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3-16 ミアリーの怒りが怖い、そしてキッカたちのお願い

 そして僕たちは、無事エンガルトの街まで帰ってきた。あとは、冒険者ギルドに報告すれば依頼は成功裏に完了だ。


 僕たちは出掛けた時と同じように、意気揚々と冒険者ギルドの扉を開いた。すると、出掛けた時にキッカに嫌がらせを言ったおっさん冒険者が、また声を掛けてきた。


 「よおキッカ! また依頼失敗か?」


 「はあ!? 大成功だっていうの! レモケビ草もたくさん持ち帰ってきたし、ビッグバボヌの魔石も6つあるっつうの!」


 「ああん、嘘つけよ。お前らがビッグバボヌを6頭も倒せるわけねえじゃねえか」


 「師匠が瞬殺したし! 師匠にかかれば余裕だっつうの!」


 おっさんたちがゲラゲラ笑って言った。


 「はあぁ!? ビッグバボヌの瞬殺なんて、Aランクでも無理なんだぜぇ! キッカ、嘘つくにしても、もうちょいましな嘘つけよぉ」


 キッカが「はあぁ!」と言いかけているのを割って入るように、ミアリーが言った。


 「それが、嘘じゃないんですよ。ここにちゃんと魔石がありますし、私も6頭のビッグバボヌの首が一瞬で飛ぶのを見ました。信じられないですよね」


 おっさんが何か言いかけたが、ミアリーは話し続けた。


 「私思うんですけど、複数のビッグバボヌの首を一瞬で飛ばすことのできる人は、人間の首も一瞬で飛ばすことが出来るんじゃないかなって。だから、きっとあんまりケースケ師匠の事を怒らせない方がいいと思いますよ」


 …怖っ。ミアリーの笑顔が怖い。よっぽどストレスがたまってたんだな。本当は、僕は師匠じゃないよとかビッグバボヌを倒したのは僕じゃなくてフウコだとか言おうかと思ったけど、正直、ちょっと今は口を挟みたくないかな…


 おっさんがしゃべろうとした口を閉じてこちらを見た。おい、見るなよ。僕は今、気配を消しているところなんだよ。あ、フウコも期待した目でこっちを見てる。何を期待しているのかは分からないけど、その期待には応えないと思うし、今は見ないで欲しいかな。


 え、どうしよう。これ、僕が治めなきゃなのか? でも、おっさんに味方する気はないけど、ミアリーと一緒になっておっさんを叩くのもどうかっていう気がするし。そんな風に困惑していると、いいタイミングでギルドの職員さんが話しかけて来てくれた。


 「すみません、今6頭のビッグバボヌと遭遇したと聞こえたのですが、事実でしょうか?」


 「職員さんまで! 僕は本当の事を言っているにゃ!」


 「いや、疑う訳ではないのですが、もし本当なら異例の事態です。奥で詳しく話を聞かせてください」


 ああ、助かった。とりあえずこの気まずい空気からは逃れられるな。本当、ミアリーは怖いよな。基本は優しい子だと思うんだけど、優しい人ほど怒らせたら駄目だっていうあれだ。僕は気を付けよう。


 その後、奥でギルドマスターというワイルドおっさんに色々聞かれた。ちなみに、ギルドマスターと僕は初対面だった。なので、ちゃんと初めましての挨拶をしたら、「おう、変人だって聞いてるが、まともそうじゃねえか」と言われた。精霊だとか異世界だとか言っているから変人扱いされたんだろうな… だが、初対面は丁寧なあいさつが基本、僕は会社でそう叩き込まれているからな。社会人スキルが久しぶりに効力を発揮したかもしれない。


 ただ、おっさんはまあ僕の事もちゃんと扱ってくれたと思うけど、ビッグバボヌとの戦闘のあたりは、さすがに僕の事を疑わし気に見ていた。「何なら精霊魔法を見せましょうか?」と聞いてみたら、見てみたいが今日はビッグバボヌの情報を聞くのが目的だから止めておくということだった。


 まあでも、力を示すという当初の目標の1つは、近いうちに達成できそうな気がしてきた。これも、キッカたちのおかげだな。僕1人だったら、あんなに自分の力をアピールできなかったと思うし。


 その後、ギルドマスターから解放された僕たちは、新生“虹色の綿毛”の初依頼成功のお祝いということで打ち上げをした。あれ、3人ってお酒大丈夫な年齢だっけって思ったけど、この国の法律とか知らないし、だれも気にしてないし大丈夫なんだろう。


 とにかく、セクハラをしないようにだけはすごく気を使ったけど、楽しい打ち上げだったな。なんか、仕事の後の打ち上げは最高だと熱弁するっていうよくわからないノリをしたことだけは覚えている。


--------------------


 次の日の朝、僕は日が昇っているのを感じながら、布団の中でぐずぐずしていた。うーんちょっと飲みすぎたかな。軽い二日酔いっていう感じだ。今日は休みにしてだらだらしていようかなあって思っていたら、フウコが言った。


 「あ、あの子たちがまた来たよ」


 え、誰が来たって? そう思う間もなく、ドアが乱暴に開いた。


 「ししょー、おはよおーー!」


 え、キッカ、何で来たの? なんか予定とかあったっけ? そう思っていたら後ろからミアリーとリヨーナが申し訳なさそうに入ってきた。


 「師匠、すみません。起きてくるまで待とうって言ったんですけど」


 「え、ああ、もしかしてもう昼ぐらいだったりする?」


 「いえ、まだぎりぎり朝だと思います」


 ぎりぎりか。やっぱり今日は割と遅いんだな。


 「えっと、それでどうしたの?」


 「師匠、今日も依頼受けようよ!」


 あ、そういう感じね。僕は休みにしようかと思ったけど、若い子たちがやる気になっているなら、年長者としては付き合ってあげた方がいいよな。


 「ああ、まあいいよ。でも朝ご飯食べるから、待っててもらってもいい?」


 そして、身支度を済ませた後、宿の食堂で朝ご飯を食べた。僕がご飯を食べている時も、キッカたちは一緒のテーブルにいたんだけど、なんかずっと僕がご飯を食べているのを見ているので、微妙に気まずい感じなんだよな。なんか、そわそわしている感じだし。ご飯の時に依頼の話とかしないのはありがたいけど。僕も仕事が好きな方だけど、さすがに朝食の時は勘弁してほしい。


 まあともかく、やや二日酔いのまだ眠い頭を回転させて、無難な会話をキッカたちに振りつつ、なんかちょっとせかされるような気持ちで朝食を食べ終わり、言った。


 「じゃあ、今日も依頼を受けてみる?」


 「うん、受けたいんだけどその前に…」


 キッカたちが姿勢を正した。ん? なんだ? なんか改まった雰囲気だけど?


 「やっぱりキッカたちを弟子にしてください!」


 そういうと、キッカは頭を下げた。


 ええっ!? いや、それは断ったじゃん!? あっ、ミアリーとリヨーナも頭を下げてる。ミアリー、君は突っ込みを入れる方でしょ。みんな、どうしちゃったっていうんだ…

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