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3-17 僕はすごい!? そしてキッカたちの考え

 いやでも、3人で頼んでも、師匠なんて僕には無理だよ。


 「いや、僕は師匠っていう柄じゃないしさ」


 「そんなことない! 師匠はちゃんと師匠だよ! 色々教えてくれるし!」


 なんか教えたっけ? 覚えてないけど。


 「でも、精霊魔法の学び方なんて、僕は教えられないし」


 「精霊魔法は、師匠にしか使えないの?」


 「いや、そういう訳でもないみたいだけど」


 昔は精霊魔法大国っていうのがあって、精霊魔法をばりばり使っていたって聞くし、それに、シバ族の村の“約定”ってやつも、ある意味精霊魔法の行使だよな。


 「えっ!? キッカも使えるようになるの?」


 「うん、使える使える! ケースケがなんとかしてくれるよ!」とフウコが言った。


 いや、ちょっと待って。僕に丸投げしないで。さすがになんとかできる自信は無い。いやでも、ちょろい精霊さんに出会ったりしたらワンチャンか?


 …いや、やっぱり無責任なことは駄目だな。ちゃんと大人として、誠実に答えよう。


 「使えるようになる可能性はゼロじゃないけど、保証は出来ないんだよね。精霊さんとの出会いに恵まれるかとか、運も絡むし。人間に力を貸すかどうかは、精霊さんが決めることだし。だから、悪いんだけど、君たちの師匠にはなれない」


 えぇ、とキッカが小声で言った。なんかシュンってしちゃってる。フウコも「ええー、意地悪なこと言うなよー」って言ってるけど、意地悪とかじゃないから。大人としての責任感だから。


 でも、そんな僕を見て、ミアリーが言った。


 「ケースケさん、私たちがケースケさんに弟子入りしようって決めたのは、精霊魔法がすごいからだけじゃないんです。いつものキッカの思いつきじゃなくて、昨日3人で話して決めたんです。だから、考え直してくれませんか」


 リヨーナも真剣な顔でこっちを見ている。あ、そうなんだ、リヨーナはともかく、ミアリーにそんなに真剣な気持ちがあるのは気付かなかった。どっちかっていうと、警戒されてた気がするし。


 「でも、精霊魔法以外って僕には特に何もないよ? 剣とかもできないし」


 なんなら、冒険者としての知識なんかだったら、3人に全然負けてるし。


 「そんなことないよ! 師匠はすごいよ!」「そうですよ、師匠はすごいです。自信を持ってください!」


 うん、なんか怒られた。いや、自信があるとかとは別な気がするけどな。


 「でも、何で僕なの? 他にもすごい冒険者とかいるでしょ?」


 僕がそう言うと、3人は顔を見合わせた。


 「でも昨日、3人で話して決めたんだ。師匠はすごいって」


 「そうですよね。それに優しいし。だから弟子入りしようって決めたんですよね」


 リヨーナまでそんなことを言われて、こそばゆい。そんなに褒められていたんだな。


 「ちょっと、2人とも。そんなんじゃちゃんと伝わらないって。真面目な話なんだから、ちゃんと説明しなきゃ」


 ミアリーがそう言った。そして、考えをまとめるように一瞬視線を下に落とした後、こちらを向いて話を続けた。


 「えっと、昨日話していたのは、私たちと師匠では、冒険者としての力に差がありすぎるっていう話です」


 うーん、でも僕の力って言ってもフウコの力だし、冒険者としての力って戦闘力だけじゃないしなあ。


 「だから、対等な立場でパーティを組むのは違うんじゃないかと思ったんです」


 「でも、僕の力は契約している風の精霊のフウコの力だし、僕が師匠としてできることなんて何も無いよ」


 実際、何も無いと思う。冒険者としての戦い方も知識や経験も教えられない。なんか悲しいけど、実際、そんなスキルは持っていない。


 「いやでも、いろいろ教えてくれたけど?」


 不思議そうに言うキッカと目が合ったけど、え? 僕の方が不思議だけど? 何か教えたっけ?


 「そうですよ。色んなことを教えていただきました」


 微笑みながらリヨーナが言った。


 「えーっと、何か教えたっけ」


 「自覚はないみたいですけど、私たちは本当に感謝しているんですよ」


 「え、なんで?」


 キッカはともかく、リヨーナもミアリーまで。びっくりして聞き返したら、その顔がおかしかったのか、ミアリーは「あはは」って笑って、そして言った。


 「だって、ケースケさんは私たちが冒険者になってから、初めて真面目に私たちに向き合ってくれた人ですよ」


 え、全然ピンとこないけど? だけど、そのあとミアリーが説明してくれて、ちょっとだけ腑に落ちた。


 つまり、“虹色の綿毛”は、これまで冒険者にも冒険者ギルドにもあんまりまともに相手されていなかったのだ。昨日のおっさん冒険者みたいに、馬鹿にしてくる奴らがいた。そうじゃなくて、優しくしてくれる人もいた。ただ、その人たちも、真剣に導こうとしたり、間違いを叱ったりはしなかったらしい。


 「だから、師匠から、私たちに足りないものを言われたときはドキッとしました」「言われてキツかったけど、どうすればいいかもちゃんと教えてくれたしね」「私は、自分の言う通りにしろっていう態度じゃなくて、私たち自身で決めろって言ってくれたことが嬉しかったです。ちゃんと冒険者として認めてくれているみたいで」


 「冒険者として認めてくれているみたい」というか、普通に冒険者を相手にしたつもりで話していただけなんだけどな。だって冒険者だし。まあ、それだけ“虹色の綿毛”を1人前扱いする人がいなかったってことなんだろうな。


 「昨日、師匠が帰った後も話していたんです。足りないものがあるのは恥ずかしいことじゃない。それをどうすれば補えるかを考えればいいんだとか」「足りないものを補ってくれる人と組むのもありだしね」「その時には、ちゃんと相手を見抜いて、自分たちが提供できるものやお互いのメリットデメリットを考えて、冷静に交渉しなければいけませんよね」


 えらいな。僕が気持ちよく酔っぱらって宿で寝ちゃってた時にも、ちゃんと振り返りをしていたんだな。3人は、その後も熱の入った声で考えたことを教えてくれた。


 「…だから、ちゃんとこういうことを考えられていれば、苦しい状況になってベーラゼ男爵みたいな人に付けこまれることも無かったんだと今は思います」


 「そういうことを教えてくれたのが師匠なんだよ」


 いや、それは自分たちで考えてたどり着いたんだよね。僕が教えたことじゃない。やっぱり、僕が師匠ってわけにはいかないんじゃないかなあ。

ケースケが優柔不断なせいで、ちょっと長くなっちゃったもので、次回の更新でもこの話が続きます。次回、すぐに結論が出るはずです。

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