1年ぐらい前に事故で死んじゃって」


 「え、そうだったんだ。ごめんね、変なこと聞いちゃった」


 「いえいえ。それで、兄弟もいないし、天涯孤独だし、村にいてもしょうがないし、やりたいことをやろうかなと思って冒険者になっちゃったんです」


 そっか、ミアリーも苦労しているんだな。僕は何と言っていいか分からなくなったけど、ミアリーが言葉を続けた。


 「師匠、私たちって冒険者としてやっていけると思いますか?」


 “もちろん、だって僕がいるからね!”とかいうことを聞いているんじゃないんだろうな。僕もいつまでも彼女たちと一緒にいられるわけでもない。僕がいなくなった後でも、やっていけるかどうかってことだよな。これはちゃんと真面目に答えないとな。

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