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3-15 危険なタスクの遂行、そして僕のOJT

 その後、ミアリーとリヨーナも崖の上まで運んでいった。


 キッカの次に運んだのはミアリー。恐らく一番の危険因子だろう。変なところでも触ろうものなら、僕の知らないところでどんなことを言われるか分からない。そう思って、緊張感を持って臨んだ。


 崖から下りてミアリーに声を掛ける。


 「じゃあ、ミアリー、いいかな?」


 あ、ちょっとキモかったかなと思ったけど、ミアリーは緊張している感じで「お願いします」と言った。そして、お姫様抱っこの体勢に入る。キッカみたいに無邪気なのもやばいんだけど、この感じも緊張が伝染しそうで困る。


 空中では、キッカみたいにはしゃぐことはなく、僕から顔を背けて体を固くしていた。でもこれはこれで… いやそうじゃない! よこしまな気持ちよ去れ! でも顔はむこうを向いているけど、腕は僕の首に回して… だから落ち着け! 今、僕は危機的状況にあるんだぞ! 緊張感を持て!


 そんな感じで内心ではクズな悪魔と真面目な天使が小競り合いをしていたが、多分ばれなかったと思う。崖の上まで行って彼女を地面におろした後は、硬い表情で「ありがとうございました」と言った後、そそくさとキッカのそばに行ってしまったが、一応、紳士的行動が出来たと信じたい。


 3人目はリヨーナ。迎えに行ったら、ちょっと頬を赤らめて「お願いします」と言われたけど、うわ、この感じも可愛い… だけど僕も3人目だ。少しは慣れてきた。そう思ったんだけど、お姫様抱っこするときにリヨーナに「私、こんな風に男の人に抱きかかえられるの初めてです」とか言われてヤバかった。


 リヨーナもちょっと天然というか世間知らずな感じがあるよな。一応、なんとか衝撃に耐えて冷静に「そうなんだね」と言った。こういう時、もっと気の利いたことが言えるようになりたいな。いや、この場合は、気の利いたことは言わない方がいいのかな。


 ちなみに、リヨーナは空中ではノーリアクションだったけど、それなりに楽しんだのか、上に運んで地面におろした後は、ニコッと笑って「ありがとうございました」と言ってくれた。


 そんなわけで、一応、何とか紳士的に危険なタスクを完遂できたと思う。はああ、なんか嫌な汗をかいちゃったな。これ、また降りるときにやるのかあ。気が重いなあ。


 だけど、ようやく崖の上に全員がそろった。そして、上で待ち構えたフウコが満面の笑顔で言った。


 「はーい、みんなお疲れー! 文字通り障害を乗り越えて、パーティの仲も深まったんじゃないかな!」


 …フウコ、むしろパーティ分解の危機を迎えていたからね。本当にこういうフウコの暴走は無くして欲しい。後でちゃんと話し合って再発防止を徹底しよう。そう思いながら、フウコをにらんだけど、フウコは全く気にすることなく話し続けた。


 「さて、例の葉っぱだけど、あそこらへんのやつらがそうなんじゃないかな!」


 そう言ってフウコが指さす先には、冒険者ギルドの図書室で見た絵と同じような草が群生していた。


 「みんな、あそこの草がレモケビ草じゃないかって」


 僕の言葉を聞いて、キッカたちが小走りで草の方に向かう。


 「ミアリー、これだよね!」「うん、間違いない」「良かった、ちゃんと見つかりましたね」


 よし、あとはこれを採取して冒険者ギルドに無事に帰り着けば依頼は完了だな。


 「じゃあ採取しちゃおうか。依頼分以外も()ってくれば高値で買い取ってくれるんだよね。全部採っちゃう?」


 「ちょっと師匠!」とミアリーがびっくりした顔をしてこっちを向いた。


 「薬草を採取する場合は、採りすぎないのが基本ですよ!」


 そうなんだ。あー、そういえば冒険者の初心者講習でそんなことを聞いたような…


 「師匠、力が強いだけじゃ良い冒険者になれないって言いますよ。こういう基本もちゃんと覚えないと、いつかしっぺ返しを貰っちゃいますよ」


 怒られてしまった… 元の世界で上司に怒られて以来かな。まあ、おっさんに怒られるよりは美少女に怒られる方がまだましかな。そういう趣味があるわけじゃないけど。


 「ごめんごめん。うっかりしてた。教えてくれてありがとうね」


 「ミアリー、師匠は強くてすごいんだから、そんなことは知らなくてもいいんだよ」」


 「そんなことないわよ。師匠だって冒険者なんだから、こういうことも気を付けないとだめでしょ」


 うんうん、そうだねとか適当なことを言ってミアリーをなだめる。正直めんどう、いや、でもミアリーのいう通りだよな。僕は冒険者ランクを上げていって有力者と伝手(つて)を作ることを目標にしているんだから、評価や評判を下げるようなことは避けるようにしなきゃだめだ。


 やっぱり強いだけじゃダメなんだよな。そういう意味じゃ、“虹色の綿毛”に入れて貰えたのはやっぱりよかったのかもな。みんな真面目だし、けっこう冒険者としての知識もあるし、思った以上に僕に足りない部分を補ってくれるかもしれない。


 そしてその後、ミアリーたちに教わりながら採取をやってみた。実務をしながら学ぶ、いわゆるOJTってやつだな。率直に言って、冒険者ギルドの初心者講習より分かりやすかった。特にミアリーは説明上手だったな。なので、その感想を伝えてみたんだけど、「お世辞は止めてください」って言われちゃった。


 でも、悪い気持ちはしなかったんじゃないかな。なんか、気のせいか嬉しそうにしていたようだし。うん、チームの関係を良くするためにも、ポジティブなフィードバックはメンバーに積極的に伝えていこう。


 採取が終わった後は、いったん休憩した。みんなは、「別に疲れてないけど」っていう顔をしていたけど、僕には崖の下にみんなを運ぶという危険で精神力が削られるタスクが待っている。


 そして、一息ついた後、いよいよそのタスクだ。これは、まあ登りよりは心の余裕ができたかな。キッカが飛び回ってみたいというので、ちょっとだけ木の間を飛んでみたりして、ミアリーにまた怒られちゃったりしたけど。


 「師匠もキッカも緊張感が足りないです! 危険もある場所だと自覚してください」だそうだ。キッカは、「師匠がいるから大丈夫だよー」って言い返していたけど、僕が間に入ってミアリーに謝って事を収めた。この2人の間に入る役目、ずっと僕がしなきゃ駄目なのかな… ちょっと大変かもな…


 ちなみに、リヨーナを下におろす時に、リヨーナにも「ちょっとだけ飛び回ってみる?」って聞いたら、「じゃあ、ちょっとだけお願いします」って言うことだったので、らせん状にくるくる回りながら降りてみた。リヨーナも満足そうだったし、ミアリーにも怒られなかったし、まあ、よかったかな。


 そんな感じで危険かつ困難なタスクは無事完了した。終わってみると寂しいというか、もっとずっとやっていたかったような… でも、またやろうねって言うのはキモい気がするし。まあ、幸せな思い出ができたと思うことにしようかな。

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