3-12 話し合いの結果、そして新生“虹色の綿毛”
結局その日は、色々と質問され答えたりしたものの、結論が出ずに解散した。その帰り道。フウコが感想を伝えてくれた。
「うーんと、フウコはよかったと思うよ。ケースケがちょっと怖かったし、厳しすぎるかなとも思ったけど…」
うーん、どうなんだろうな。まあでも、フウコにしては的を得た感想ではあるな。
「僕もあういう言い方が正解だったのかは自信ないけどね。でも、甘いことだけ言ってあの子たちをごまかすのも違うかもって思ってね」
「ごまかす?」
「うん。僕を信頼しろ、僕に任せておけば大丈夫だ。そんな感じで言うのもありだったかもしれないけど、そんな感じで言ったらかえって信頼されないかもしれないなって思ったんだよね」
「ふーん、そうなの?」
いや、分からないけどね。でも、“虹色の綿毛”は、冒険者という仕事を甘く考えた結果、苦しい状況に追い込まれている。いや、本人たちは甘く見たつもりは無くて慎重に動いたつもりだったんだろうけど、それでも甘かったというのが現実だ。
そして、彼女らは今それを痛感しているはずだ。そんな彼女らに甘いことを言うのは、なんか違う気がする。
かえって信頼されないだろうというのもあるけど、彼女らの成長のためにならない気もするんだよね。現実というものの厳しさに直面したわけだから、次は現実の厳しさに対処する考え方を身に付けて欲しい。
そのためには、僕が彼女らを子ども扱いして助けるよりも、自分たちで考えて決断してほしい。
会社でも、任されることで成長するとか言われてある案件をやらせてもらったなあ。まあ、僕は失敗しかけて先輩に助けてもらったんだけど。
さて、“虹色の綿毛”はどう判断するか。もし僕を信頼できるなら、僕の提案はそうとう良い話だと思うんだけど、僕を信頼できるかどうかが問題だ。彼女らにしてみたら、僕が本当は悪者だっていう可能性も捨てきれないかもしれないしね。まあ、決断するまでにそうとう時間がかかるかもな。僕も、他にすることもないし、のんびり決断を待とうかな。
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そんな風にゆっくり考えていたんだけど、次の日の朝に状況は動いた。
「ししょー! 決めたー! パーティーを組んでー!」
そんな叫び声とともに、ノックもせずにキッカが部屋に突入してきたのだ。
僕はその時、まだ夢の中にいた。なんか、シバ族の村の人たちと一緒に空を飛んでた気がする。うーんと、なんでキッカが僕の部屋に来ているんだっけ? 寝る前に、明日は休みにして朝寝を楽しんでもいいなと考えていたことは覚えている。あれ、けっこう遅くまで寝ていたか?
そんな感じでぼおっとキッカの方を眺めていたら、キッカの後ろからミアリーとリヨーナも入ってきた。
「キッカ、師匠が起きるまで待とうって言ったでしょ」とミアリーが言っている後ろでリヨーナが申し訳なさそうに手を合わせている。
「ええっと、うーん、もしかしてもう昼ぐらい?」
「いえ、まだ早朝です。本当に申し訳ないです…」
「うん、大丈夫だよー! フウコはずっと起きてるし、ケースケも朝は早くから起きた方がいいもん!」ってフウコ、今日は遅くまで寝てるかもって言ってあったでしょ。
「うん、まあ、もういいよ。話を聞くよ。でも着替えだけしてもいい?」
というわけで、一旦みんなに外に出てもらって着替えとかを済ませた後、宿の食堂の隅のテーブルを借りてお話しすることになった。
「そんで、結論が出たのかな?」
「うん、あの後3人で話して決めた。師匠、僕たちとパーティを組んでください!」
キッカがキラキラした顔で言った。ミアリーとリヨーナは真剣な顔で僕を見ている。真剣というか、覚悟を決めた顔だ。
3人で悩んで考えて相談して決めたんだろうな。なんか、3人を見て嬉しい気持ちが湧いてくる。ちゃんと、師匠ではないけど、人生の先輩としてこの3人の気持ちを裏切らないようにしないとな。
「わかった。じゃあ、これからよろしくね」
「うん!」「はい!」「よろしくお願いします!」
3人が元気に返事してくれる。フウコも「よろしくぅ! フウコも頑張るよ!」って言っている。フウコも気合が入っているな。
こうして、新生“虹色の綿毛”が誕生したのだった。
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その日、僕たちみんながテンションが上がった結果、そのまま街の南の方にあるポマズの山に向かった。テンションが上がったから山に行くって、なんか陽キャの大学生みたいな行動だけど、もちろん目的はある。“虹色の綿毛”が受注中の依頼を成功させようという目的だ。
その依頼とは、ポマズの山の山腹に生えているという貴重な薬草を採取してくるという物だった。この山には結構強い魔物も多くいるということで、Dランク以上しか受注することができない依頼となっている。そして、山中で僕が彼女らを助けた時には、この依頼のために山中に入り、予想外の強い魔物に襲われてピンチになっていたのだった。
その時点では、“虹色の綿毛”にはあの魔物がいるような場所に行くには戦闘力不足だったかもしれない。しかし、今はケースケ&フウコの強力タッグが加入している。もはや恐れるものはない! そんなテンションで、僕たちはすぐに宿を出た。
そして、まずは冒険者ギルドだ! 僕たちは意気揚々とギルドの扉をくぐった。僕は昨日までは、いろいろ馬鹿にされてる感じがするし、冒険者ギルドに行くの嫌だなあという気持ちになっていたんだけど、今はそんなこと関係ない。もう僕はボッチじゃないんだ! Dランクパーティのメンバーになるんだ!
そんな気持ちで受付に行き、パーティ加入の申請をする。受付のお姉さんには、「は? え?」みたいな顔をして2度見された。そしてその顔を見て、僕はちょっと冷静になった気がするけど、だからといってパーティ加入を止めるわけではない。
でも、お姉さんには、「規則上は問題ありませんが…」とか、「戦力的にDランクの依頼が務まるのかを慎重に検討して…」とか、色々とアドバイスをされたけど、僕には関係ない。社会人として培ったスルースキルを発揮して、「はい、そうかもしれませんね。でもみんなで決めたことですしゴニョゴニョ」みたいなことを言って申請を受理してもらった。
だけど、僕の“虹色の綿毛”加入は、受付のお姉さんだけではなく、その他の人たちにも衝撃を与えていたらしい。申請中に、他の冒険者から、「キッカ、そんな弱そうなおっさんと組んでどうするんだ。なら俺らと組めよ」という声が飛んでいた。
はあぁ!? 弱そうは認めるけど、おっさんってのはどういうことだ! お前の方が全然おっさんじゃないか! さすがにそちらを見て何か言ってやろうかと思ったけど、僕がしゃべる前にキッカが怒ったように言った。
「師匠はすごいんだよ! 見てろよ、すぐ実力を見せつけるからな!」
お、ありがとうキッカ! あと、僕がおっさんじゃないことも言ってやってくれ!
「はああ、そのおっさんがすごいって!? ロクな武器も魔道具も持ってねえじゃなねえか。お前ら、なんか騙されてるんじゃないのか?」
それを聞いてキッカは言い返そうとしたけど、ミアリーがそれを押しとどめ、その冒険者の方を向いて笑顔で言った。
「いつもご心配しただきありがとうございますね。でも、ケースケさんはもう私たちのパーティメンバーですから、おっさんとか悪いことは言わないでくれたら嬉しいなって思っちゃいました」
おお、ミアリー。もしかしたらキッカに無理やり押し切られただけで、ミアリーは僕のパーティ加入に反対なのかもって思っていたけど、ちゃんと僕の事をかばってくれるんだな。ちゃんと「おっさん」って言われたのも注意してくれているし。ん、でも、前にミアリーに「おじさん」って言われた気が…
いや、そんなことは言われていないんだ。それは存在しない記憶だ。ミアリーは気遣いのできて優しい最高のパーティメンバーだ。そう思うことにしよう。せっかく加入できたパーティを、僕がおっさんかどうかで揉めて追い出されるとか嫌だからな。僕は大人だし、少なくとも忘れたふりぐらいできるさ。
そんな感じで、冒険者ギルドでのパーティ加入だけで僕はやや疲労したし、テンションもだいぶ冷静になってきたけど、3人はまだまだ興奮状態みたいだ。あと、フウコも全然元気で「キッカもミアリーもええ子や。怖いだろうに、ケースケをかばって。ケースケも果報者だねえ」と言っていた。
僕が果報者かどうかは分からないけど、いい子たちだよね。この子たちのためにも、冒険者ギルドもあの嫌なことを言う冒険者も見返してやりたい。うん、テンションが下がっている場合ではないな。みんなに負けないように、僕も頑張ろう。




